Sunday, June 11, 2023

論文紹介

研究をするようになって気づけば日々いろいろな理由で論文に接している。これから書こうとしている論文のための参考文献とかならフォルダを作って全部入れておけば、また読みたいときにすぐ見つけられる。しかしSNSで誰かが紹介してたとか趣味でネットサーフィンをしているときにたまたま出くわした文献だと覚えていられるだろうか。これはいつか自分の研究で使えそうな知見だなと思えてもすぐに忘れ去ってしまうか、どこに保存したかわからなくなってしまうし、タイトルもあやふやだ。そして季節の移ろいの中のほんの些細な出来事でふと思い出して、どうして今までこんな大事なことを忘れていたんだろうと自分が信じられなくなる。そんなことにならないようにメモを残しておこう。

43. Gravitational wave analogues in spin nematics and cold atoms, arXiv:2310.10078 (2023). https://arxiv.org/abs/2310.10078

冷却原子系の励起が重力波のアナロジーを持つようだ。

42. Observation of a Geometric Hall Effect in a Spinor Bose-Einstein Condensate with a Skyrmion Spin Texture, Phys. Rev. Lett. 111, 245301 (2013). doi.org/10.1103/PhysRevLett.111.245301 

冷却原子系のスピノールBEC状態でスキルミオンが出ることはよく知られているが、そこでホール効果が見られたようだ。いわゆるトポロジカルホールのこと。

41. Enhanced Kondo Effect via Tuned Orbital Degeneracy in a Spin 1=2 Artificial Atom, Phys. Rev. Lett. 93,  017205 (2004). doi.org/10.1103/PhysRevLett.93.017205

量子ドットの近藤効果でSU(4)が出てくるときもある。

40. Skyrmion versus vortex flux lattices in p-wave superconductors, Phys. Rev. B 79, 014517 (2009). doi.org/10.1103/PhysRevB.79.014517

p波超伝導で発現するスキルミオンの理論。p波超伝導が存在しないので検証は困難。

39. Skyrmion zoo in graphene at charge neutrality in a strong magnetic field, Phys. Rev. B 103, 035403 (2021). doi.org/10.1103/PhysRevB.103.035403

グラフェンのスピン x バレーに関する4自由度に起因して発現するSU(4)スキルミオンの理論。図がきれいでわかりやすい。

38. de Haas-van Alphen Effect and the Specific Heat of an Electron Gas, Phys. Rev. B 8, 2649 (1973). doi.org/10.1103/PhysRevB.8.2649

量子振動が外部磁場\(H_{\text{ext}}\)の逆数の関数でなく、磁化(\(M\))と反磁場(\(\mu_0 H_{\text{d}}=-N_{\text{d}}M\))を考慮した\(B=\mu_{0}H_{\text{ext}}-N_{\text{d}}M+M\)の逆数の関数であるということがShoenbergの教科書に書いてある。そこで引用している論文がこれである。しかしよく読んでみると電子スピンの寄与を考慮していない理論であり、不完全であると言わざるを得ない。例えばFeの磁化は電子スピンが出しているはずなので、\(M\)を量子振動の磁場の補正に使うことは正当化されない。どういうことなんだろう?参考: doi.org/10.1103/PhysRevLett.10.227doi.org/10.1119/1.1990867

37. How Are Heavy and Itinerant Electrons Born in a Dilute Kondo Alloy?, J. Phys. Soc. Jpn. 81, 054703 (2012). doi.org/10.1143/JPSJ.81.054703

重い電子系でフェルミ面が温度に依存して変化することで量子振動の振動数が温度依存する。振動数変化量が15 Tだと言っているがもともとの振動数がいくつなのかがどこにも書かれていないのでとても読みにくい。

