Thursday, October 24, 2024

その物理量、みつもれますか?

実験でデータが得られたらそれで終わりではない。一つの実験値からいろいろなことが見積もれる。必要になるたびにいちいち導出するのは面倒なのでメモしておく。当然適切な使い方をしなければ見積もりは間違った推論を引き起こす。見積値を用いて考察するときの注意点も追記していく。

目次

物理定数

単位を換算したりするときにこれらの量を使うことになる。値はウィキペディアから取ってきているが、たぶんあっているだろう。安達磁性の裏表紙には電子質量が~\(10^{-34}\) kgと書いてある。深刻な誤植が多い教科書として有名だがこんなところにまで誤植があるのは本当に信じられない。

電荷素量 \(e\) = 1.602176634E−19 C

プランク定数 \(h\) = 6.62607015E−34 J\(\cdot\)s

ディラック定数 \(\hbar=h/2\pi\) = 1.054571817E-34 J\(\cdot\)s

ボルツマン定数 \(k_{\text{B}}\) = 1.380649E−23 J K\(^{-1}\)

アボガドロ定数 \(N_{\text{A}}\) = 6.02214076E23 mol\(^{-1}\)

気体定数 \(R = (N_{\text{A}}k_{\text{B}})\) = 8.31446261815324 J K\(^{−1}\) mol\(^{-1}\)

光速 \(c\) = 299792458 m/s

電子質量 \(m_{\text{e}}\) = 9.1093837139E−31 kg

ボーア磁子(\(\mu_{\text{B}}=\frac{e\hbar}{2m_{\text{e}}}\)):9.2740100657(29)E−24 J T\(^{-1}\)


比熱

電子状態密度とデバイ温度(\(D(E_{\text{F}})\), \(\Theta_{\text{D}}\))

固体の比熱(\(C_{\text{p}}\))が伝導電子、フォノンの寄与からなるとすると、十分低温で

\(C_{\text{p}}=\gamma T+\beta T^3\)

と書ける。単位はJ K\(^{-1}\) mol\(^{-1}\)。 \(\gamma\)は電子比熱で単位はK\(^{-2}\) mol\(^{-1}\)。\(\beta T^3\)は音響フォノンの比熱。ここで大事なのはmolが何に対する量なのかということである。たいていは組成式のformula unitが1 mol集まったときの量を考えているが、別に単位胞1 molでもいいし、単体物質だったら原子1 molだってよい(2原子分子だったらどうとるのがいいのだろう?)。単位の見た目からはそのことが分からなくなっている。

電子比熱はフェルミエネルギーにおける状態密度(\(D(E_{\text{F}})\))と関係していて、

\(\gamma=\frac{\pi^2}{3}k_{\text{B}}D(E_{\text{F}})\)

と書ける。後者の単位はeV\(^{-1}\) f.u.\(^{-1}\)が使われることが多い。f.u.はここでも代替として単位胞あたりだったり原子当たりだったりする。表記から省かれることがあるが明らかに混乱のもとである。\(\gamma\)の測定値から見積もる場合、電荷素量とアボガドロ定数でスケールする。

\(D(E_{\text{F}})\) [eV\(^{-1}\) f.u.\(^{-1}\)] = \(\gamma\) [J K\(^{-2}\) mol\(^{-1}\)] \(\cdot N_{\text{A}}^{-1}\cdot \frac{3}{\pi^2k^2_{\text{B}}}\cdot e\)

これと何かを比べるとしたら、ARPESや量子振動でフェルミオロジーをすることによってフェルミ面の形を解析した場合だろう。\(i\)番目のフェルミ面の大きさが第一ブリルアンゾーン内で\(S\) [Å\(^{-3}\)]であればそれをエネルギー微分して

\(D_i=\frac{1}{8\pi^3}\frac{\partial S}{\partial E}\times s \times v\) [Å\(^{-3}\) eV\(^{-1}\)]と求められる。\(1/8\pi^3\)は単位体積あたりの物質に対して、運動量空間の単位体積当たりの状態数で、\(S\)にこれをかけないと状態密度にならないから必要である。\(s\)はフェルミ面\(i\)がスピン縮退していれば2, していないなら1である。系の空間・時間反転対称性の破れ方によってスピン縮退は解けたり解けなかったりするので、\(i\)番目のフェルミ面がどうなっているのか注意が必要だ。\(v\)はバレー自由度で例えば六方晶のM点のフェルミ面ならコピーが3つあるので3になる。エネルギー微分とは何だろうかというとバンドの傾きなので、有効質量に関する情報が何かしら必要になる。有効質量は一般的に異方的なので、複雑なフェルミ面の全情報を得ることは困難で、何らかの近似が必要になるだろう。回転楕円体とかまでなら比較的に簡単に計算できる。大事なのはここでも状態密度の単位で、[Å\(^{-3}\) eV\(^{-1}\)]をf.u.あたりに変えることが必要になる。


デバイ模型では体積\(V\)の固体の中に\(N\)個の点(振動子)があると考えて系の全比熱を以下のように書く。

\(C=9Nk_{\text{B}}(\frac{T}{\Theta_{\text{D}}})^3 \int_0^{\Theta_{\text{D}}/T}{\frac{z^4e^z}{(e^z-1)^2}}\text{d}z\)

積分は低温極限で\(\frac{4\pi^4}{15}\)になるので

\(C_{\text{LT}}=\frac{12\pi^4}{5}Nk_{\text{B}}(\frac{T}{\Theta_{\text{D}}})^3\)

となる。単位はこの時点ではJ K\(^{-1}\)。実験値と合わせるためにf.u. molあたりの量にすると、体積\(V\)の中にf.u.体積\(v\)が\(V/v\)個ある。これは\(V/(vN_{\text{A}})\) molあるので

\(C_{\text{LT}}\) [J K\(^{-1}\) mol\(^{-1}\)] \(=\frac{12\pi^4}{5}(\frac{Nv}{V})N_{\text{A}}k_{\text{B}}(\frac{T}{\Theta_{\text{D}}})^3=\frac{12\pi^4}{5}nN_{\text{A}}k_{\text{B}}(\frac{T}{\Theta_{\text{D}}})^3\)

ここでf.u.あたりの振動子数として\(n=Nv/V\)を導入した。

フォノン比熱はデバイ温度(\(\Theta_{\text{D}}\))を使って、

\(\beta =\frac{12\pi^4k_{\text{B}}N_{\text{A}}}{5\Theta_{\text{D}}^3}\cdot n\)

と書けるのでデバイ温度は

\(\Theta_{\text{D}}=\sqrt[3]{\frac{12\pi^4k_{\text{B}}N_{\text{A}}}{5\beta}n}\)

から見積もれる。

ここでデバイ温度の単位は単にKのみなので、電子比熱にはあったmolやf.u.の定義に関するわずらわしさが一見するとなくなってしまったように見える。しかしそうではなく、継続してどのようなmolあたりの比熱から見積もったデバイ温度なのか?がほかの物理量を見積もるときの定義式に影響を与える。単位からはその情報が完全に抹消されるのでむしろ電子比熱のときより病的であると言える。

また謎の因子\(n\)を説明していない。これはf.u.あたりの振動子の個数で定義され、デバイモデルを適用するときにどのように仮定を置いたかにも影響される因子である。例えば単体で単位胞当たり1原子しかないなら、振動子は\(v\)あたり1つなので\(N=V/v\)となって、\(n=1\)となって単純だ。しかし単体でない、単位胞内に複数原子がある、単位胞内に複数f.u.あるとなった時点で、振動子をいくつに取るのかはフォノン分散にどのようなモデルを適用したかに依存する。これはどこまでを音響フォノンとみなして、どこまでを光学フォノンとみなすかと関係している。たとえばf.u.あたり\(p\)個の原子がある場合、格子振動の自由度は\(3p\)個ある。このうち3つを音響フォノンに割り当てると\(n=1\)になって、のこりの\(3p-3\)個は光学フォノンに割り当てることになる。一方、\(n=p\)とするとすべての格子変位の自由度を音響フォノンに割り当てることになる。明確な基準はなく、解析する人の好みで変えていいことになっている。それにもかかわらず文献ではそのことを明記しないことがほとんどである。そのためデバイ温度は異なる文献同士で値を比較するのはほとんど不可能に近い。それにもかかわらず誰も気にしていない、そんな物理量(?)である。

具体例をあげよう。

(1)CaF\(_2\)の比熱。f.u.あたり3原子あるので\(n=3\)とおく(doi.org/10.1103/PhysRev.117.709)。これは光学フォノンまですべて含めてデバイ模型で近似するということである。これはまあ組成式も単純だし、良しとしよう。

(2)スピネルFeMn\(_2\)O\(_4\)の比熱。f.u.あたり7原子あるので\(n=7\)とおく(doi.org/10.1103/PhysRevB.97.024410)。ちゃんと書いてて偉い。

(3)YBa\(_2\)Cu\(_3\)O\(_{7-\delta}\)の比熱。f.u.あたり13原子あるので\(n=13\)とする(doi.org/10.1103/PhysRevB.36.2401)。\(\delta\)のことはどうでもいいようだ。それにしても4種類13原子をすべて音響フォノンの振動子とみなすのはなんかもやっとする。

(4)フラーレンの比熱。フラーレンはC\(_{60}\)の分子式の物質で250 K以下で分子が4つ一組になり、単純立方格子を形成している。4分子をひとまとめの点にして振動子とみなすならf.u.あたりの振動子は\(n=1/4\)になる(doi.org/10.1103/PhysRevLett.68.2046)。一気に少なくなった。フラーレンだとさすがに各分子60個の原子からなるから、f.u.あたりの振動子数として60を採用するのは気が引けるようだ。線引きはどこにあるんだろう。

(5)triphenylene2,3,6,7,10,11-hexacarboxylic acid methyl esterの比熱。もはや1分子の原子数がよくわからなくなっているが、1分子当たり1振動子とおくようだ(doi.org/10.1021/jacs.3c07921)。これは自然な定義な気がする(もちろん明記しないと意味がない)。

(6)ペロフスカイトの音速。パターンが見えてきたよと思い始めたところ悪いが例外(doi.org/10.1016/0031-9201(89)90253-7)。これはABX\(_3\)のペロフスカイト物質に対してf.u.あたり\(n=1\)と置いている。5ではなくて残念。とはいえ定義を明記しているだけましである。


熱輸送

音速(\(v_{\text{s}}\))

音響フォノンの分散の\(\Gamma\)点近傍の傾き\(\omega=v_s \hbar k\)で音速\(v_s\)が与えられる。デバイ模型では\(T^3\)比熱に寄与する音響フォノン分散が存在する運動量空間の領域を半径\(k_{\text{D}}\)の球で近似する。そのとき振動子の個数と球の中の状態数が一致するように\(k_{\text{D}}\)をきめるので、

\(\frac{1}{8\pi^3}\frac{4\pi}{3}k^3_{\text{D}}=n/v\)

となる。\(n\)はf.u.あたりの振動子数。\(v\)はf.u.あたりの体積である。

\(v_{s}\hbar k_{\text{D}}=k_{\text{B}}\Theta _{\text{D}}\)

によって音速の表式が得られるので、音速はデバイ温度を使って

\(v_s=\frac{k_{\text{B}}\Theta_{\text{D}}}{\hbar}(6\pi^2 n /v)^{-1/3}=\frac{k_{\text{B}}\Theta_{\text{D}}}{\hbar}(6\pi^2 \frac{nN_{\text{A}}\rho}{M})^{-1/3}\)

と書ける。最後の式は\(\rho\)が密度、\(M\)が分子量で、\(v=M/(N_{\text{A}}\rho)\)を書き換えただけだが、文献によってはこっちの方がでてくる。

音速からデバイ温度を消し去って、フォノン比熱係数\(\beta\)だけの式にすれば恣意性のある\(n\)から解放される。その際、比熱係数は単位体積当たりの量\(\beta'=\beta/(N_{\text{A}}v)=\frac{12\pi^4k_{\text{B}}}{5\Theta^3_{\text{D}}}\frac{n}{v}\) [J K\(^{-4}\)m\(^{-3}\)]にスケールしておく。

\(v_s=(\frac{2\pi^2}{5})^{1/3}\frac{k^{4/3}_{\text{B}}}{\hbar}(\beta')^{-1/3}\) [m/s]


平均自由行程(\(l\))

熱伝導率\(\kappa\)は温度勾配がある系における熱流量を特徴づける量で

\(J_x=\kappa_{xx} (-\frac{\partial T}{\partial x})\)

である。テンソル量なので\(xx\)成分を書いた。単位はW K\(^{-1}\) m\(^{-1}\)で与えられることが多い。

初等的な熱拡散の考察から熱伝導率は以下で与えられる。

\(\kappa = \frac{1}{3}C_{\text{p}}v_{s}l\)

ここで、\(l=v_s \tau\)は平均自由行程で散乱時間\(\tau\)までの間に進む距離である。熱伝導率、フォノン比熱、音速のそれぞれが与えられていれば\(l\)を見積もれる。

\(l=3\kappa /C_{\text{p}}v_s\)

ここで比熱は単位体積当たりの量になるように単位を変換する必要がある。もともとf.u. molあたりで測定していた場合はf.u. molあたりの体積が必要になる。これは単位胞の体積と同じになるとは限らない。単位胞内にf.u.が何個あるかよく確認しよう。

低温ではフォノンの散乱は抑制され、試料端での散乱のみになる。\(l\)の温度依存性と試料寸法を比べて散乱メカニズムの推移を観察できる。


輸送

抵抗率(\(\rho_{xx}\)):

抵抗試料に電流\(I\)を流したときの電圧が\(V\)だとして、オームの法則\(V=RI\)によって抵抗(resistance)を定義する。抵抗率(resistivity)は試料の寸法の因子を規格化したもので、電流密度(単位断面積当たりの電流) \(J_i\)が流れているときの電場(単位長さ当たりの電圧変化) \(E_i\)は抵抗率テンソル(\(\rho_{ij}\))をつかって\(E_i=\rho_{ij}J_j\)と書ける。ここで\(i=x,y,z\)はデカルト座標系の各方向。

\(xx\)成分の抵抗率は

\(\rho_{xx}=R\cdot w\cdot t/l\)

と書ける。ここで\(w\)は試料の幅、\(t\)は試料厚さ、\(l\)は電圧を測定した電極間の距離である。\(\rho_{xx}\)の単位はOhm \(\cdot\) cmなどである。

それぞれの寸法が\(t=200\) \(\mu\)m, \(w=500\) \(\mu\)m, \(l=1000\) \(\mu\)mの試料を測定して、1 mA流して10 \(\mu\)Vの電圧を観測したら\(\rho_{xx}=100\) \(\mu\)Ohm\(\cdot\)cmである。もし1 \(\mu\)Ohm cm以下の抵抗率を測定したい場合、シグナルを大きくするにはどうしたらいいだろうか?ノイズレベルと得られる試料の大きさと相談だ。


残留抵抗比(RRR):

抵抗率の高温~300 Kなどでの値\(\rho_{\text{300 K}}\)と最低温~ 2 Kなどでの残留抵抗値\(\rho_{0}\)の比:\(\rho_{\text{300K}}/\rho_{0}\)をRRRという。金属というものは低温にいくにしたがって抵抗が下がるものというゆるい定義があるので(半導体的な場合はこの逆になる)、RRRは1より大きく、大きければ大きいほど良い金属というわけである。高温ではフォノン散乱などの影響で高い抵抗を示していたものが、温度を下げるにしたがって不純物散乱のみが残るというわけである。

抵抗を使ってもこの値は変わらないので、比較対象となる文献値が抵抗でしか与えられていないときはこれを見積もればよい。無次元量。10前後を目指したい...