36. Fermi volume as a probe of hidden order, Phys. Rev. B 88, 075102 (2013). doi.org/10.1103/PhysRevB.88.075102

量子振動をつぶさにみれば隠れた秩序も現れる。後で読もう。

35. Temperature Dependence of the Exchange Splitting in Ferromagnetic Metals I. Information from the de Haas–van Alphen Effect in Iron, Can. J. Phys. 52, 694 (1974). doi.org/10.1139/p74-094

強磁性体は電子バンドの分裂(exchange splitting)によって自発磁化が発生している。そのためフェルミ面の大きさ(= 量子振動の振動数)は温度依存するはずである。Feを測定した結果、期待ほどの変化はなかったことを報告した論文。これは磁化の減少がスピン波によっておこるので磁化∝分裂幅の関係性が成り立っていないためである。一方でZrZn\(_2\)の場合は顕著な振動数の温度変化が起きている(doi.org/10.1103/PhysRevLett.99.196405)。参考: Ni\(_3\)Al doi.org/10.1016/0304-8853(84)90371-8, doi.org/10.1088/0305-4608/14/9/019

量子振動の振動数の温度依存性は非磁性のフェルミ面でも一般的に起きることが期待できる。ゾンマーフェルト理論によると金属の化学ポテンシャル(\(\mu\))はフェルミエネルギー(\( E_{\text{F}}\))に関して\(\mu (T)=E_{\text{F}}(1-\frac{1}{3}(\pi k_{\text{B}}T/2E_{\text{F}})^2)\)の温度依存性を持つ。\(E_{\text{F}}\)が十分小さくて量子振動が十分高温まで生き残ってくれるなら観測できる(doi.org/10.1038/s41467-021-26450-1)。

34. Description of multipole in f-electron systems, J. Phys. Soc. Jpn. 77, 064710 (2008). doi.org/10.1143/JPSJ.77.064710

Stevens因子、Lande因子などが表になっているので参照用。

33. High-throughput electronic band structure calculations: challenges and tools, Comput. Mater. Sci. 49, 299 (2010). doi.org/10.1016/j.commatsci.2010.05.010

各結晶格子のブリルアンゾーンの高対称点の名前がまとまっているので参照用。

32. Phase shift of cyclotron orbits at type-I and type-II multi-Weyl nodes, Phys. Rev. B 98, 121403(R) (2018). doi.org/10.1103/PhysRevB.98.121403

量子振動に関する電子の軌道がワイル点を介して八の字になるときの位相の理論。\(\theta\)パラメータの物理的意味が不明確。

31. Rules for phase shifts of quantum oscillations in topological nodal-line semimetals, C. Li et al., Phys. Rev. Lett. 120, 146602 (2018). doi.org/10.1103/PhysRevLett.120.146602

量子振動の位相がフェルミ面の曲率、次元性、そしてベリー位相によってかわることはよく知られているが、論文で言及されるときはどれも場合分けを尽くしていないか、どういう状況のときの結論なのかあいまいさの残る記述なので混乱が生じている。はっきりとまとめられている論文がこれである(ただし高調波は無視している)。特にキャリアが電子的かホール的かによって位相の符号が反対になることをはっきり書いているのはほかに見当たらない(本当か?導出過程要確認)。

振動の位相\(\phi\)は一般に\(\phi=-1/2+\phi_{\text{B}}/2\pi+\phi_{3\text{D}}\)で与えられる。\(\phi_{\text{B}}\)はベリー位相、\(\phi_{3\text{D}}\)は次元性による因子。なお、抵抗の場合は\(\Delta \rho\propto \cos(2\pi(F/B+\phi))\)だが磁化の場合は\(\Delta M \propto \sin(2\pi(F/B+\phi))\)というように測定手法によって振動がcosine/sineになるので一般的にはさらに\(\pm \pi/4\)のファクターを考慮する必要がある。

30. Linear magnetoresistance in metals: Guiding center diffusion in a smooth random potential, J. C. Song, G. Rafael, and P. A. Lee, Phys. Rev. B 92, 180204(R) (2015). doi.org/10.1103/PhysRevB.92.180204

Disorder potentialとサイクロトロン運動の長さスケールの関係で半導体・半金属中のキャリアの易動度は磁場依存することもあることを指摘している。2-バンドモデルなどでは通常、易動度は磁場によらない定数とされることが多いがそうでないこともあるようだ。

29. Time reversal and reciprocity, O. Sigwarth and C. Miniatura, AAPPS Bulletin 32, 1 (2022). doi.org/10.1007/s43673-022-00060-5.

時間反転と相反性の違いを議論している。doi.org/10.1103/PhysRevB.82.245118も参照。

28. Acoustic-optical phonon scattering observed in the thermal conductivity of polydiacetylene single crystals, M. N. Wybourne and B. J. Kiff, J. Phys. C: Solid State Phys. 18, 309 (1985).

ポリジアセチレンの低温(1 K < \(T\))熱伝導が\(T^{1/2}\)に比例する理由を音響フォノンの光学フォノンによる散乱として説明しているようだ。昔の人は謎の中性粒子の存在を知らなかったのかな?

27. Optical activity in tellurium induced by a current, L. E. Vorob'ev, E. L. Ivchenko, G. E. Pikus, I. I. Farbshtein, V. A. Shalygin, A. V. Shturbin, JETP Letters 29, 485 (1979). http://jetpletters.ru/ps/1454/article_22128.shtml.

キラル物質のテルルに電流を流すともともとある自然旋光性に加えて非相反な旋光性が現れるらしい。電流が流れると磁化が出ることと関係しているのだろう。例によってGoogle Scholarには出てこないのでメモ。

26. Nonreciprocity of natural rotatory power, P. J. Bennett, S. Dhanjal, Yu. P. Svirko, and N. I. Zheludev, Optics Letters 21, 1955 (1996). doi.org/10.1364/OL.21.001955.

キラルな物質で起きる自然旋光性は相反現象で、強磁性体でのファラデー回転は非相反現象であることは学部生教科書レベルの光物性における常識である*。誘電率テンソルの対称性に由来するのだが、実はこれには抜け道があることを議論している論文。以下も参照doi.org/10.1103/PhysRevB.50.11508, doi.org/10.1016/0375-9601(93)90150-X, doi.org/10.1364/OL.20.001809。同一グループからの報告が大半を占めており、まだ確立はしていないようだ(doi.org/10.1364/OL.23.000086)。

*その常識をわかっていないと思われる残念な論文もあるようだ。

25. Ordering Up the Minimum Thermal Conductivity of Solids, K. E. Goodson, Science 315, 5810 (2007). doi.org/10.1126/science.1138067.

固体中の熱伝導の下限に関する考察らしい。

24. Some new conservation laws, D. Finkelstein, and C. W. Misner, Ann. Phys. 6, 230 (1959). doi.org/10.1016/0003-4916(59)90080-6.

物理へのトポロジーの応用をレビューした論文。R. Shankar, J. Phys. 38, 1405 (1977) (doi.org/10.1051/jphys:0197700380110140500)も読もう。 

23. Bulk characterization methods for non-centrosymmetric materials: second-harmonic generation, piezoelectricity, pyroelectricity, and ferroelectricity, K. M. Ok, Chem. Soc. Rev., 35, 710 (2006). doi.org/10.1039/B511119F.

第二次高調波, 圧電性, 焦電性, 強誘電性をつかって反転対称性の破れを検出する実験的手法に関するレビュー。Data interpretationに関しても書いてありそう。

22. Conduction in glasses containing transition metal ions, N. F. Mott, J. Non-Crystalline Solids, 1, 1 (1968). doi.org/10.1016/0022-3093(68)90002-1.