ホール抵抗率(\(\rho_{yx}\)):

印加電流(\(I_x\)とする)に対して横方向(\(y\)とおく)に生じる電圧(\(V_y\))をホール電圧という。抵抗と同様、ホール抵抗率(\(\rho_{yx}\))に換算できて、

\(\rho_{yx}=V_y/I_x\cdot w \cdot t/l'\)

となる。ここで\(l'\)はホール電圧を測定した電極間距離(の\(y\)軸射影成分)。\(w\)と\(l'\)はほぼ同じになるので、ホール抵抗率の小さな試料に対してシグナル\(V_y\)を大きくしたいなら\(t\)を薄くするか\(I_x\)を大きくするしかない。そうはいっても\(t\)はせいぜい50 \(\mu\)mで、\(I\)は10 mAくらいだろう。観測したいホール抵抗率に対してホール電圧\(V_y\)はどれくらいか?測定系のノイズレベルはどれくらいか?検討してみよう。


ホール係数(\(R_{\text{H}}\)):

ホール抵抗率が印加磁場(\(B\))に関して線形だとすると比例係数(\(R_{\text{H}}\))を使って

(\(\rho_{yx}=R_{\text{H}}B\))

と書ける。キャリアは正なら正孔的、負なら電子的である。符号に注意しよう。これは\(xyz\)座標を右手系でとる限り必ずこうなる。単位はcm\(^3\)/Cが多い。Ohm\(\cdot\)cm/T = Ohm cm m\(^2\)/V/s = 10\(^4\) cm\(^3\)/C。

仮に1 Tで1 \(\mu\)Ohm cmのホール抵抗率なら、\(R_{\text{H}}=10^{-2}\) cm\(^3\)/C。

ホール効果は磁場に関して線形とは限らないが、ゼロ磁場付近の傾きを取るとか、線形になっている部分をある程度恣意的に選んで見積もられることが多い。いい加減だなあ。


キャリア密度(\(n\)):

単バンド球形フェルミ面を持つ系のキャリア密度は\(R_{\text{H}}=\pm\frac{1}{en}\)から見積もれて、

\(n=\frac{1}{e|R_{\text{H}}|}\)

である。\(R_{\text{H}}\)が大きいほど\(n\)は小さく見積もられる。単位はcm\(^{-3}\)が多い。

\(R_{\text{H}}=10^{-2}\) cm\(^3\)/Cなら\(n\sim 6.2\times 10^{20}\) cm\(^{-3}\)。

もちろん一般に物質はマルチバンドである。理論的には強磁場極限でこの見積もり方でもトータルのキャリア密度を見積もれることになっているが、現実的ではないし、検証がどれくらいされているのか不明。ゼロ磁場極限でのホール係数からキャリア密度を見積もる場合、各キャリアの移動度で加重平均を取っていることになる。

もっとも簡単な2キャリア系におけるゼロ磁場近傍のホール係数は以下のようになる。

\(R_{\text{H}2}=\frac{\rho_{yx}}{B}=\frac{1}{e}\frac{n_{\text{h}}\mu^2_{\text{h}}-n_{\text{e}}\mu^2_{\text{e}}}{(n_{\text{h}}\mu_{\text{h}}+n_{\text{e}}\mu_{\text{e}})^2}\)

\(n_{\text{e/h}}\)は電子・正孔のキャリア密度、\(\mu_{\text{e/h}}\)はそれぞれの移動度である。仮に正孔のみだった場合、正しく符号が正になることを確認しよう。

この式からそれぞれのキャリア密度と移動度の大小によってホール係数は正にも負にもなれることが分かる。とある論文でホール係数がドープによって変化したからキャリア密度が変わったのだという粗い議論をしているのを見たことがあるがとんでもなくいい加減な解析である(その方が彼らの主張にとって都合がよかったからというのは言うまでもない)。ドープによってキャリアが注入されなくてもそれが特定のキャリアの移動度に強く影響を与えるならホール係数の符号は変化してしまう(doi.org/10.1007/BF01320170)。ホール係数からキャリア密度を見積もる際の妄信は禁物である。


移動度(\(\mu\)):

ドルーデ理論によりゼロ磁場の抵抗率\(\rho_{0}\)は

\(\rho_{0}^{-1}=\sigma=en\mu=ne^2\tau/m_{\text{eff}}\)

で与えられる。ここで\(\sigma\)は伝導率、\(m_{\text{eff}}\)はキャリアの有効質量、\(\tau\)は散乱時間である。

移動度\(\mu\)は

\(\mu=\frac{e\tau}{m_{\text{eff}}}\)

で定義されているが、\(\tau\)などがわからないと見積もれない。単位はcm\(^2\)/(V\(\cdot\)s)が採用されることが多い。1000 cm\(^2\)/(V\(\cdot\)s)を超えないと話にならない。

抵抗が良いとは抵抗が低いことを指す表現で、この式に従うなら移動度が高いほど、キャリア密度が高いほど、抵抗が良いといえる。移動度は散乱時間が長いほど、有効質量が軽いほど高い。キャリア当たりの流れやすさといった感覚と合致する。

ちょうど磁束密度の逆数になっており、例えば1000 cm\(^2\)/(V\(\cdot\)s) \(= \frac{1}{10}\) T\(^{-1}\)。量子効果が見え始める磁場に対応しており、量子振動を見るには\(B> \mu^{-1}\)ぐらいが必要(と期待される)。まず抵抗とホールを測ってみて、下記のように移動度を見積もり、どれくらいの磁場が必要か(おうちラボでせいぜい10 T)、ときには強磁場実験(30 T以上)を検討しなければいけないかを知っておくことができる。ただし本当に量子振動をするかは実際測ってみるまでわからない。

ホール測定でキャリア密度\(n\)が見積もられていれば上式から移動度が

\(\mu_{\text{H}}=1/(e\rho_{0}n)=|R_{\text{H}}|/\rho_{0}\)

と見積もられ、いわゆるホール移動度と呼ばれている。

仮に\(\rho_{0}=5\) \(\mu\)Ohm cm、\(n=6.2\times 10^{20}\) cm\(^{-3}\)なら\(\mu_{\text{H}}=2000\) cm\(^2\)/(V\(\cdot\)s)となる。マルチキャリアであることを考慮していないので平均値を求めているような格好になる。ホール効果が磁場に関して線形であることを前提にしているので、非線形性が出るようなら2バンドモデルなどを試みよう。

ホール効果を測らなくても磁気抵抗だけから移動度を見積もることができる。磁場中の抵抗とゼロ磁場抵抗の差をゼロ磁場抵抗で比を取ったものを磁気抵抗率(MR)と呼ぶ。

\(MR=(\rho (B)-\rho_0)/\rho_0=\Delta \rho/\rho_0\)

半古典理論で伝導率(\(\sigma\))を書くと

\(\sigma(B) = \frac{en\mu}{1+(\mu B)^2}\)

なので、ホール効果は無視できるとして\(\rho=\sigma^{-1}\)から

\(MR=(\mu B)^2\)

である。このとき、シングルバンド系の半古典理論をまじめに考えると磁気抵抗は出ない(!?)という結論に至ることは無視する。なぜなら実際磁気抵抗は出るからだ。一方で、実際測ってみるとMRは\(B^2\)からかなりずれることが多い。それも無視して無理やりフィットすると\(\mu\)が求まる。ホール移動度と一致しないことも多いので区別するために\(\mu_{\text{MR}}\)と書いたりする。


フェルミ波数(\(k_{\text{F}}\)):

球状のフェルミ面の場合、フェルミ球の半径\(k_{\text{F}}\)はキャリア密度\(n\)であらわせる。スピン自由度を考慮して

\(n=\frac{2}{8\pi^3}\frac{4\pi}{3}k^3_{\text{F}}=\frac{k^3_{\text{F}}}{3\pi^2}\)

よって、\(k_{\text{F}}=\sqrt[3]{3\pi^2n}\)となる。ここでホール効果で見積もったキャリア密度を無理やり入れればフェルミ波数が見積もれる。単位はÅ\(^{-1}\)やnm\(^{-1}\)。キャリア密度が低いほどフェルミ波数も小さい。もちろんフェルミ面は単純な球とは限らないので、この見積もりで分かるのはフェルミ面の運動量空間での大きさのおおよその値である。ブリルアンゾーンの大きさは格子定数から簡単に見積もれるのでそれと比べたりできそう。


有効質量(\(m_{\text{eff}}\)):

これは電子比熱\(\gamma\)とフェルミ波数(\(k_{\text{F}}\))から見積もれる。

\(D(E_{\text{F}})=\frac{\partial n}{\partial E_{\text{F}}}=\frac{k_{\text{F}}m_{\text{eff}}}{\hbar^2\pi^2}\)

\(m_{\text{eff}}=\frac{3\hbar^2 \gamma}{k^2_{\text{B}}k_{\text{F}}}\)

ここで\(\gamma\)の単位はmolで測ったものではなく単位体積を使って、J K\(^{-2}\) m\(^{-3}\)に換算する。たとえばf.u. 1 molあたりの比熱から\(\gamma\)を見積もっているならf.u.あたりの体積を見積もってからスケールする必要がある。比熱測定は低温で行われるので、単位胞の体積を見積もるには低温での格子定数が必要だが、格子定数の室温からの収縮は無視して(せいぜい0.5%)、室温XRD測定で見積もっても精度としては十分である。電子比熱が大きいほど有効質量は大きい。マルチキャリアの効果は考慮されていない。


フェルミエネルギー(\(E_{\text{F}}\))

フェルミ波数\(k_{\text{F}}\)と有効質量\(m_{\text{eff}}\)の見積もりがあれば、フェルミエネルギーが見積もれる。これはつまり、電子比熱\(\gamma\)とキャリア密度\(n\)からフェルミエネルギーを見積もれるということである。

\(E_{\text{F}}=\frac{\hbar^2}{2m_{\text{eff}}}(3\pi^2n)^{2/3}=\frac{\pi^2k^2_{\text{B}}n}{2\gamma}=\frac{3n}{2D(E_{\text{F}})}\)

ここで\(n\) [f.u.\(^{-1}\)]と\(D(E_{\text{F}})\) [eV\(^{-1}\) f.u.\(^{-1}\)]の単位に注意しよう。状態密度の単位に合わせるために\(n\)はf.u.の体積に合わせてスケールする必要がある。

当然マルチバンドであることは考慮されていない。下記にあるように量子振動で各フェルミ面の大きさと有効質量が見積もれれば各バンドのフェルミエネルギー(?)なるものが見積もれる。注目しているバンドだけを抜き出してきて有効モデルを作るときとかに使えそう。

またフェルミエネルギーからフェルミ温度\(k_{\text{B}}T_{\text{F}}=E_{\text{F}}\)を見積もっておくと、測定している温度領域に対して電子がどれくらい縮退しているかを見積もれてよい。フェルミ・ディラック分布をデルタ関数として扱う近似は\((1-(T/T_{\text{F}})^2)\)のオーダーでずれるので、仮に\(E_{\text{F}}=100\) meVくらいだとしたら\(T_{\text{F}}=1000\) K。\(T=2\) Kで十分だが\(T=300\) Kではだいぶ良くない。

フェルミエネルギーが必要になるもう一つの場面は異常ホール効果の外因性・内因性クロスオーバーである。Onoda-Sugimoto-Nagaosa論文(doi.org/10.1103/PhysRevB.77.165103)によると\( E_{\text{F}}\tau/\hbar> \pi/2\)でdirty領域から内因性領域へ移行し、\( E_{\text{F}}\tau/\hbar> 100\)から内因性領域から外因性領域への移行が起きるように見える。多くの論文ではこの因子を見積もることはやられておらず、縦の伝導率\(\sigma_{xx}\)に書き換えるということがなされる。典型的な物質で\( E_{\text{F}}\tau/\hbar\)による見積りと伝導率による見積りのスケールがそこまで変わらないからよしとされているようであるが、いずれにしろ大雑把な話である。仮に縦伝導率の式から無理やり\(E_{\text{F}}\tau/\hbar\)を抜き出して来ようとすると以下のようになる。

\(\sigma_{xx}=(\frac{8}{3\pi^2})^{2/3}\frac{e^2n^{1/3}}{\hbar}\frac{E_{\text{F}}\tau}{\hbar}\)

キャリア密度あるいはフェルミ波数が分かっていれば\(E_{\text{F}}\tau/\hbar\)に\(\pi/2\sim 100\)を入れてみれば対象となる物質の異常ホール効果の外因性・内因性クロスオーバーの領域が見積もれそうである。実際ここまでやって議論している論文は見たことがない。仮に格子定数\(a\)を使って\(n^{1/3}\sim 1/a\)と置き換えると表式が\(n\)によらなく、\(a\)は物質によってそんなに変わらないので、\(\sigma_{xx}\)についてのスケーリングととらえることができる。もともとが2次元の理論なので3次元物質に適用するときに恣意性が入り込みそうだ。


散乱時間(\(\tau\)):

有効質量\(m_{\text{eff}}\)と移動度\(\mu\)があれば

\(\tau=\mu m_{\text{eff}}/e\)

から見積もれる。単位はs。

\(\mu=1000\) cm\(^{2}\)/(V\(\cdot\)s)で有効質量を\(m_{\text{e}}\)とすると、\(\tau = 5.7\times 10^{-13}\) sである。これは電子が\(k\)から\(k'\)に散乱される時間というわけではなく、輸送にかかわるキャリアの寿命を測っている。つまり\(k\)と\(k'\)の間の角を\(\theta\)とし、散乱断面積を\(\text{d}\sigma/\text{d}\Omega\)とすると、

\(1/\tau = v_{\text{F}}\int _ 0 ^\pi \frac{\text{d}\sigma}{\text{d}\Omega}(1-\cos \theta)\text{d}\Omega\)

である。Dingle温度\(T_{\text{D}}\)をつかって

\(\hbar/\tau_{\text{q}}=k_{\text{B}}T_{\text{D}}\)

によって求められる量子緩和時間\(\tau_{\text{q}}\)との違いに注意しよう。


フェルミ速度(\(v_{\text{F}}\))

有効質量\(m_{\text{eff}}\)とフェルミ波数\(k_{\text{F}}\)があれば

\(v_{\text{F}}=\frac{\hbar k_{\text{F}}}{m_{\text{eff}}}\)

から見積もることができる。これは何に使うのかよくわからない。


平均自由行程(\(l_{\text{mfp}}\))

フェルミ速度\(v_{\text{F}}\)と散乱時間\(\tau\)があれば

\(l_{\text{mfp}}=v_{\text{F}}\tau=\frac{\hbar k_{\text{F}}\tau}{m_{\text{eff}}}\)

から見積もることができる。単位はnm。これが格子定数(~0.5 nm)や系の典型的な長さスケール(試料寸法(~ 0.1 mm)やSDW, CDWなどの長周期構造(~10-100 nm))と比べて十分長いとより散乱されにくいとみなせる。

上記の式だと有効質量単体を見積もらないといけないように見える。つまり比熱を測定しないといけないと考えてしまうかもしれない。しかし散乱時間と有効質量をまとめると移動度になる。移動度はホール移動度を使うならホール係数とゼロ磁場抵抗率から見積もれる。フェルミ波数はキャリア密度、つまりホール係数から見積もれる。以上より、