ガラス的な非晶質系での電気伝導好き。似たような論文にI. G. Austin, and N. F. Mott, Polarons in crystalline and non-crystalline materials (doi.org/10.1080/00018736900101267)もある。いつか読もう。

21. Possibility of observation of giant oscillations of thermoelectric power in normal metal, A. V.  Pantsulaya, A. A. Varlamov, Phys. Lett. A 136, 317 (1989). doi.org/10.1016/0375-9601(89)90824-4.

量子振動を解析するときに使うLK公式は抵抗や磁化には使えるが熱電能には別の公式が必要。ゼロKでゼロになる公式を導いているらしい。元論文のどの式がそれにあたるのかは、量子振動の理論の論文にありがちな次から次へと訳の分からない記号を定義した数式の羅列の中に埋もれてわからなくなっている。後から読む人のことを考えて論文を書かないのがこの分野の作法なのだろうか。振動振幅\(A_{\text{osc}}(T)\)は以下の式で与えられる(らしいが要確認)。

\(A_{\text{osc}}\propto (X\coth X-1)/\sinh X\),

ただしここで\(X=2\pi^2pk_{\text{B}}Tm^*/\hbar eB\)。\(p\)は振動のharmonicsの数。

20. An introduction to spinors, A. M. Steane, arXiv:1312.3824 (2013).  doi.org/10.48550/arXiv.1312.3824.

スピノールの入門的解説。

19. Magnetic Solitons, A. M. Kosevich, B. A. Ivanov, and A. S. Kovalev, Phys. Rep. 194, 117 (1990). doi.org/10.1016/0370-1573(90)90130-T.

スキルミオン、ホップフィオンを含む様々な磁気ソリトンのレビューしている。Kosevichは量子振動のLK公式その人。Google ScholarでヒットしないJETPなどの文献を探すときはここからあたるといいだろう。

18. Domains and dislocations in antiferromagnets, I. E. Dzyaloshkinskii, JETP Lett. 25, 110 (1977). jetpletters.ru/ps/1388/article_21067.shtml.

反強磁性体における転位(dislocation)型のトポロジカルソリトンを考察している。Google Scholarにヒットしない。反強磁性体のドメインを議論するときにいつか引用したい。実験的にはNiOで観測がある(doi.org/10.1038/nnano.2013.45)が、本論文の言及はなし。

17. Chiral spin states and superconductivity, X. G. Wen, F. Wilczek, and A. Zee, Phys. Rev. B 39, 11413 (1989). doi.org/10.1103/PhysRevB.39.11413.

スカラースピンカイラリティの表式が出てくる論文。これ以上古い論文があるかは探していないのでわからない。P. A. Lee and N. Nagaosa (doi.org/10.1103/PhysRevB.46.5621)にも議論がある。どちらも高温超伝導の文脈での話なのでそれが磁性体のホール効果の測定誤差と見分けのつかないほんの些細な折れ曲がりを説明するためだけに流用されている現実は退廃的で文学的である。

16. Origin of the geometric forces accompanying Berry’s geometric potentials, Y. Aharonov and A. Stern, Phys. Rev. Lett. 69, 3593 (1992). doi.org/10.1103/PhysRevLett.69.3593.

スキルミオンのトポロジカルホール効果を理論的に考えた論文としてはP. Bruno et al., (doi.org/10.1103/PhysRevLett.93.096806)が有名だが上記論文は導出過程が丁寧。磁気テクスチャ―上を運動する電子はスキルミオン密度\(\epsilon_{\mu\nu\lambda}n_{\mu}(\partial _x n_{\nu})(\partial _y n_{\lambda})\)による創発磁場とは別にスカラーポテンシャル\((\partial_{i} n_{\mu})^2\)も受けるわけだがこの効果はあまり議論されることはないのでなにか考えても面白いかもしれない。

15. Anomalous Transport Phenomena in Eu-Chalcogenide Alloys, T. Kasuya and A. Yanase, Rev. Mod. Phys. 4, 684 (1968). doi.org/10.1103/RevModPhys.40.684.