\(l_{\text{mfp}}=\frac{\hbar k_{\text{F}}}{e}\frac{e\tau}{m_{\text{eff}}}=\frac{\hbar k_{\text{F}}}{e}\mu_{\text{H}}=\frac{\hbar \sqrt[3]{3\pi^2 n}}{e}\frac{|R_{\text{H}}|}{\rho_0}=\frac{\hbar (3\pi^2)^{1/3}}{e^{4/3}}\frac{R^{2/3}_{\text{H}}}{\rho_0}\)

となり、抵抗・ホール測定のデータだけから平均自由行程は見積もれる。\(e^{-4/3}\)が気色悪いが、\(R_{\text{H}}^{2/3}\)からC\(^{-2/3}\)が来てくれるので安心してほしい。なんだか何でもできそうになってきた。


量子振動

フェルミ面の断面積と振動数:

量子振動の周波数\(F\)は単位Tの量である。これは磁場に垂直な面でフェルミ面の断面を取ったときの断面積の極大・極小値(\(A\))と関係している。

\(A=\frac{2\pi eF}{\hbar}\)

\(A\)の単位はÅ\(^{-2}\)が多い。

断面が真円だとするとするとフェルミ波数\(k_{\text{F}}\)が見積もれる。

\(k_{\text{F}}=\sqrt{A/\pi}\)

単位はÅ\(^{-1}\)になる。真円でなくてもこの式を当てはめて大体のフェルミ波数を見積もることができる。これは各バンドの対して見積もれるので、抵抗測定のみから見積もったのより精度が向上している。ただし、フェルミ面の極値が知れるだけなので、もっと詳しい情報を得るためには磁場をいろいろな方向にかけたりする必要がある。


有効質量(\(m_{\text{eff}}\))

量子振動の振幅(\(R_{T}\))を各温度で測り、リフシッツ・コセヴィッチの式から有効質量を見積もることができる。これはサイクロトロン有効質量で、バンドのフェルミエネルギー近傍の分散に直接関係している。

\(R_{T}\propto X/\sinh X\)

ここで\(X=2\pi^2k_{\text{B}}m_{\text{eff}}T/e\hbar \bar{B}\)で、\(\bar{B}\)に関しては振動を測定した磁場の範囲 [\(B_l\), \(B_h\)] を逆数平均したものを使う。つまり\(1/\bar{B}=1/2\cdot (1/B_h+1/B_l)\)。これはこれで見積もる有効質量に誤差を与える要因となる。抵抗測定では単バンドモデルで近似して有効質量を見積もるが、量子振動では各バンドのそれぞれの有効質量を見積もれる。

当然だが振動が観測できないバンドの見積もりはできない。そこで、電子比熱とフェルミ波数から有効質量を見積もったのとは逆の計算を行い、量子振動で観測できているバンドの有効質量とフェルミ波数から各バンドの電子比熱への寄与を見積もる。それらを使い、比熱測定により直接得られた電子比熱から差っ引くことで観測できていないバンドの電子比熱(状態密度)を知ることができる。ホール測定からキャリア密度が分かっているなら、そこから量子振動が観測されたバンドのキャリア密度(各フェルミ波数から概算)を差っ引くことで残りのキャリア密度も知れるので、振動が観測できていないバンドの有効質量も見積もれる(?)。


フェルミ速度(\(v_{\text{F}}\)):

有効質量とフェルミ波数からフェルミ速度が求まる。つまり

\(v_{\text{F}}=\frac{\hbar k_{\text{F}}}{m_{\text{eff}}}\)

ARPESで観測したバンド分散と比べるときに使えそうだ。


熱電能

ゼーベック効果:

伝導体において温度勾配をかけたときに縦方向に電場が発生する現象をゼーベック効果という。ゼーベック係数(\(S\))とは

\(E_x=S(\partial T/\partial x)\)

で定義されるので、これは直接測定することができる。一方で単バンドモデルで電子比熱とキャリア密度で見積もることもできる。

\(S/T=\frac{\pi^2}{3}\frac{k^2_{\text{B}}}{e}\frac{1}{E_{\text{F}}}=\frac{2}{3}\frac{\gamma}{en}\)

モデルの観点では上式はフェルミ温度より十分低温なら温度によらない定数である。一方でホール測定で求めたキャリア密度は温度に関して一定とは限らない。これはマルチバンドの効果とか、緩和時間のフェルミ面効果とかの影響のためである。また一般に\(S\)は\(T\)に比例するとは限らないし、フォノンドラッグなどもあるので上式左辺の量を測定しても温度に関する定数にはならないことが多い。とはいえ、式の両辺ともに測定出来てしまうわけで、比熱とホール測定で見積もられた値と直接測定で観測されたゼーベック係数がどれくらい一致するのかは確認しておくのがよいだろう。仮に一致すればゼーベック効果が出ている原因を大まかには理解できたことにすればいいし、大きくずれているなら何らかの妄想メカニズムをこねくり回して議論をもりもりしていけばいい。

マルチキャリアの場合、ゼーベック係数は伝導率を考慮した加重平均になる。

\(S=\frac{\sigma_{\text{h}}S_{\text{h}}+\sigma_{\text{e}}S_{\text{e}}}{\sigma_{\text{h}}+\sigma_{\text{e}}}\)

もし量子振動などでフェルミ面の形状が分かっており、各バンドの\(n_{\text{e/h}}\)や\(\gamma_{\text{e/h}}\)が別々に見積もれるなら、もしくは要するに各バンドのフェルミエネルギー(\(E_{\text{F,e/h}}=\frac{\hbar ^2k^2_{\text{F}}}{2m_{\text{eff}}}\))が見積もれるなら、各バンドのゼーベック係数は見積もれて

\(S_{\text{e/h}}/T=\mp \frac{2}{3}\frac{\gamma_{\text{e/h}}}{en_{\text{e/h}}}=\mp \frac{\pi^2}{3}\frac{k^2_{\text{B}}}{e}\frac{1}{E_{\text{F,e/h}}}\)

となる。符号は電子にはマイナス、正孔にはプラスを割り当てておけばいいだろう。電気抵抗測定で2バンド解析をすれば\(\sigma_{\text{e/h}}\)も別個に見積もれるので\(S\)が見積もれる(?)。

有効質量が重いキャリアは伝導率が小さくなりやすく、ゼーベック係数は大きくなりやすい。有効質量が軽いと逆になることが分かる。正孔的なバンドは正、電子的なバンドは負の寄与をするので、それぞれのバンドの有効質量の軽重によってトータルのゼーベック効果は正負両方をとれそうである。バンドが異方的であれば有効質量も異方的になるのでゼーベック効果も異方的になる。結晶のある軸方向で測ると正のシグナルが出ていたものが別の方向を測ると負のシグナルになることも容易に想像できる(goniopolarityという)。


磁性

有効ボーア磁子(\(p_{\text{eff}}\))

磁性を調べようとした場合、まず測定するのが磁化率の温度依存性である。磁気転移点より高温の磁化率(\(\chi\))はキュリー・ワイス則に従って、

\(\chi=\frac{C}{T-\Theta_{\text{W}}}\)

と書ける。単位はemu mol\(^{-1}\)などというわけの分からないものを使う。\(C\)はキュリー定数、\(\Theta_{\text{W}}\)はワイス温度。ここでもmolの意味が不明確になる。f.u.あたりに磁性イオンが複数あったらその量だけ大きくなる(たとえばCr\(_2\)O\(_3\)ならf.u.あたりCrが2つある)。仮に一種類の磁性イオンなら1イオンあたりの量(emu/Cr)で計算することもある。測定でデータとして出てくる量はemuなので試料の重さ\(w\) [g]とf.u.あたりの分子量\(q\) [g/mol]を使ってemu/molにする。

単結晶の場合、異方性があるので\(C\)や\(\Theta_{\text{W}}\)は磁場をかけた方向に依存した異方的な量になる。

ここからは磁性イオンがf.u.あたり1種類、1個であるとする。等方的であると仮定すると、磁場の方向によらず、

\(C=N_{\text{A}}g_J^2\mu^2_{\text{B}}J(J+1)/3k_{\text{B}}\)

と書けて、

イジング異方性があるとすると、磁場が容易軸方向にかかっているとして、

\(C_{\text{Ising}}=N_{\text{A}}g^2_J\mu^2_{\text{B}}J^2/k_{\text{B}}\)

と書ける。ここで\(g_J\)はランデの\(g\)因子、\(J\)は全角運動量量子数(軌道がクエンチしている場合はスピン量子数\(S\)のこと)である。

ここから有効磁気モーメント\(p_{\text{eff}}\)は

\(p_{\text{eff}}=g_J\sqrt{J(J+1)}=\sqrt{\frac{3k_{\text{B}}\cdot 10C}{N_{\text{A}}\mu^2_{\text{B}}}}=\sqrt{8C}\)

イジングスピンの場合は

\(p_{\text{Ising}}=g_JJ=\sqrt{\frac{k_{\text{B}}10C}{N_{\text{A}}\mu^2_{\text{B}}}}\)

となる。単位は\(\mu_{\text{B}}\)である。\(C\)の前の10はcgs単位系で測られた\(C\)をつかってSI単位系のボーア磁子で測った\(p_{\text{eff}}\)を見積もるために必要である。こういうのは本当にやめてほしい。

磁性体中の磁性イオンがどれくらいの\(J\)や\(g_J\)を持つかについて見当がつくなら、磁化率の測定値から見積もった\(p_{\text{eff}}\)と比べることができる。ぴったりになることは少ないが、大体あっていればよしとする世界である。


磁化(\(M\))

これはボーア磁子あたりの量に換算されることが多い。emuで出てきた磁気モーメント量\(m\)をf.u.あたりの量にしてからボーア磁子で割ることで得られる。

\(M\)[\(\mu_{\text{B}}\)/f.u.] \(=m\cdot q/w/(1000N_{\text{A}}\cdot \mu_{\text{B}})=m\cdot q/w\cdot 1.79\times 10^{-4}\)

因子1000はcgsとSIの変換から来る量である。一体どういうことだ?仮にCr\(^{3+}\) (\(S=3/2\))の物質を測っているとするとCrあたり\(M=3 \mu_{\text{B}}\)くらい出て、f.u.あたり2つあると\(6\mu_{\text{B}}\)になったりする具合である。


反磁場(\(H_{\text{D}}\))

大きな磁気モーメントが生じる物質では磁気モーメントと反対方向に反磁場が生じる。反磁場が大きいと試料の形状によって磁化過程が変わってしまうため、異なる形状の試料で測った物理量を比べる場合には反磁場の効果を補正しなければならない。
反磁場は磁化に比例するので、単に磁化測定をしてその値を使えばいい。ただし磁場の単位をOeやGで測っているなら反磁場を見積もるには得られた磁化(\(\mu_{\text{B}}\)/f.u.)もこの単位に変換する必要がある。反磁場係数\(N_{\text{D}}\)のとき、\(M\) [emu/mol]の磁化が出ているときの反磁場は
\(H_{\text{D}}\) [G] \(=-4\pi N_{\text{D}}M\rho/q\)
である。ここで\(\rho\)は密度 [g/cm\(^3\)]、\(q\)は分子量 [g/mol]である。密度は単位胞の寸法とその中にある原子の総質量から見積もれる。反磁場係数は試料の形状にもとづいて別途見積もる必要がある。平板状試料の面直方向なら1に近く、針状試料の軸方向なら0に近い。
この式からわかるとおり、密度が小さい物質は\(M\)が大きくても反磁場は小さい。磁気モーメントの分布がスカスカだと単位体積当たりの量では小さくなるからだ。GdやFeの単体は大きな反磁場を示すが、酸化物とかだと大きなイオン半径の酸素が磁気モーメントの密度を薄めてしまうので反磁場は小さいことが予想できる。このことから希土類元素の濃厚な希土類金属間化合物やそもそも単体などでは反磁場の効果が大きくなる傾向にあり、酸化物などではあまり気にしなくてよい場合が多い。

Sunday, September 22, 2024

出張中の飛行機内で読むための数学書

 学会に出席するため海外実験施設に出張のため、飛行機での移動をすることも多いだろう。発表スライドを作るのに忙しい方もいる一方でずっと映画をみて過ごすのもいい。本を読むのもスタンダードだが、小説ばかりを読んでいてはふと作り話を読むことに何の意味があるのかと思ってしまったり、一般向けの科学本の表面的な解説にも目が滑ってしまうことも少なくない。有り余る時間を有効につかいたいそんなあなたにおすすめなのが数学書を読むことだ。ほかにやることがない状況でいつも以上に集中できる。普段だと読み飛ばしてしまいそうな厳密な定義や例外の確認ができる。自分で手を動かすことで理解が深まるのが数学の学び方として一般的だが、数式をいじるばかりが数学ではない。狭い座席でノートを取り出して計算するわけにもいかなくても数学は勉強できるんだ。
 この記事では私が読んできた数学書の中で特に移動中に読むのに適しているなと思ったものを紹介する。私は数学の専門家ではないし、研究で必要とすることもないのであくまで読み物として数学書を読む立場での紹介になることはご留意いただきたい。
 読みやすさの基準としては以下があげられる。
  • 初学者でも読める。大学数学(線形代数、微積分学)程度の知識を前提としてそれ以外は一から順に説明していることが望ましい。
  • 式変形が丁寧。手元にノートを出すわけにもいかないので目で追って暗算できる程度に式の変形が簡単であるとよい。
  • 記号、図やレイアウトが見やすい。添え字だらけの煩雑な記号はないほうがいいし、わかりやすい図は理解を助ける。定理、命題、注意、例題などが枠で分けられていたり、ハイライトがされていたりすると読んでいて目に優しい。
  • 読み物として楽しい。数学書のステレオタイプとして定義、命題、定理の証明が淡々と並んでいるだけで何を目指しているのかわからないというものがある。そうでなくて、筆者の意図や小話、註などがふんだんに含まれていると、読書負担が少ない。
 まとめを作ってみてふとほとんどが幾何学の本であることに気が付いた。物理をやっているとトポロジカルなんちゃらとか計量を使った一般相対性理論のトピックとかに出くわすことが多く、それらを理解しようと思ってやり始めたことの表れだろう。ほかの分野に興味がないわけではなく、学生のときは量子力学の数学的な基礎づけを理解したくて関数解析の本(『フーリエ解析と関数解析学』新井 培風館)や測度論やらルベーグ積分の本(『実解析と測度論の基礎』盛田 培風館)を読みふけったものだ。有り余る時間と集中力を注ぎ込み、証明をすべて追って、これらを読破した後でふと、これらは物理とは何の関係もないものだと気づいた。せいぜいヒルベルト変換が物理的なつじつま合わせの方法を取らずに基礎づけられることにちょっとばかりの優越感を得られただけだった。それからは気が済んでしまったようで、以降解析学に対する興味は戻ってこない。幾何学に対する一時的な興味もそのうち気が済んでしまうのかもしれないが、そういう打算的なことを抜きにして一歩踏み出さざるを得ないのが学問の魅力なのではないだろうか。

Kindle有

 うっかり本を持ってき忘れてしまって、本屋に駆け込むも月並みなベストセラー本ばかり。待ち時間でなにも読むものがない。そんな時でも空港のFree WiFiにつないでKindle版で数学書を購入できる。Kindleの端末も設定からWiFiに接続できるので、購入した本をダウンロードできる。搭乗してしまうとWiFiにつながらなくなるので注意だ。念のため何冊もダウンロードしておこう。

 数学書を購入するときの注意として、固定レイアウト形式なのか、プリント・レプリカ形式なのかをチェックすることが大事だ。後者の場合、Kindle Paperwhiteなどの電子書籍リーダーでは開くことはできないので、iPadなどのタブレットを持っていなければスマホのKindleアプリで読む羽目になる。