磁気ポーラロンの勉強で見つけた。磁性と伝導電子が共存する系の物理をちょっとずつ勉強しよう。

14. New mechanisms for magnetic anisotropy in localised S-state moment materials, D. A. Smith, J. Magn. Magn. Mater. 1, 214 (1976). doi.org/10.1016/0304-8853(76)90069-X.

遍歴電子系でRKKYの高次摂動から磁気相互作用の異方性が出てくることが議論されている。JMMMの第一巻。

13. Varieties of magnetic order in solids, C. M. Hurd, Contemporary Phys. 23, 469 (1982). doi.org/10.1080/00107518208237096.

speromagnetism, asperomagnetism, mictomagnetism, sperimagnetismなどが議論されている。いつか出会う日が来るのだろうか。

12. The physics of manganites: Structure and transport, M. B. Salamon and M. Jaime, Rev. Mod. Phys. 73, 583 (2001). doi.org/10.1103/RevModPhys.73.583.

マンガン酸化物のレビュー。電気抵抗の理論パートは参考になりそう。

11. Some exact results for dilute mixed-valent and heavy-fermion systems, P. Schlottmann, Phys. Rep. 181, 1 (1989). doi.org/10.1016/0370-1573(89)90116-6

抵抗の議論。磁気抵抗の解析でもたまに使われている。長い。

10. Dependence of magnetoresistivity on charge-carrier density in metallic ferromagnets and doped magnetic semiconductors, Pinaki Majumdar & Peter B. Littlewood, Nature 395, 479 (1998). doi.org/10.1038/26703

磁気抵抗とキャリア密度の関係を考察した論文。キャリア数が少ないと磁気抵抗は大きい。当たり前?そんなことはない。

9. Experiments on simple magnetic model systems, L. J. de Jongh, and A. R. Miedema, Adv. Phys. 23, 1 (1974). doi.org/10.1080/00018739700101558

ザイマン乱れの物理学で引用されていたので知った。ちゃんと読んでないけど多分いいまとめ。

8. Conduction electron polarization of gadolinium metal, L. W. Roeland et al., J. Phys. F: Met. Phys. 5 L233 (1975).  doi.org/10.1088/0305-4608/5/12/003

Gdの磁化はGd\(^{3+}\)から予想される7 \(\mu_{\text{B}}\)より0.63 \(\mu_{\text{B}}\)大きい。これは5d軌道の伝導電子が磁化に寄与していることを示唆している。バンド計算は例えばdoi.org/10.1016/S0304-8853(98)01054-3. 同様のTbでの実験はdoi.org/10.1016/0304-8853(78)90122-1.

7. Magnetoresistivity as a probe to the field-induced change of magnetic entropy in RAl2 compounds (R=Pr,Nd,Tb,Dy,Ho,Er), J. C. P. Campoy, E. J. R. Plaza, A. A. Coelho, and S. Gama, Phys. Rev. B 74, 134410 (2006). doi.org/10.1103/PhysRevB.74.134410

磁気比熱とspin-disorder抵抗との間の関係を調べた論文。こんなにきれいに合う例は逆に珍しいのでは?de Gennes因子との比較はdoi.org/10.1016/0038-1098(69)90728-5

6. Real-space Berry curvature of itinerant electron systems with spin-orbit interaction, Shang-Shun Zhang et al., Phys. Rev. B 101, 024420 (2020). doi.org/10.1103/PhysRevB.101.024420

電子が非共面的な磁気構造をもつ格子上をホッピングしていくときにどのような位相を獲得するのかを式変形を丁寧に追いながら説明している。他の論文では省略されていることが多い。

5. Chirality-Induced Phonon Dispersion in a Noncentrosymmetric Micropolar Crystal, J. Kishine, A. S. Ovchinnikov, and A. A. Tereshchenko, Phys. Rev. Lett. 125, 245302 (2020). doi.org/10.1103/PhysRevLett.125.245302