 数学書を読むときの注意として、レイアウト設定の余白を狭めるをOffにするとよい。固定レイアウト型だと余白を狭める設定のときはページ下部が途切れてしまうことがある。著者の独り言のような註が読めなくなってしまうのはとてももったいない。

 Kindleで読みやすい数学書の特徴として以下があげられる:別ページの図や数式を頻繁に引用しない。紙の本と違ってページめくりに大きな制約がかかっているのが電子書籍である。読んでいる最中に行ったり来たりしなくてはいけないとなると読書体験としては劣化する。例えば登場人物が数十人出てくる小説で人物同士の関係性をいちいち巻頭の表を参照しなくてはならない場合を思い浮かべてほしい。固定レイアウト形式ではハイライトも文字検索機能も使えないのでなおさらページの行き来を必要とするスタイルはマイナスである。

群と位相 横田 裳華房

(https://amzn.asia/d/bBn3jv1)

 物理でよく出てくる古典群(SO(n), SU(n))や実・複素射影空間を実例に取り、群、位相空間、位相群を解説している。普通の位相空間論の教科書では具体例は載っていてもこれらすべてをカバーしていることは少ないので結局知りたいことが知れなくて物足りなく感じてしまいがちだ。本書のハイライトは4章の古典群と射影空間の基本群を求めるところだろう。

 数学はとにかく抽象的で一般的になりがちだが、この本では具体的な例を挙げて各概念の説明がなされるので読んでいて地に足がついていられる。また前提知識なしで読めるので、概観をつかむためにとても役に立つ。各章はほどほどに独立しているので飛ばし読みでも全体の雰囲気を見失わずに読める。ただ現代的な教科書と違って著者の独り言のような注は少な目でやや淡々としている。レイアウトもちょっとみにくい。同著者の『位相幾何学から射影幾何学へ』(現代数学社)、『やさしい位相幾何学のはなし』(現代数学社 PDF版あり)は図を多用し平易な語り口で入門的な内容を扱っているのでこれもよい。一方、姉妹書の『群と表現』は多元環の導入でピンとこなかったので代数学の平易な入門書を探した方がよさそうだ。

●目次

1 射影空間と古典群の定義

2 射影空間と古典群の位相

3 射影空間と古典群の胞体分割

4 射影空間と古典群の基本群と被覆空間

基本群と被覆空間 佐藤 裳華房

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物理学徒目線ではタイトル的にパッとしないので初学者がこの本を見つけても手に伸ばすことが少ないであろうことが非常にもったいない。レイアウトが秀逸なので読んでいて負担が少なく、現代的な教科書っぽく、概念を導入するときのこころや要するに何がしたいかとか、註が豊富なので読んでいて飽きない。個人的には位相空間論の説明が分かりやすくてよかった。はじめににある通り1-2章をある程度軽快に読み進められることを想定して書かれているので1冊の本のレベル設定としては高めになってしまうのだが、初学者は1-2章を読みこめば、3章以降への足取りが重くなってしまったとしてもよい勉強になるわけである。実際1-3章をざっと読んだが、タイトルにある基本群(4章)と被覆空間(5章)は本書のメインテーマにもかかわらずまだちゃんと読めていないので、いつかたどり着きたい。いや、専門家になるわけではないのでたどり着く必要はないのだが。

●目次

1.位相空間論

2.群

3.いろいろな位相空間

4.基本群

5.被覆空間

6.組みひも群

具体例から学ぶ多様体 藤岡 裳華房

(https://amzn.asia/d/8THWnCQ)

多様体は定義だけ読むとなんだそういうものかとわかったような感じになってしまうが、実際どうやって構築するのかは具体例にもとづいて自分で計算してみないとよくわからない。位相空間論、多様体論で必要になってくる概念を具体例を通して解説していく形式になっている。普通の教科書では一般化しすぎて抽象的になりすぎな概念もイメージしやすくなるよう配慮されていてよい。またレイアウトがきれいで読みやすい。一方、数式が多めなので暗算に不慣れな場合は飛行機の座席で読むにはやや不向き。

●目次

第I部 ユークリッド空間内の図形

 1.数直線 R

 2.複素数平面 C

 3.単位円 S1

 4.楕円 E

 5.双曲線 H

 6.単位球面 S2

 7.固有2次曲面

第II部 多様体論の基礎

 8.実射影空間 RPn

 9.実一般線形群 GL(n,R)

 10.トーラス T2

 11.余接束 T*M

 12.複素射影空間 CPn

代数トポロジーの基礎 和久井 近代科学社

(https://amzn.asia/d/hrSLAYc)

とりあえず3章だけ読んだがホモロジーの説明が分かりやすくてよかった。ほかの本では簡潔かつ抽象的過ぎて何のことやら頭に入ってこなかったが、本書では一歩一歩着実に説明がされていて理解できた。レイアウトも見やすいし、具体例も豊富だ。演習問題が多めだが、解答が巻末にあるためKindleでは可読性が悪い。ただし解答は丁寧だ。別の機会にちゃんとやろう。

【目次】

第1章 位相空間論

第2章 基本群

第3章 ホモロジー群


Kindle無

やたら分厚い本は手荷物には適さない。たとえば『理論物理学のための幾何学とトポロジー』(中原 日本評論社)はB5判サイズで手荷物に持ち込むのはちょっと厳しいし、そんな気合の入った乗客はちょっといやだ。裳華房の基礎数学選書サイズ(A5判)を持っていこう。紙のほんのいいところは書き込みができるところだ。ただし飛行機内でペンを片手に数学書を読むのはちょっと堅苦しい。消灯時は読書灯をつけながら読むことになってしまうのがKindleと比べて難点だ。周りの人の迷惑にならないか心配だ。

微分幾何入門 佐古 森北出版 (電子版あり)

(https://amzn.asia/d/ivIHcxF)

微分幾何の教科書を読んでいるといつも押し出し・引き戻しでこんがらがり、接ベクトルのなぞの微分記号を使った定義で違和感を覚え、ファイバーバンドルのまどろっこしさに嫌気がさして読むのをやめてしまう。この本は現代的な教科書なのでなぜそういう概念を導入したいのか、何をしようとしているのかが丁寧に書かれているので、ついていくことができる。逆に言うと筆者の言っていることを順に鵜呑みにしていくだけで読み進めていけるところが脳への負担が少なくてよい。接続の微分幾何とゲージ理論(小林 裳華房)や理論物理のための 微分幾何学(杉田・岡本・関根)よりずっと読みやすい、飛行機の座席では。

アマゾンレビューをよむと不正確な記述があると指摘されているが、初学者がイメージをつかみやすくするために厳密性を犠牲にしているのかもしれない。いずれにしても初学者にはそれはわからないので気にせず読んでよいだろう。だんだんと理解が進んできて記述の不十分さに気づくようになってきたら、より専門的な本を読み始めるいい機会だと思う。

個人的にはファイバー束の説明くらいからだんだんなにが書いてあるのかわからなくなった。これは結局自分の多様体論に関しての理解が不十分であることから来ているのだが、それに加えて記述のラフさもこのあたりから目立ち始めるようだ。さらっと読んでしまうとなんとなく納得しそうになってしまうが、もう一歩進んだ理解を目指すならちゃんとした数学の本を読んだ方がいいのだろう。

第1章 多様体

第2章 微分形式

第3章 リー微分とリー群

第4章 ファイバー束

第5章 主束

第6章 ゲージ理論

第7章 リーマン幾何

第8章 一般相対性理論

これからの集合と位相 梅原・一木 裳華房

(https://amzn.asia/d/01GMYyF)

物理をやるならカタカナの”トポロジー”だとかリーマン幾何学だとかを考えがちだ。そういうのを目指してタイトルが関係ありそうなちょっとアドバンストな数学書に手を出すと多様体論とか群論、位相空間論の知識が足りないのであえなく撃沈してしまう。そんな経験はないだろうか?そんなの必要ないとすっぱり諦めてしまってもいいが、これ一冊と思って丹念に読んでみるとだんだん好きになってくる。どうせ機内でやることもないのだから、集合の濃度だとかツォルンの補題だとかじっくり読んでみるのはどうだろうか。裳華房出版社note: https://note.com/shokabo/n/n153bc1749eb2

I.集合と写像

II.集合の濃度

III.ツォルンの補題とその応用

IV.ユークリッド空間から距離空間へ

V.位相空間

VI.分離公理・連結性・コンパクト性

VII.距離空間の完備性

付録

幾何学と代数系 金谷 森北出版

(https://amzn.asia/d/1AKVj2u)

代数幾何学という教科書を読むとスキーム?物理と何の関係があるんだ?と思うような抽象的な概念が出てきて目を回してしまう。この本は代数幾何学の本ではないので安心してほしい。幾何学的代数(Geometric Algebra)という全く別の分野で、四元数、グラスマン数、クリフォード代数を扱っている。議論を3次元に限定しているし最後にはカメラの幾何学が議論される。直観を大事にする物理ととても相性が良い。ハードカバーである点は注意。

第1章 序論

第2章 代数的記述による3次元幾何学

第3章 斜交座標

第4章 ハミルトンの四元数代数

第5章 グラスマンの外積代数

第6章 幾何学積とクリフォード代数

第7章 同次空間とグラスマン-ケイリー代数

第8章 共形空間と共形幾何学―幾何学的代数―

第9章 カメラの幾何学と共形変換

微分幾何学とトポロジー 永長 丸善

(https://amzn.asia/d/82y3aE0)

同著者のほかの著書と同じで羅列形式で書かれた微分幾何や代数トポロジーの用語・定義解説ノートである。『理論物理学のための幾何学とトポロジー』(中原 日本評論社)を10倍に薄めたものと考えるとよいだろう。物理学者が書いているので物理に関係がある概念がコンパクトにまとまっている。一方で説明を簡潔にしようとするあまり、記号の定義などが欠落していることが多々あり、ときおり説明として意味をなしていない箇所がある。また数学概念の定義は(細かいことを言うと)間違っているもしくは不正確であるところがある。物理学のセンスではそんなの当り前だからいちいち断らないよということを省略しているとみるべきだが、だとすると数学を勉強できるぞと期待して記述を読み込もうとすると徒労に終わるだろう。まじめにフォローするに耐えられるつくりにはなっていないことに注意しないといけない。時々読み返してみてこの本の内容をどれくらい知っているかをチェックするのに使うとよさそうだ。

内容の難易度と記述のスタイルとしては『微分・位相幾何』(和達 三樹 岩波)と重複するところが多い。このことは巻末にもそう書いてある。数学的にどこまで厳密かに関してはどっちもどっちといったところだが、和達本の方が数学用語の誤用はないものと思われる。一方でMorse理論やカタストロフィ理論は永長本の特徴だろう。

1 微分形式

2 曲線と曲面の微分幾何学

3 多様体

4 多様体と積分

5 ホモロジーとコホモロジー

6 ファイバー束と特性類

7 指数定理とMorse理論

8 ホモトピー理論

9 カタストロフィー理論

はじめて学ぶリー群 井ノ口 現代数学社

(https://amzn.asia/d/9Ez1RX6)

第I部 リー群とリー環の芽生え

第1章 平面の回転群

第2章 平面の合同変換群

第3章 曲線の合同定理

第II部 線型リー群

第4章 一般線型群と特殊線型群

第5章 リー群論のための線型代数

第6章 直交群とローレンツ群

第7章 ユニタリ群

第8章 シンプレクティック群

第9章 行列の指数函数

第10章 リー群からリー環へ

第III部 3 次元リー群の幾何

第11章 群とその作用

第12章 3 次元幾何学

附録


もっとライトな数学書

数学の抽象的な概念の洪水で消耗してしまった。ダウンロードした本がはずれだった。到着まであと10時間強、座席のタッチパネルが壊れていて映画を見るわけにもいかない。そんな不測の事態に備えて、ライトに読める数学書も多めにダウンロードしておこう。

群と幾何を見る 正井 日本評論社

(https://amzn.asia/d/aJndjeq)

Kindleデバイスと互換性がない。基本群、被覆空間の説明がよい。

Math without numbers Beckman Dutton

(https://amzn.asia/d/a6dbOjP)

数学の専門書を英語で読みたいとは思わないが、一般向けなら問題ないだろう。

数学の世界地図 古賀 KADOKAWA

(https://amzn.asia/d/cR7m0Fu)

どの数学分野の本を読もうか迷っていた時に数学の全体像を知るのによかった。本ブログで紹介している本はほとんど幾何学に関係しているがそれ以外にもいろいろな分野があることが分かる。自分の興味のあるトピックを探すのによいだろう。

「集合と位相」をなぜ学ぶのか ー数学の基礎として根づくまでの歴史 藤田 技術評論社

(https://amzn.asia/d/29bcZ9E)

物理学徒が数学を学びたくなったとしても集合と位相はなんとなく飛ばしたくなりがちだ。この概念がなんで必要なのか動機づけがわかれば学ぶ意欲につながりもするだろう。


敷居が高かった本

飛行機内で読むのには適さない、あるいは私には合わなかった本を載せておく。いつか読み直した時にはまた評価が変わるかもしれない。数学を学ぶことにはそういう楽しみもある。

スピン幾何学 本間 森北出版

(https://amzn.asia/d/75n4h69)

クリフォード代数の導入から入る。初学者には敷居が高い。

【目次】

第1章 クリフォード代数

第2章 スピノール表現

第3章 ベクトル束とスピン構造

第4章 接続と共変微分

第5章 ディラック作用素

第6章 幾何学で現れるディラック作用素とその応用

第7章 いろいろなスピノール

第8章 分類定理

付録

リー代数と素粒子論 竹内 裳華房

(https://amzn.asia/d/aFTAAfK)

リー代数を勉強するには書き方が難しめ。もう少し平易な本を読んでから再読しようか。素粒子論の話は最終章に出てくるだけなので、物理とリー代数のつながりを知りたいならもっと別の本がありそうだ。

1.線形リー群と線形リー代数

2.単純リー代数と半単純リー代数

3.複素半単純線形リー代数の表現

4.具体的な表現

5.大統一理論

具体例からの表現論入門 平井 日本評論社

(https://amzn.asia/d/b46GI7e)

プリントレプリカ形式。量子力学などへの応用が議論されていてよい。

【目次】

第1章 群とその作用

第2章 群の作用と群の線形表現

第3章 回転群の表現とその量子力学への応用

第4章 SO(3), SU(2) およびそのリー環の表現

第5章 有限次元表現から無限次元表現へ

第6章 上半平面・単位円板での分数変換と保型関数・保型形式

幾何学と不変量 西山 日本評論社

(https://amzn.asia/d/8cawf5O)

プリントレプリカ形式。

目次

■第1部 群と不変式

第1章 群とは何か──群の速成コース

第2章 正多面体群と方程式

第3章 群の表現と不変式

■第2部 平面上の幾何学と変換群

第4章 平面の合同変換と不変式

第5章 平面上のアフィン変換とアフィン幾何

第6章 実射影平面

■第3部 商空間の幾何

第7章 軌道空間と商位相

第8章 軌道空間の幾何的構造

■第4部 複素射影空間の幾何学

第9章 射影変換と不変量

第10章 射影空間とグラスマン多様体

附録:集合と写像

計量微分幾何学 松本 裳華房

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計量の話は数式が多用されるので手を動かして自分で確認しながら読み進めないとなんもわからない。こういう本は飛行機には向いていない。ただ、随所に出てくる小話は読んでいて興味深い。リーマンの講演を引用したり、歴史的経緯を説明しながら諸概念が導入されていく。整理された今風の教科書を読むより概念導入の意義がつかみやすいのではないだろうか。

●目次

1.ユークリッド平面の座標と計量

2.曲面の計量と曲率

3.リーマン計量

4.種々の一般計量

5.フィンスラー幾何学

現代微分幾何入門 野水 裳華房

(https://amzn.asia/d/cVP6uIG)

第一章が微分可能多様体の基礎事項の確認から入る。概念導入の際の動機付けがほぼないので初学者がついていくのにはだいぶ敷居が高い。

●目次

1.多様体

2.接続の理論

3.線形接続

4.リーマン幾何学

5.ローレンツ幾何学

幾何概論 村上 裳華房

(https://amzn.asia/d/1nkAMV5)

群と位相に関して既知として第一章に簡単なまとめがある。全体的に淡々と進むので初学者には敷居が高かった。

●目次

1.群と位相

2.古典幾何の空間

3.基本群と被覆空間

4.ホモロジー群

5.多様体の幾何

群と表現 横田 裳華房

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同著者の『群と位相』がよかったので本書も読んでみたが1章の準備だけで初見の抽象的な概念が大量に出てきて読み進めるのが困難になってしまった。初学者には敷居が高い。

1.準備

2.群の表現

3.表現環

4.古典群の表現環

5.例外群 G2,F4 の表現環

古典群: 不変式と表現 ワイル シュプリンガー・ジャパン

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古典的な名著とのことだが、説明が丁寧なわけではないので初学者向けではない。機内に持ち込んでも読み進めることは難しい。

第1章 序論

第2章 ベクトル不変式

第3章 行列代数と群環

第4章 対称群と全線形群

第5章 直交群

第6章 シンプレクティック群

第7章 指標

第8章 不変式の一般理論

第9章 行列代数再論

第10章 補遺

接続の微分幾何とゲージ理論 小林 裳華房

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第1章1節を読めばわかるように多様体の基礎は既知とし、ベクトル束の定義から始まる。初学者に一切配慮する気がないすがすがしいまでのぶっ飛ばしっぷりである。

●目次

1.多様体

2.接続

3.リーマン幾何

4.特性類

5.Yang-Millsの接続

6.4次元多様体上のYang-Mills接続

理論物理のための 現代幾何学 秦泉寺 裳華房

(https://amzn.asia/d/5nTk0DZ)

徹底的に物理学科4年生のために書いているところが面白い構成だ。学生がタイトルの内容に関して講義を受けているリアル感が表現されていてよい。位相や多様体など、物理学徒が避けたくなってしまうような抽象的な数学をなぜ勉強しないといけないかが、具体例と著者の体験を混ぜながら根気よく説明されている。ガチの数学書を読み始める前にあるいは読んでいて嫌気がさしたときに該当箇所を読んでみるとモチベが復活するだろう。読み物としてとっても楽しく読めたのだが、数式多めでハードカバーなので飛行機では読みにくい。

1.一般位相:直観を論理に乗せる作業

2.多様体

3.多様体のトポロジー

4.リーマン幾何学と一般相対論

5.リー群の大域的構造とリー環

6.附録:線形代数についての補足

手を動かしてまなぶ群論 原 裳華房

(https://amzn.asia/d/9elDkil)

信じられないくらいレイアウトに工夫をして書かれた本である。いったいどれほどの代償を払えばこれほどの完成度を得られるのか。第一章が初等的な整数論から始まっているのはタイトルからは予想できなかった。しかしそこから始めなければ、地に足の着いた理解はできないという意図なのだろう。普通のよくわからない群論の教科書は群の定義を与えて、例を2-3与えたあとは抽象論が繰り広げられて訳が分からないくなる。そういうのとは一味違うようだ。とはいえ読書をするというより高校受験の参考書を読んでいるような感覚になる。読み手にもう少し自由度を与えてもいいのではないだろうか。ある程度群論を知っている立場から読むとそうとうやかましい作りだと思う。ただし大事なところは太字になっているし章立ては秩序立っているので、読みたいところを見つけ出すのはそんなに苦労しないだろう。タイトル通り手を動かしながら読み進めるための構成になっているので飛行機で読むのは適さない。

1.整数とその性質

2.群と準同型写像

3.群の剰余類分割と準同型定理

4.群の作用と軌道分解

5.有限群の構造

曲率とトポロジー 河野 東京大学出版会

(https://amzn.asia/d/dJlPuSg)

プリントレプリカ形式。数式の行間がじんわり広くて読み進めるのがしんどかった。図もレイアウトもきれいなのに自分でもなぜ読み進められないのかよくわからない。

はじめに

序 章

第1章 曲線の曲率

第2章 曲面の計量と曲率

第3章 曲面上の幾何学

第4章 平面幾何から非ユークリッド幾何学へ

第5章 双曲幾何学

第6章 変換群と時空の幾何学

第7章 多様体への入門

第8章 多様体上の微分形式

第9章 接続と共変微分

第10章 多様体の曲率テンソル

第11章 トポロジーと幾何構造

第12章 宇宙空間の幾何学に向けて

付録

多様体入門 松島 裳華房

(https://amzn.asia/d/j36J3oJ)

旧版で読んだ。段落の1文字下げくらいしかレイアウトの工夫がないのでとても読みにくい。新装版でも文字が多少大きくなっているくらいで改善は見られない。それを抜きにしても初学者が読むために書かれているとは言えない。各概念・定義等導入の動機や意義は皆無なので、事実の羅列である。内容が高度だとか難易度が高いとかの評価を聞くが、単に筆者が知らない人向けに説明することに関して手を抜いていると言った方が正確だろう。別の本で勉強して多様体がよくわかってから自分の理解を確かめるために読むような類の本であるが、だとしたらこの本を必要としている人は極めて限定的である。

1.序論

2.可微分多様体

3.微分形式とテンソル場

4.リイ群と等質空間

5.微分形式の積分とその応用

代数学1---群論入門 雪江 日本評論社

(https://amzn.asia/d/6pSrNpz)

プリントレプリカ形式。演習解答に誤答例がのっているのがユニークだ。演習問題を多くのせることを目指したと書いてある通り、読者に考えさせながら読ませる工夫がなされている。そのためじんわり行間が広いことが多く、この言葉や記号の定義は何だっけ?とか、○○なので○○と書かれているがなんでそんなことが言えるんだ?とかつっかがりながら読み進めることになる。勉強になるのだが飛行機で読むには不向き。

第1章 集合論

第2章 群の基本

第3章 群を学ぶ理由

第4章 群の作用とシローの定理

Saturday, May 25, 2024

ホール効果に花束を

 ホール効果なんて誰でも測定できる、物性実験家にとって初歩の初歩の実験だ。だって測定自体そんなに難しくなんかない。電極を付けて電流を印加、磁場を変えながら電圧を読む。電極位置のずれを補正するため、データは磁場に対して反対称化。ほら、ものの数時間でなんとなくそれっぽいデータになるじゃあないか。磁場に対する傾きからキャリア密度を見積もって、強磁性体なら、何だったら反強磁性体だって、磁化に比例する異常ホール効果なんてのも出てくるけど、要するにベリー位相が創発磁場をエマージェントしてるってことさ。まあ、ちょっと小難しいことは出てくるときもある。マルチバンドだったり、トポロジカルホール効果?なんてものが出てくる場合はちょっと複雑になるけど、解析手法は確立している。適当な論文をみつけて、舗装された道を安全に渡っていけば、論文というゴールまでもうすぐそこさ。ぼくの輝かしい研究者のキャリアの第一歩。このまままっすぐ、ずっとまっすぐ。

(1) 測っている”ホール抵抗率”は\(\rho_{yx}\)なのか\(\rho_{xy}\)なのか?

ホール効果は印加電流密度\(j_x\)に対して横方向の電場\(E_y\)をつかって、ホール抵抗率として\(E_y=\rho_{H}j_x\)って書くことができる。\(\rho_{H}\)じゃあそっけないから、テンソルっぽく\(\rho_{xy}\)とでも書こう。論文を読むと\(\rho_{xy}\)だったり、\(\rho_{yx}\)だったりするな。まあ、どっちでもいいだろ。測定で出てきた電圧値(\(V_H\))を反対称化して、試料の寸法でスケールして、\(V^{Asymm}_H/(w\cdot j_x)=\rho_{xy}\)。ほら、できた。

(2) ホール伝導率\(\sigma_{xy}\)はどうやって計算するのか?

ホール抵抗率\(\rho_{H}\)に対し、ホール伝導率\(\sigma_{xy}\)という物理量も、物性を議論しているときにはよく出てくる。\(\sigma_{xy}\)は直接測定できないけど大丈夫。抵抗率とホール抵抗率の測定値から逆算すればいいんだってさ。文献をググったらすぐに見つかった。みんなが使ってて安全な変換公式\(\sigma_{xy}=\rho_{H}/((\rho_{xx})^2+(\rho_{H})^2)\)を使えば簡単。ええと、\(\rho_{H}\)はと、さっき解析したデータをとりあえず使えばいいだろう。\(\sigma_{xy}\)だから\(\rho_{H}=\rho_{xy}\)、と。
そういえばぼくのホールには異常ホール効果が含まれていたっけ。正常ホール抵抗率\(\rho_{H}^O\)と異常ホール抵抗率\(\rho_{H}^A\)を使ってホール抵抗率は\(\rho_{H}=\rho_{H}^O + \rho_{H}^A\)と書けるから、異常ホール伝導率は\(\sigma_{xy}^A=\rho_{H}^A/(\rho_{xx}^2+(\rho_{H}^A)^2)\)でいいよね?

(3) 正常ホール係数は温度依存しない定数なのか?

正常ホール効果は磁場に比例し、キャリア密度の逆数に比例する。\(\rho_{H}=-1/ne\cdot B\)。キャリア密度はフェルミ温度の高い金属では300 K程度の温度では変わりようがない。それでは温度によらない定数としてよいだろう。これは教科書によく出てくるから多分正しいに違いない。そう、良伝導体として有名な、単純な一価金属の銅なんかはたぶんそう。

(4) 正常ホール係数は磁場依存しない定数なのか?

正常ホール係数\(R_0\)を使って公式\(\rho_{H}=R_0 B\)とおこう。\(R_0\)は磁場によらない定数。だからホール効果は磁場に関して線形。きっとどんな時も。マルチバンド系で片方のキャリアのモビリティがやたら高いとか、そういうときは気を付けないといけないがそんなマニアックな状況めったに考える必要ないだろう。単バンド物質ならなおさら安心に使える公式といえる。単バンドならモビリティの効果が打ち消しあって、ホール効果に現れるのはキャリア密度だけって教科書の導出で観たことある。間違いないさ。

(5) 等価数ドーパントは正常ホール効果を変えることはないのか?

価数の違う不純物をドープすると供給される電子の違いからキャリアをドープすることができる。Si(4価)にP(5価)をいれれば電子ドープ。Al(3価)をいれれば正孔ドープ。これってつまり、原子価が同じ不純物だったらキャリア数は変わらないってことだから、正常ホール効果はドープ量によらず一定になるのだろう。じゃあアルミニウムに周期表の真下のガリウムやインジウムをドープしてもホール効果に変化はないって、容易に想像がつく。多分実際そう。これをぼくが研究しているエマージェントな量子物質にも適用してもいいだろう。Cu化合物のCuをAuに一部置換しても正常ホール効果は無傷に違いない。そういうことにしよう。だれも異論なんかないさ。

(6) 異常ホール伝導率\(\sigma^{\text{A}}_{xy}\)の計算はスピンと磁化の向きはどっち方向か?

内因的異常ホール効果はバンド構造から計算できる。理論家にお願いしたら計算してくれた。ありがたい。強磁性状態のとき\(\sigma^{\text{A}}_{xy}=\) xx S/cm...で実験の値と大体一致していてハッピー!!磁場を\(+z\)軸方向にかけたとき、電子スピンが\(+z\)軸に向くから、磁化が\(+z\)軸方向に出て、異常ホール効果が出ました。実験と理論で無矛盾に再現です。新規スピントロニクス材料開発に道。

(7) ホール効果が\(R_0B+R_sM\)からずれたらトポロジカルホール効果なのか?

ぼくのホール抵抗率はちょっと変な磁場依存性をしている。磁場に線形な正常ホール効果\(R_0B\)以外に、磁場をあげていくとくねっと曲がっている。これが異常ホール効果ってやつなのかな。異常ホール効果は確立された公式があって、磁化に比例する\(R_sM\)という項で書けるんだ。内因性?ってののときは\(R_s=S_H\rho^2_{xx}\)っていう、定数\(S_H\)と縦抵抗率\(\rho_{xx}\)で書けるんだってさ。大丈夫、磁化も縦抵抗率も測ってあるから。測定した\(\rho_{H}\)をフィットするように\(R_0B+S_H\rho^2_{xx}M\)の係数を決めて、っと。おや?どうやってもフィッテイングが合わないな。測定誤差?反磁場効果?形状効果?また小難しいことを。よし、差分をとって\(\rho_{yx}^{T}=\rho_{H}-R_0B-S_H\rho^2_{xx}M\)、これをトポロジカルホール効果ってことにしよう。さいわい誰も磁気構造を測っていないぞ。多分だけどこの量子物質では磁気構造がちょっと特殊なんだ。スピンが傾いていて電子のホッピングがベリー位相を獲得するから創発磁場を発生していてさ、エマージェントなわけよ。定量性?それは今後の課題ですねえ。

(8) 磁性体のホール効果が磁場に依存してクネクネすることに理屈をこねることは有意義なのか?