カイラルな結晶のフォノンの理論。何回か読もうとして挫折してるのでいつかちゃんとよみたい。以下のレビューも参照: doi.org/10.7566/JPSJ.92.081006

4. Long-range order and the electrical resistivity, P. L. Rossiter, J. Phys. F: Met. Phys. 10, 1459 (1980). doi.org/10.1088/0305-4608/10/7/014

合金系や磁性体の電気抵抗の理論。これらの系の相転移はBragg-Williams理論によって説明できることが多い。相転移は秩序度\(S\)を導入してその温度依存性で記述できる。そのような系における電気抵抗を考えたとき散乱確率\(1/\tau_{S}\)は無秩序度\(1-S^2\)に比例し、秩序が発達することによるキャリア数\(n_{\text{eff}}(S)\)(や有効質量)の変化は\(1-AS^2\)に比例すると考える。ここで\(A\)は現象論的パラメータ。長距離秩序発達に伴う電気抵抗変化の成分を以下の式で与えている。磁性体では磁化率や比熱などで\(S\)を計算できる場合もあるのでそれを使えば少ないパラメータで抵抗の温度依存性を再現できる場合もある。

\(\rho_{\text{mag}}(S,T)\propto \left[(1-S^2)/(1-AS^2)\right]\)

3. Spin-Disorder Scattering and Magnetoresistance of Magnetic Semiconductors, C. Haas, Phys. Rev. 168, 531 (1968).  doi.org/10.1103/PhysRev.168.531

磁性半導体中のspin-disorder散乱の理論。モビリティの温度依存性と局在スピン系の磁化率とを関連づけているので、電気抵抗率の温度依存性と磁化カーブとを比べて電子-スピン間交換相互作用パラメータ\(J_{\text{sd}}\)を見積もることができる。\(\rho-T\)カーブのKondo-like minimumを再現することもできる。

2. Anisotropic magnetization, specific heat and resistivity of RFe2Ge2 single crystals, M. A. Avila, J. Magn. Magn. Mater. 270, 51 (2004). doi.org/10.1016/S0304-8853(03)00672-3

希土類元素\(R\)を含む化合物の比熱について解析するとき非磁性成分(電子比熱やフォノン比熱)については非磁性元素\(R=\) Y, Luを含む同型の化合物の値で代用する場合が多い。フォノン比熱はイオンの重さ\(M\)によって異なるはずのなので下記の内挿公式を与えている。

\(C^{R}_{\text{nonmag}}=C^{\text{Lu}}_{\text{p}}-(C^{\text{Lu}}_{\text{p}}-C^{\text{Y}}_{\text{p}})\frac{M_{\text{Lu}}^{3/2}-M_{R}^{3/2}}{M_{\text{Lu}}^{3/2}-M_{\text{Y}}^{3/2}}\)

ただし希土類化合物の音響フォノンのデバイ温度が組成式中の希土類\(R\)の種類にのみよって決まるという仮定が入っている。たとえば組成式が\(R\)Al\(_{10}\)のように極端な場合を考えればわかるようにこの仮定は一般には成り立たない。鵜呑みにするのは危険である。

また電子比熱の変化は取り入れられていないので\(R\)ごとに違うフェルミ面や状態密度、有効質量の効果は別に取り入れた方がよいだろう。

1. Relation between the specific heat and susceptibility of an antiferromagnet, M. E. Fisher, Phil. Mag. 7, 1731 (1962). doi.org/10.1080/14786436208213705

磁気比熱と磁化率の関係\(C_{\text{p}}(T) \propto \partial (T\chi)/\partial T\)について導出している。複雑な磁気転移をする物質では全然成り立たない。単純な磁気構造だと磁化カーブも単純になり成り立つようだ。何らかの事情で比熱が測れないときに磁化測定だけでエントロピーを議論したいときに使えそう。

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