おかしいな、解析中のこの物質にはトポロジカルホール成分が磁気転移点以上の広い範囲でずっとあるみたいだ。傾いた磁気構造がないとスカラースピンカイラリティがないはずだから、常磁性状態だと消えると思ってたんだけどな...そうか揺らぎだ!スピンが揺らいでいるから、なんやかんやで電子が散乱されて軌道が曲げられてホール効果になるって理屈を考えたぞ!え?マルチバンドでも、なんだったら単バンド系でもホールはクネクネ曲がる?うーん、なんかその、そういうややこしい状況じゃないと思うんだよな。3バンドフィットなら説明できてしまうって?そりゃパラメーターを合わせればなんかフィットできるけど。それってなんか根拠あるんですか?このスパゲッティバンドの物質に3バンドモデルを適用する意義って何?量子物質はほら、複雑なんだから、物理の本質を抜き出したモデルでシンプルに説明することの方が価値があるんだよ。だから、既存のansatzには含まれていない新しい項を導入してさ、それでなんかすごいことが起きていると考えた方が合理的だと思うよ。既存の枠組みから外れないように理屈をこねるのっていかにも受験戦争を勝ち抜いてきたガリ勉の発想って感じでクリエイティビティにかけててよくないと思うな。そういえばいつも1970年代の論文ばっかり読んでるよね?現代物性物理学は古い固体物理の焼き直しだ、なんて。なんでもシニカルにとらえるのがかっこいいってひょっとして思ってる?これはぼくの論文なんだから関係ないだろ。そうやって横やりを入れて結論をねじまげるのはよしてくれ!ホール効果なだけに。

筆者注:
(0) 測定自体が簡単であることは認めるところではあるが、実践的な注意点がないわけではない。特に、ホール効果を研究し始めて知ったこととして個人的に驚いたことは形状効果である。試料横幅に対する電流端子間の比がある程度大きくないと観測したホール電圧は実際の値より過少評価されてしまう。ホール係数を使ってキャリア密度を見積もるなどするわけであるが、定量的にどの程度信頼できるのだろうか?測定したサンプルの形状は多くの場合論文に書かずに省略されてしまいがちな情報である。それにもかかわらず定量性に影響が出る要因になりうることは隠れた問題点であると言える。
(1) まずは正確なことを書こう(自分で絵を描いて確かめてみることを勧める)。右手系でデカルト座標系をとり、電流を\(+x\)軸方向に印加(電流密度: \(j_x\))したときに横方向\(y\)軸に電場\(E_y\)が生じる。\(3\times 3\)の抵抗率テンソル\(\rho_{ij}\) (\(i, j = x, y, z\))の成分の一つを用いて\(E_y = \rho_{yx}j_x\)となるので、この場合測定している物理量は\(\rho_{yx}\)である。もし電流を\(y\)方向に印加したときの\(x\)軸方向の電場を測定しているという設定なら、今度は\(E_x = \rho_{xy}j_y\)となり、測定しているのは\(\rho_{xy}\)。どちらが自然な設定かというのは派閥が分かれそうではあるが、個人的には前者の方がキャリアの符号とホール抵抗率の符号が一致して混乱が少ないのではないかと思う。
 前者の設定でさらに考える。試料中の電場ベクトルが\(+y\)方向に向いているときに\(\rho_{yx}>0\)になるので、試料上の電極に電圧計の端子をつなげるときは試料の\(y\)座標の負側にある方を\(+\)端子に、正側にある方を\(-\)端子につけることで電圧計の読みと\(\rho_{yx}\)の符号が一致する。磁場が\(+z\)軸方向にかけてあるときに\(\rho_{yx}>0\)ならキャリアは正孔的、\(\rho_{yx}<0\)なら電子的である。もちろん後者の設定でも電圧計のつけ方を逆にすれば\(E_x\)を測っていることになるので矛盾は生じない。ただしその場合、\(\rho_{xy}<0\)ならキャリアは正孔的、\(\rho_{xy}>0\)なら電子的というようにシグナルとキャリアの符号の関係性が逆になることになる(覚えていられるか?混乱のもとはなるべく減らすべきだろう)。オンサーガーの相反定理によりホール抵抗率には\(\rho_{xy}=-\rho_{yx}\)の関係があることを思い出そう。
 縦抵抗の電圧が負に出てしまっていたら抵抗が負になってしまうので電極のつけ間違いだとすぐに気づくのだが、ホール抵抗は符号がどちらでもありえてしまうので間違いに気づきづらい。測定した本人しか正しくつけられているかは知る由もない。それに加えて、文献では\(\rho_{xy}\)という記号を使いつつ、実際に測定している物理量は\(\rho_{yx}\)である場合もある。そしてそのことを文中で特に説明しないことが多く、査読でもあいまいさが指摘されることはほとんどないのでほぼ無法地帯と化している。
(2) ホール伝導率テンソル\(\sigma_{ij}\)は\(j_i = \sigma_{ij}E_j\)を通して定義されるのでちょうど\(\rho_{ij}\)の逆行列の関係である。そのことを考慮すると\(\sigma_{xy}=-\rho_{xy}/((\rho_{xx}\rho_{yy})-(\rho_{yx}\rho_{xy}))=\rho_{yx}/(\rho_{xx}^2+\rho_{yx}^2)\)となる。\(\rho_{yx}\)と\(\sigma_{xy}\)の符号が対応すると覚えておこう。
 上記のことを理解しておけば異常ホール伝導率\(\sigma_{xy}^A\)の変換公式も導ける。つまり、\(\sigma_{xy}^A=\rho^A_{yx}/(\rho_{xx}^2+\rho_{yx}^2)\)。ここで分母のホール抵抗率の項が\(\rho_{yx}^A\)とはならないことに注意。まず測定した抵抗率テンソル全体の逆行列を取って伝導率にしてから、異常項を分離するという手順なので\(\rho_{yx}\)を使うのが正しい。ただし、ホール抵抗率の全体\(\rho_{yx}\)が正常項と異常項(\(\rho_{yx}^A\))に分けられるという仮定を使っている。このことはこのことで別に検証しなければならない。
 分母に\(\rho_{yx}^A\)を使っていい場合があり、それはゼロ磁場における\(\sigma_{xy}^A\)を見積もるときである。ゼロ磁場で自発的異常ホール効果が出ているときは\(\rho_{yx}=\rho_{yx}^A\)になるのでそのような変換公式が許される。この公式を使って議論している論文として一番有名なのがおそらく doi.org/10.1038/s41567-018-0234-5 であろう。後追いのコンセプト消費型研究者はこの公式を何も考えずに丸写しにして、有限磁場中に適用して議論をすすめているため質の低い議論が蔓延することになる。ただし多くの場合、分母の\(\rho_{yx}\)は\(\rho_{xx}\)に比べて小さい(ホールアングルが小さい)ので分母に\(\rho_{yx}^2\)があろうがなかろうが、議論の定量性に影響を及ぼすことはほとんどない。
(3) ホール係数の温度依存性の論文としてカリウムを扱ったもの(doi.org/10.1088/0305-4608/10/3/018)と銅, 銀, 金を扱ったもの(doi.org/10.1103/PhysRev.174.729)をあげる。どれも一価金属でフェルミ面も一つだが温度依存性が大小あり、一筋縄ではいかないことがうかがい知れる。
(4) 単一のフェルミ面を持つ金属ですらその曲率が特殊であるとホール効果は磁場依存することが知られている。電子が散乱されるまでフェルミ面をぐるっと一周できる(高磁場領域)場合と、すぐに散乱されてしまって局所的な曲率しか感じられない(低磁場領域)場合で応答が異なるわけである。正常ホール係数はフェルミ面の体積(キャリア密度)の逆数に比例する、つまり散乱の詳細によらない大域的物理量であるというナイーブな理解とは裏腹に、電子の緩和時間に関して敏感な物理量であり、ホール効果を使った議論にすれ違いが起きる。フェルミ面の形状がよくわかっていない物質において、「正常ホール効果の成分は磁場に線形だと考えてそれを差っ引きます」という議論はかなり荒っぽい議論である。とはいえ異常項を分離し、ベリー位相とこじつけ、その大きさを謳いたいという誘惑には現代物性物理学者は逆らえない。
(5) アルミニウムにインジウムやガリウムをドープするとホール係数は符号を変えることが知られている。純良Cu化合物にAuをドープしてホール効果が驚くほど変わったとしても創発効果だなどと大騒ぎしないように慎重に考察しよう。
(6) 電子スピンと磁化の向きは逆である。電子スピンを\(+z\)方向にそろえたときの計算は磁化が\(-z\)軸方向に向いたときの状況を考えているので\(\sigma_{xy}\)も実験とは逆になる。理論家の計算が間違っているとは考えていないが、電子スピンの向きがどちらか聞いたときに正しく即答できた理論家には今のところ出会ったことはない。
(7) 異常ホール効果の解析で金科玉条のごとく扱われているのが、公式\(\rho_{yx}=R_0B+R_sM+\rho_{yx}^{T}\)である。第一項は磁場に線形な正常ホール効果、第二項は磁化に比例するconventionalな異常ホール効果である。第三項はunconventionalな異常ホール効果ということで\(\rho_{yx}^U\)と書かれたりするが、特に磁気構造の非共面性によるスカラースピンカイラリティを起源とする効果であることを強調したい場合、トポロジカルホール効果の頭文字をとって添え字Tが使われる。要するに公式の最初の二項で説明できない成分が測定データに含まれていたら、by definitionでトポロジカルホール効果と名付けることにしているのである。
 公式の最初の二項はホール効果の一番単純な表式を示しているだけであり、20世紀前半にまだ磁性体のホール効果が詳しく調べられていなかった頃の乏しい観測結果に基づく、強磁性体に限定された経験則にしかすぎない(Hurd, "the Hall effect in metals and alloys": doi.org/10.1007/978-1-4757-0465-5)。これに第三項を付け加え、反強磁性体や磁場誘起相転移をする磁性体、磁性半導体・半金属にまで広く適用しだしたのはここ最近である。よく考えなくてもわかるように上記のようなあまりにも単純化された公式を複雑な物質に適用していいかどうかは注意しなくてはいけない。\(R_0\)や\(R_s\)が磁場や温度、磁気構造や電子状態にどう依存するかは個々の物質の特性に強く依存するであろうことは容易に想像がつくし、実際成り立っていないと考えられる物質もいくつも存在する。そもそも正常ホール効果ですらも磁場に対して線形とは限らないのだから、公式の最初の二項は恣意性なくどうやって決定するのか?
 特にトポロジカルホール解析の欠陥といえる部分は実際に抽出した\(\rho_{yx}^T\)なる成分が定量的に妥当なのかを検証することがほとんどできないということである。つまり出てきた値をそのまま信じるしかないのである。理論的な上限は一応与えられているが、実際に観測されるのはそれよりも一桁も二桁も小さい値であることが多い。小さくなることに関して理屈をつけることはいくらでもできるので、観測値の妥当性に関してDiscussionで何とでも言えるのである。上限値すらも最近ではそうとは限らないとする理屈が考案され始めており、歯止めが効かなくなってきているのが現状である。私がこれまで見てきてもっともグロテクスな解析だと思った論文はホール伝導度の磁場依存性を正常ホール効果でも十分説明できることをサプリに書きながら本文では超越するすべての成分を異常項として主張した論文である。気づいていてやることと気づかずやってしまうこと、どちらがより邪悪か、意見は分かれると思うが。
 "観測"された\(\rho_{yx}^T\)を前にして科学者は選択を迫られる。これをスピンカイラリティ由来のトポロジカルホール効果として"解釈"し、背景にそれをもたらしうる非共面的な磁気構造の存在を示唆する論文を書くか、解析手法によるアーティファクトの可能性を考慮してどっちつかずの控え目な主張の論文を書くか(あるいはお蔵入りか)、である。極端な二択をあえて書いたが、迷うまでもなく全員が前者を選ぶであろう。そしてなんとかしてスカラースピンカイラリティの存在の可能性を模索するはずだ。そうでないにしても、磁気構造の存在を実際確かめるのは今後の課題としてまずは原著論文の出版が最優先と考えるであろう。このようにして論文が生産され、出版された論文を引用することで、別の研究者も自分たちの解析の妥当性を補強し、論文が出版できる。この生産再生産のプロセスがしばらく続くと巷にはスカラースピンカイラリティやその揺らぎ(どうやって確かめるんだ?)とやらによって誘起される"異常なホール効果"を観測したという論文があふれるわけである。これは科学研究というより、コミュニティー内のそうであってほしいという要望に合わせたストーリーをみんな意図せずにでっちあげているとみることもできる、と言ったら言い過ぎであろうか。このような不健全さがもしあるとしたら、それはどこから来るのであろうか?
 上記の一連の流れの中で欠落しているのは観測された振る舞いが"スカラースピンカイラリティによるものではない"という反対意見を述べる研究インセンティブである。反対意見があればそれに反論するためによりよい検証手段や精密な解析手法の提示などが生まれていき、そうであるものとそうでないものを見分けられるような改善がなされていくはずである。そうしてコミュニティー全体の知識や洞察力が増すことで分野は発展する。残念ながら上記にあげた参考文献を除いてそのような反対意見を述べようとするグループはほとんど存在しない。いったん主張がなされるとそれを反証する有効な方法もない。なぜならトポロジカルホール効果に定量的な検証余地があまりなく、現象論なので反論のしようがないのである。あるいは比較対象となりうる正常ホール効果などの自明なホール効果ですら電子状態に敏感に依存し、定量的に計算することが難しい物理量だからである。定量的にも定性的にも明確に反証できないのに、わざわざ自分たちの研究リソースを消費して反対意見を述べようとは思わないのは当然であろう。誰かそういう論文を書いて分野の健全化を図ってくれるといいのだが...
(8) もちろん物性物理学としてその起源を明らかにする試みは有意義である。一方で\(\rho_{yx}^T\)を抽出したと主張する論文の多くはホール効果の物理的起源に関して驚くほど無頓着である。上記のように様々な理由でホール効果は非自明足りうるわけである。それらを一切見ないことにして根拠のない単純化されたモデルを当てはめてそこからずれた成分をすべて創発磁場に由来する異常項に結び付けようとするのは短絡的であり、物性の理解を深めることからはむしろ遠ざかっている。科学を深めることよりも論文を生産し、先生を喜ばせるためのお行儀のよい答えを優先しているように見える。

追記:タイトルの"花束"は宇多田ヒカルの名曲『花束を君に』の歌詞にインスパイアされたものである。楽曲の趣旨とは異なるかもしれないが、大切に思っていることに対して、言いたいことが山ほどあってもどんな言葉をならべても真実にはならない、ということである。子供のころに読んだ少年漫画が自分が大人になってもまだ連載されており、長期連載ゆえの破綻やキャラが崩壊していくのを我慢しながら、終わりに近づいていこうとしているときの、不都合な部分を口に出さないようにしながら読み続けるときのような感覚。最初鑑賞したときに揺さぶられるように感動した映画や小説を定期的に何度も見返すうちにふと、撮影方法のミスや設定の矛盾点に気づいてしまったときのような気まずさ。研究室配属されて初めて渡された先駆的論文、先輩の偉大な先行研究。それらをもとに研究を進めていく内に解釈の恣意性や仮定のずさんさが見えるようになってきて、それでもそのレールに沿ってしか自分の研究を進められないもどかしさ。これらはみな、言葉にはできない感情をともなって意識の中にいつまでも残り続けてしまうものだろう。何も言うことなく花束を手向けるくらいしかできないのかもしれない。ただ、表現する方法を持っている人は救いがあり、義務があるとも言える。研究者にとって花束の代わりになるものといえば一つしかないのだから。

Monday, April 22, 2024

量子振動あれこれ

量子振動の解析していると、この式をこのデータに当てはめてもいいんだっけ?といったもやもやした疑問がたびたび思い浮かんでくる。第一原理から自力で理論的に公式を導くこともしたくないので、似たようなことを議論している文献がないかうろうろと探し回って、その場しのぎに解決しては解析の続きを再開する。そんなことの繰り返しである。詳しい人に相談してみるとShoenberg(下記参照)に書いてあるよと言われることが多いけれど、意外とそんなことはないのでここにあれこれ書き連ねていこう。

(0) まずはここからの量子振動文献

 一般的なことについてよい文献を見つけたらここに書いていくことにする。
(0.1) Magnetic oscillations in metals, D. Shoenberg, Cambridge University Press (1984): 上述した量子振動論文で引用されることが多い文献である。570ページもあるので読み通すのは結構しんどい。とはいえこれを読まないと始まらない。非常によく書かれているので一家に数冊、自宅用と仕事場用に買って損なことはない。唯一、ガウス単位系を使っていて光速\(c\)が公式の各所に現れることだけは何とかならなかったのだろうかと思う(Preface参照)。
(0.2) Landau diamagnetic response in metals as a Fermi surface effect, A. V. Nikolaev, Phys. Rev. B 98, 224417 (2018): doi.org/10.1103/PhysRevB.98.224417
無磁場下でBrillouinゾーン内の各\(k\)点に収納されていた電子が、磁場下で準位がランダウ量子化した後どう詰まるのかを信じられないくらいまじめに考えた論文。勘定があうってことは気持ちいいことだということが体験できるよい論文だ。

(1) 量子振動は磁場\(H\)と\(B\)のどちらの関数か?

 量子振動とは例えば印加磁場\(B\)を変化させていったときに磁化\(M\)が\(1/B\)の関数として\(\Delta M\propto \cos(F/B+\phi)\)で変化していくという現象である。ここで振動とは関係ないバックグラウンド\(M_{\text{b}}\)を差し引いて\(\Delta M=M-M_{\text{b}}\)と置いている。また\(F\)は振動数、\(\phi\)は位相。
 ここでナイーブに\(B\)を磁場と呼んだが、よく知られているように外部磁場\(H_{\text{ext}}\)と\(B\)は別の物理量で、反磁場係数\(N_{\text{d}}\)を使って\(B=\mu_{0} H_{\text{ext}}-N_{\text{d}}M+M\)で結び付けられる。第二項は反磁場で、試料表面に浮き出た磁荷によって外部磁場とは反対向きにかかる磁場の寄与である。要するに試料内にかかる磁場\(H_{\text{int}}\)は外部磁場\(H_{\text{ext}}\)よりも(\(M>0\)としたとき)小さくなり、\(\mu_0 H_{\text{int}}=\mu_0 H_{\text{ext}}-N_{\text{d}}M\)となる。
 では量子振動は\(1/B\)に関して振動するのか、\(1/(\mu_0H_{\text{ext}}-N_{\text{d}}M)\)に関して振動するのか、どっちなんだろう?これは要するに伝導電子が\(B\)によってランダウ量子化するのか、\(H\)によって量子化するのかということだが、理論家に聞くと\(B\)に決まってるじゃないですかとさも当然のように答えが返ってくる。しかしこれは無視していい。彼らは実験家が印加している"磁場"なるものが\(B\)なのか\(H_{\text{ext}}\)なのか気に留めたことなど一度もないのだから。
 役に立たない助言は無視して、実験を見てみると\(B\)が正しいようである。例えば強磁性体の鉄(Fe)の量子振動を観測した実験(Anderson and Gold (1963): doi.org/10.1103/PhysRevLett.10.227)や伝導電子が受けるローレンツ力を測定した実験(Zeleny and Page (1924): doi.org/10.1103/PhysRev.24.544)などがある。理論的な裏付けとしては伝導電子が作る軌道磁化(要するに反磁性)の効果を考えた理論(Holstein, Norton, and Pincus (1973): doi.org/10.1103/PhysRevB.8.2649)と局在スピンからの磁場の効果を考えた理論(Kittel (1963): doi.org/10.1103/PhysRevLett.10.339)がある。ちなみにShoenbergに引用されているのは前者のみで、局在スピンの効果が入っていない。局在スピンによって強磁性が出ている系に関してどう解析するべきかはShoenbergを読んでもわからないのである。Shoenbergに書いてあるよっと言ってくる人がいたら、いや書いてないっすよ、ひょっとしてエアプ?と返してあげよう。
 ちなみに強磁性体中を荷電粒子が通過したときに受けるローレンツ力の理論としてWannierの理論(Wannier (1945): doi.org/10.1103/PhysRev.67.364, Wannier (1947): doi.org/10.1103/PhysRev.72.304)があるが、これはどうも怪しいようである。この理論を伝導電子に適用すると(Webster (1946): doi.org/10.1119/1.1990867)ローレンツ力は\(\frac{1}{2}(B+H)\)に比例することになるようだが上記実験の結果とも一致しないうえ、仮定がどこまで妥当なのか真偽のほどが不明である。とりあえず無視していいだろう。
 とはいえ、伝導電子が感じる磁場が\(M\)の起源が軌道運動なのかスピンなのかによらず、\(B\)であるというのは何のあいまいさもなく検証されているとはいいがたい。たとえば希土類化合物中など、\(M\)が大きい固体中のフェルミ面や量子振動を精密に計算する方法はあるのかといわれるとそんなことはないだろうと言わざるを得ない。つまり実験技術的に確かめる方法が確立していない。量子振動を解析するときに横軸を\(B\)と取っておくのは暫定的な処方箋ととらえるべきだろう。

(2) 振動数が温度変化することもある?振動数が磁場変化することもある??

 量子振動の初等的な説明では、磁場をかけた方向に垂直な平面でフェルミ面の断面を取ったときに断面積が極大または極小となる値、\(A_{\text{F}}\)に対応して振動数\(F=\hbar A_{\text{F}}/2\pi e\)で物理量が振動するとある。この\(F\)は磁場や温度を変えても大して変わらないとしていろいろ解析することが多いのだが、例外的な状況もある。とはいってもやはり大して変化はしないようだ。
 温度変化は例えば
Sommerfeld理論
Stoner強磁性体
重い電子系
 ゼーマン効果や交換磁場の影響でバンドがシフトすれば振動数は磁場変化し、変化が磁場に関して非線形である場合は観測できる形になって表れる。
振動数が変化したのか、位相が磁場変化したのか判別することはできるんだろうか?

(3) 振動の位相は\(\phi=\phi_B+\phi_{3D}+\phi_Z...\)?

 量子振動を解析するとき、FFTをするのが便利だ。振動数のところにピークが現れるからその振動数からフェルミ面の大きさが見積もれるし、ピークの高さの温度依存性を解析すれば有効質量が求まる。十分な知見じゃあないか。
 解析が一段落してふと、位相って何か情報が得られるんだっけ?と思ったあなたはすぐに引き返したほうがいい。気が狂うくらいややこしい。とりあえず下にあげる論文を読んでおけばよし。ほしい答えは書いてあるから、それで満足して実験に戻ろう。

(3.1) Rules for phase shifts of quantum oscillations in topological nodal-line semimetals, C. Li et al., Phys. Rev. Lett. 120, 146602 (2018). doi.org/10.1103/PhysRevLett.120.146602
振動の位相\(\phi\)は一般に\(\phi=-1/2+\phi_{\text{B}}/2\pi+\phi_{3\text{D}}\)で与えられる。\(\phi_{\text{B}}\)はベリー位相(0, \(\pi\))、\(\phi_{3\text{D}}\)は次元性による因子である(0, \(\pm 1/8\)あるいはその間(!?))。この論文によるとキャリアが電子的かホール的かによって位相の符号が反対になるらしい。もっともらしいのだが、ほかの文献を読んでもはっきり書いているのが見当たらない。自分で確認するしかないのかな。
 ほかに位相を変える効果としてゼーマン効果(\(\phi_{Z}\))と軌道モーメントの効果(\(\phi_{R}\))を考えないといけない。このことを考え始めると振動の位相に非自明な\(\pi\)が見つかればベリー位相の直接的な証拠だというナイーブな理解は正しくないことが分かってくる。シンプルでエレガントな説明にあこがれていた無邪気な物理学徒のままでいたいなら、今すぐ引き返そう。まだ間に合うぞ。
参考
Gao and Niu (2017), doi.org/10.1073/pnas.1702595114
Alexandradinata et al. (2018), doi.org/10.1103/PhysRevX.8.011027
二番目の論文を読むと振動の位相に非自明な\(\pi\)があったとしても縮退したバンド同士でなんやかんや相殺しあってベリー位相とは関係なしに\(\pi\)になる場合と、軌道効果とゼーマン効果が相殺してベリー位相だけが残って\(\pi\)になる場合とがあるようだ。ちなみにBiTeIのように反転心がなくDirac点が時間反転不変なA点周りにある場合は...

(4) 熱電能の量子振動の公式は?

 抵抗や磁化の量子振動の振幅は温度に依存しており、いわゆるLK公式で
\(R_{T}=\frac{\alpha X}{\sinh(\alpha X)}\)
と書かれる。ここで\(\alpha=2\pi^2k_B/e\hbar\), \(X=m^*T/H\)。これは温度に関して単調で、低温にいくにしたがって増加し、絶対零度に近づくにつれて1に飽和する。
一方で熱電能やネルンスト効果は
\(R_{TEP}=\frac{\alpha X\coth (\alpha X)-1}{\sinh (\alpha X)}\)
となる。これはちょうど\(R_T(x)\)を\(x=\alpha X\)に関して微分したものである。温度に関して非単調で\(T\sim 0.11H/m^*\)でピークを取り、絶対零度でゼロになる。
参考
Morales (2016): doi.org/10.1103/PhysRevB.93.155120, UGe\(_2\)の量子振動の論文。引用文献が丁寧。温度因子を導出した論文として下記があげられている。
Pantsulaya, Varlamov (1989): doi.org/10.1016/0375-9601(89)90824-4
年代を確認すればわかるようにPantsulaya&Varlamovが最初に導出したわけではないのでこの方たち名前で公式名を呼称するのは正当ではない。ちなみに熱伝導率に関しても同様の議論があり、温度因子は\(R_{TC}=R_{T}(x)''\) (\(x\)に関する二階微分)で与えられる。

(5) 有効質量をmass plotで求めると本来の値からずれる?


(6) Dingle温度って実際...


(7) SdHの生データをLK fitしてしまうと...


(8) SdHの振動は\(\sigma_{xx}\)か\(\rho_{xx}\)か?


(9) 反転心のない系のspin splitしたバンドはZeeman spin splitをするのか?

 よく知られているように反転対称性のない系のバンドはスピン軌道相互作用の影響でゼロ磁場の時点でスピン分裂している(例: ラシュバ効果、ドレッセルハウス効果)。そのためスピン分裂したフェルミ面は一般の磁場方向でそれぞれ異なる振動数で振動する。ここで気になるのがspin factor \(R_{S}=\cos(\pi g^*m^*/2m_0)\)の取り扱いである。反転心のない系の量子振動論文を読むと\(R_{S}\)の項を入れた振動公式を使って議論していることが結構多い。
 \(R_{S}\)はもともとスピン縮退したバンドが磁場下でZeeman分裂することを考慮して導いた項だったはずである。Zeeman分裂が磁場に関して一次だとして、spin upとspin downのバンドはゼロ磁場では同じ振動数を与えることが前提となっている。
 反転心のない系では上記のようにこの前提が成り立たないので\(R_{S}\)の項が入った振動公式を使って議論するのはなんだかとっても変である。一体どういうことなのだろうか?
参考
Mineev and Samokhin (2005), doi.org/10.1103/PhysRevB.72.212504
Miller and R. Reifenberger (1988), doi.org/10.1103/PhysRevB.38.4120
三番目の論文を読むと磁場の強さとスピン軌道相互作用による分裂のどちらの効果が大きいかによって状況が変わるらしい。少なくとも一般には\(R_{S}\)の項はないほうが正しい。当該論文にはゼーマン効果の起源をあえてあいまいに書いてあると思われる節があるので、どう取り扱うのが"正しい"のかは未解決というべきだろう。

(10) dHvAやSdHなのにmass plotがLKに従わない...だと?

参考:

Tuesday, January 2, 2024

Magnets and metals of 2024

November

EuAl2Si2

Giant Domain Wall Anomalous Hall Effect in a Layered Antiferromagnet EuAl2Si2
No reliable analysis to prove the DW scattering mechanism. 

LnNb6Sn6 (Ln = Ce-Tm, Y)

Stability frontiers in the AM6X6 kagome metals; The LnNb6Sn6 (Ln:Ce–Lu,Y) family and density-wave transition in LuNb6Sn6
Brenden R. Ortiz et al., https://arxiv.org/abs/2411.10635
First order DW transition at 68 K in Lu. No anomaly in Y.

EuSn2As2

Intrinsic Negative Magnetoresistance in Layered AFM Semimetals: the Case of EuSn2As2
K. S. Pervakov et al., https://arxiv.org/abs/2411.03971
Formula of rho_xy is wrong.

October

alpha-Fe6Ga5

Crystal structure, Chemical Bonding, and Magnetism of α-Fe6Ga5: How Local Interactions Shape the Structure and Properties of Intermetallic Compounds
R. A. Khalaniya et al., doi.org/10.1021/acs.inorgchem.4c03247

RuO2

Absence of Altermagnetic Spin Splitting Character in Rutile Oxide RuO2

alpha-RuCl3

Imaging Quantum Interference in a Monolayer Kitaev Quantum Spin Liquid Candidate

TaNi2Te2

Canted antiferromagnetism in a van der Waals metallic material TaNi2Te2

Ca3Pt4Bi8

Superconductivity in the quasi-one-dimensional ternary compound Ca3Pt4Bi8

Yb2Be2GeO7

Large magnetocaloric effect in the Shastry-Sutherland lattice compound Yb2Be2GeO7 with spin-disordered ground state

MnS2

Republished: Colossal density-driven resistance response in the negative charge transfer insulator MnS2

Cuprates

Planar Thermal Hall Effect from Phonons in Cuprates
Not reliable. The observed Hall effect does not follow the symmetry rule. The origin is speculated as the "a locally broken symmetry due to impurities, defects, or domains", but no sample dependence, shape effect, or the details of  the experimental setup have been provided. If it is an extrinsic effect, significant sample dependence would be expected to be observed. How were the reviewers convinced by the paper with only a few data curves?

PrMgAl11O19

Ising-type quantum spin liquid state in PrMgAl11⁢O19

September

EuIn4

Incommensurate magnetic ordering and a possible structural transition in EuIn4

beta-BaNi3(VO4)2(OH)2

Frustrated magnetism of the spin-1 kagome antiferromagnet β-BaNi3(VO4)2(OH)2

TbFeWO6

Origins of Polar Crystal Structure and Multiferroicity in the Antiferromagnet TbFeWO6

ErB4

Magnetic Phase Diagram of ErB4 as Explored by Neutron Scattering

NdGaSi

Giant anisotropic anomalous Hall effect in antiferromagnetic topological metal NdGaSi
Anyesh Saraswati et al., https://arxiv.org/abs/2409.06250

MnSc2Se4

Magnon-phonon interactions in the spinel compound MnSc2Se4

P4W12O44, eta-Mo4O11

Charge density waves and electron-hole instabilities of the hidden-nesting materials P4W12O44, γ- and η-Mo4O11

Eu5In2Sb6, Eu5Ga2Sb6

Bonding Interactions Can Drive Topological Phase Transitions in a Zintl Antiferromagnetic Insulator

EuT2Pn2 (T = Cd, Zn, Pn = P, As, Sb)

Chemical pressure due to impurities in trigonal compounds EuT2Pn2 (T= Cd, Zn; Pn= P, As, Sb)
Kristin Kliemt et al., https://arxiv.org/abs/2409.00531

GdTi3Bi4

Striped magnetization plateau and chirality-reversible anomalous Hall effect in a magnetic kagome metal
Erjian Cheng et al., https://arxiv.org/abs/2409.01365

GdRhIn

Interplay of structure, magnetism, and magneto-thermal effects in Gadolinium-based intermetallic compound
Ravinder Kumar et al., https://arxiv.org/abs/2409.02083

Y2Ti2O7

Phonon thermal Hall effect in nonmagnetic Y2Ti2O7

Fe3Ga

Tuning the anomalous Hall effect of the high Curie temperature nodal-line metal Fe3Ga via Mn doping and associated band topology

TbB4

Magnetic symmetries of terbium tetraboride (TbB4 ) revealed by resonant x-ray Bragg diffraction

Ca0.3Ba0.7Nb2O6

Coexisting polarization mechanisms in the ferroelectric uniaxial tetragonal tungsten bronze Ca0.3Ba0.7Nb2O6
Elena Buixaderas et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.104302

August

CsCeS32

Stripe magnetic order and field-induced quantum criticality in the perfect triangular-lattice
antiferromagnet CsCeSe2

CrSb

High mobility charge transport in a multicarrier altermagnet CrSb

Ce4Fe3Ge10, Lnn+1MnX3n+1

Role of CeNiSi2 and BaNiSn3 Structure Types in the Emergent Magnetism of the Homologous Series Lnn+1MnX3n+1:Ce4Fe3Ge10Click to copy article link
Alexis Dominguez Montero et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c01938

FeSr2YCu2O7.08

Triple Magnetic Stacking in an Iron-Containing Cuprate with Cu–Fe–Cu Magnetic Blocks
Sara A. López-Paz et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c00588

Dy1-xTbxAl2

Study on the magnetothermal properties of the Dy1-xTbxAl2 series of compounds
R.S. de Oliveira et al., doi.org/10.1016/j.jmmm.2024.172458

NdZnPO

Magnetic structure and Ising-like antiferromagnetism in the bilayer triangular lattice compound NdZnPO

LaCr1-xFexSb3

Avoided Quantum Tricritical Point and Emergence of a Canted Magnetic Phase in LaCr1 − xFexSb3

(Ge1-delta-xMnx)2Bi2Te5 (x < 0.47, 0.11 < delta < 0.20)

Single crystal growth, chemical defects, magnetic and transport properties of antiferromagnetic topological insulators (Ge1−𝛿−𝑥⁢Mn𝑥)2⁢Bi2⁢Te5 (𝑥≤0.47, 0.11≤𝛿≤0.20)

FeGe

Unconventional charge density wave in a kagome lattice antiferromagnet FeGe

Cu2(OH)3NO3

Magnetic phase diagram of rouaite Cu2(OH)3NO3
Aswathi Mannathanath Chakkingal et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.054442

PrIr3

Ferromagnetism and structural phase transition in rhombohedral PrIr3
Karolina Gornicka et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.064431

RuO2

Multiband transport in RuO2
Florent Pawula et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.064432

RAlSi

Comparative analysis of magnetoresistance in Weyl semimetal RAlSi

Na2PrO3

Unraveling the magnetic ground state in the alkali-metal lanthanide oxide Na2PrO3
Ifeanyi John Onuorah et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.064425

EuAuSb

Chiral anomaly and weak antilocalization effects in the Weyl semimetal EuAuSb
Shubhankar Roy et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.085145

EuCuP-EuCuAs

Crystal growth and evolution of magnetism in the EuCuP-EuCuAs solid solution

LuInCo4

Unusual strong ferromagnetism in site-ordered cubic Laves phase compound LuInCo4 with Co-pyrochlore lattice
Taiki Shiotani et al., https://arxiv.org/abs/2408.12166

Co1/4TaSe2

Itinerant A-type Antiferromagnetic Order in Co1/4TaSe2
H. Cein Mandujano et al., https://arxiv.org/abs/2408.10421

YbOCl

Ground State Magnetic Structure and Magnetic Field Effects in the Layered Honeycomb Antiferromagnet YbOCl

Zn2⁢VO⁢(PO4)2

Quantum and classical spin dynamics across temperature scales in the S = 1/2 Heisenberg antiferromagnet

Ce2Ir3Ga5

Ce2⁢Ir3⁢Ga5 : A new locally noncentrosymmetric heavy fermion system

Nb3Cl8

Charge fluctuations in a cluster Mott state: Hard x-ray photoemission study on a breathing kagome magnet Nb3Cl8

AgVP2S6

Random-exchange Heisenberg behavior in the electron-doped quasi-one-dimensional spin-1 chain compound AgVP2S6
Peter T. Orban et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.054423

Na5Co15.5Te6O36

Crystal growth and magnetic properties of atom K embedded in Na5Co15.5Te6O36 

RFe2Si2 (R = Ho, Tm)

Magnetic properties and large low-field magnetocaloric effect of RFe2Si2 (R = Ho, Tm) compounds
Author links open overlay panel

TbTi3Bi4, Ln2-xTi6+xBi9 (Ln: Tb-Lu)

Intricate Magnetic Landscape in Antiferromagnetic Kagome Metal TbTi3Bi4 and Interplay with Ln2–xTi6+xBi9 (Ln: Tb···Lu) Shurikagome MetalsClick to copy article link
Brenden R. Ortiz et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c01449

Ba2Cu3(SeO3)4F2

Polar Layered Magnet Ba2Cu3(SeO3)4F2 Composed of BitriangularChains: Observation of 1/3-Magnetization Plateau
Alimujiang Yalikun et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c01294

SmMn2Ge2

Tuning intrinsic anomalous Hall effect from large to zero in two ferromagnetic states of SmMn2Ge2

EuMnSb2

Continuous pressure-induced valence and magnetic transitions in EuMnSb2
Raimundas Sereika et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.075127

TbTi3Bi4

1/3 and other magnetization plateaus in the quasi-one-dimensional Ising magnet TbTi3Bi4 with zigzag spin chain

Ce3TiSb5

Unconventional Hall effects in a quasi-kagome Kondo Weyl semimetal candidate Ce3TiSb5

PrAu2In4

Strange-metal behavior in PrAu2⁢In4 with a pseudodoublet ground state
Zhaotong Zhuang et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.085108

Sr3CuTa2O9

Evidence of quantum spin liquid state in a Cu2+-based S = 1/2 triangular lattice antiferromagnet
K. Bhattacharya et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.L060403

MnGeTeO6

Field-induced transformation of complex spin ordering and magnetodielectric and magnetoelastic
coupling in MnGeTeO6

VBr3

Lattice and magnetic structure in the van der Waals antiferromagnet VBr3

CuB2O4

Magnetic phase transitions in the antiferromagnet CuB2O4 optically detected via Frenkel excitons

July

K2Co2(SO4)3

Anomalous Magnetoelectric Coupling in the Paramagnetic State of a Chiral and Polar Magnet
Xianghan Xu et al., doi.org/10.1002/aelm.202400308

HoAgGe

Enhancement of the anomalous Hall effect by distorting the Kagome lattice in an antiferromagnetic material
Subhajit Roychowdhury et al., doi.org/10.1073/pnas.2401970121
AHE is unlikely because magnetization above 50 K is linear in a magnetic field (Fig. 3D). In contrast, the extracted sigma^A is not (see Fig. 6B). It is quite strange that the AHE survives even at 100 K. Multicarrier transport has to be carefully considered. 
It should be noted that a different paper written by the same first author reported the field-dependent Hall resistivity in LaMn2Ge2 in a tilted magnetic field configuration (doi.org/10.1002/adma.202305916). The authors interpreted this as a topological Hall effect, but I cannot find that the argument is reasonable. Such a behavior can also be explained by the field-induced rotation of the out-of-plane magnetization as suggested in https://arxiv.org/abs/2403.19581

Cu2(MoO4)(SeO3)

A case for Bragg diffraction by a noncollinear (PT)-symmetric antiferromagnet Cu2(MoO4)(SeO3)
S. W. Lovesey et al., https://arxiv.org/abs/2407.18640

Cs3Bi2I6Cl3

Lattice distortion leads to glassy thermal transport in crystalline Cs3Bi2I6Cl3

Co2Te3O8

SiO2-mediated facile hydrothermal synthesis of spiroffite-type Co2Te3O8
Austin M. Ferrenti et al., https://arxiv.org/abs/2407.18477

alpha-RuBr3

Anisotropy of the zigzag order in the Kitaev honeycomb magnet α-RuBr3
John S. Pearce et al., https://arxiv.org/abs/2407.15658

Gd2Al3Rh

Synthesis, Physical, and Magnetocaloric Properties of MgZn2-Type Gd2Al3Rh
Fabian Eustermann et al., doi.org/10.1021/acs.inorgchem.4c01887

DyOCl, SmOCl

Magnetic properties of van der Waals layered single crystals DyOBr and SmOCl

EuGa2.4Al1.6

Spin density waves and ground state helices in EuGa2.4⁢Al1.6

EuZn2Sb2

Observation of paramagnetic spin-degeneracy lifting in EuZn2Sb2
Milo X. Sprague et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.045130

NdGaGe

Crystalline electric field and large anomalous Hall effect in NdGaGe single crystals

FeP3SiO11

Magnetism and field-induced effects in the S = 5/2 honeycomb lattice antiferromagnet FeP3SiO11

CeCo2Ga8

Abnormal planar Hall effect in quasi-1D Kondo chain CeCo2Ga8 and its implications for hybridization dynamics

Sr3CuTa2O9

Evidence of quantum spin liquid state in a Cu2+ -based S = 1/2 triangular lattice antiferromagnet
K. Bhattacharya et al., https://arxiv.org/abs/2407.10076

BaFe2Al9, BaCo2Al9, SrCo2Al9

Thermal characteristics of the phase transition near 100 K in BaFe2Al9

LaSbTe

Electronically-driven switching of topology in LaSbTe

KBaCr2(PO4)3

Ground-state properties of the double trillium lattice antiferromagnet KBaCr2(PO4)3

Fe3-xGeTe2

Direct evidence from high-field magnetotransport for a dramatic change of quasiparticle character in van der Waals ferromagnet Fe3−𝑥⁢GeTe2

CaCoV2O7

Sharp quantum phase transition in the frustrated spin-1/2 Ising chain antiferromagnet CaCoV2⁢O7

EuZn2P2

Ambient- and high-pressure studies of structural, electronic, and magnetic properties of single-crystal EuZn2⁢P2
Damian Rybicki et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.014421

MnSb8Te13

Magnetotransport and electronic structure of the axion insulator MnSb8Te13

ErGa2

Exploring metamagnetism in triangular Ising networks: Insights from further-neighbor interactions with a case study on ErGa2

RE2O2CO3 (RE = Pr, Nd, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Yb)

Magnetic properties of RE2O2CO3 (RE = Pr, Nd, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Yb) with a rare earth-bilayer of triangular lattice
Aya Rutherford et al., https://arxiv.org/abs/2407.08606

CeCl3

Crystal growth, magnetic and magnetocaloric properties of 𝐽eff = 1/2 quantum antiferromagnet CeCl3

Ba3NiRuIrO9

Electronic and magnetic structures of a mixed triple perovskite: Ba3⁢NiRuIrO9
Siddharth Kumar et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.024407

CuFeO2

Elastic and inelastic neutron scattering experiments under high pressure in the frustrated antiferromagnet CuFeO2

EuCd2Sb2

Magnetic structure of a single-crystal thin film of EuCd2⁢Sb2
Eliot Heinrich et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.110.024405

Yb2Be2GeO7

Candidate for a quantum spin liquid ground state in the Shastry-Sutherland lattice material Yb2⁢Be2⁢GeO7

Co4Ta2O9, Co4Nb2O9

Contrasting magnetothermal conductivity in sibling Co-based honeycomb-lattice antiferromagnets

Cs2Fe2(MoO4)3

Cs2Fe2(MoO4)3 A Strongly Frustrated Magnet with Orbital Degrees of Freedom and Magnetocaloric Properties
Lenka Kubíčková et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c01262

June

YbI3

Atypical antiferromagnetic ordering in single crystalline quasi-2D honeycomb magnet YbI3
Nashra Pistawala et al., https://arxiv.org/abs/2407.01982

black-P

Angle-dependent planar thermal Hall effect by quasi-ballistic phonons in black phosphorus
Planar thermal Hall effect is forbidden in orthorhombic mmm crystals.

Na3Co2SbO6

Phonon Heat Transport and Anisotropic Tuning of Quantum Fluctuations in a Frustrated Honeycomb Magnet

NiMnSb, PtMnSb

Extended Berry Curvature Tail in Ferromagnetic Weyl Semimetals NiMnSb and PtMnSb
Sukriti Singh et al., doi.org/10.1002/advs.202404495

EuNiGe3

Helicity Unification by Triangular Skyrmion Lattice Formation in the Noncentrosymmetric Tetragonal Magnet EuNiGe3
Takeshi Matsumura et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.074705

Ni5(TeO3)4X2 (X = Cl, Br)

Observation of linear magnetoelectric effect in the van der Waals antiferromagnets N⁢i5⁢(Te⁢O3)4⁢𝑋2 (𝑋=Cl,Br)

SrAl4

Noncentrosymmetric, transverse structural modulation in SrAl4, and elucidation of its origin in the BaAl4 family of compounds
Sitaram Ramakrishnan et al., doi.org/10.1103/PhysRevResearch.6.023277

VI3

Signatures of Kitaev Interactions in the van der Waals Ferromagnet VI3

GdAuGe

Cold Seeded Epitaxy and Flexomagnetism in Smooth GdAuGe Membranes Exfoliated from graphene/Ge(111)

MoTe2

Evidence of surface p-wave superconductivity and higher-order topology in MoTe2
Sangyun Lee et al., arxiv.org/abs/2406.07260

GdAlSi

Pushing an Altermagnet to the Ultimate 2D Limit: Evidence of Symmetry Breaking in Monolayers of GdAlSi
Oleg E. Parfenov et al., arxiv.org/abs/2406.07172

Ba4RuMn2O10

Ba4RuMn2O10: A Noncentrosymmetric Polar Crystal Structure with Disordered Trimers
Callista M. Skaggs et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c00586

Nd3Te4

Interplay of Competing Magnetic Interactions in Noncentrosymmetric Nd3Te4 for Enhancing the Magnetocaloric Properties
Prabuddha Kant Mishra et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c00453

Ce5Ag1.76Ga17.29, Ce5Zn1.37Ga17.73, CeCu0.37Ga3.63, CePd0.32Ga3.68

Temperature-Dependent Products in Gallium Flux Reactions of Cerium and Transition Metals
Md. Sahab Uddin et al., doi.org/10.1021/acs.inorgchem.4c00797

Pr3BWO9

Excitation spectrum and spin Hamiltonian of the frustrated quantum Ising magnet Pr3BWO9

R2PdSi3

Crystal growth of the R2PdSi3 (R = rare earth) materials using the optical floating zone technique

EuZn2P2

Carrier-induced transition from antiferromagnetic insulator to ferromagnetic metal in the layered phosphide EuZn2P2

EuCd2P2

Manipulating magnetism and transport properties of EuCd2P2 with a low carrier concentration

HfTe5

Effects of strain and defects on the topological properties of HfTe5

K2Ni2(SeO3)3

Magnetism in the S = 1 triangular dimer lattice antiferromagnet K2Ni2(SeO3)3

EuIr4In2Ge4

Single Crystal Growth and Characterizationof Tetragonal EuIr4 In2Ge 4with Dresselhaus-type Spin–Orbit Coupling
Ryu Nakachi et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.075001

Co2MnGa

Topologically influenced terahertz emission in Co2MnGa with a large anomalous Hall effect

La(Ru,Fe)3Si2

Discovery of charge order above room-temperature in the prototypical kagome superconductor La(Ru1−xFex)3Si2

HoScSi, ErScSi

Coexistence of antiferromagnetism and glassy magnetic state and signature of quantum interference effects in the frustrated ternary silicides HoScSi and ErScSi

TbSi, TbSi0.6Ge0.4

Multiple magnetic interactions and large inverse magnetocaloric effect in TbSi and TbSi0.6Ge0.4

ReSe2

180 °-twisted bilayer ReSe2 as an artificial noncentrosymmetric semiconductor

CuBr2, CuBrI

Helimagnetism in CrBr2 and CrIBr
John A. Schneeloch et al., https://arxiv.org/abs/2406.02538

GdTe3

Atomic-scale visualization of a cascade of magnetic orders in the layered antiferromagnet GdTe3
Arjun Raghavan et al., doi.org/10.1038/s41535-024-00660-4

AgCrSe2

Concurrence of directional Kondo transport and incommensurate magnetic order in the layered material AgCrSe2
José Guimarães et al., doi.org/10.1038/s42005-024-01671-0

Multiferroics

Multiferroics: different routes to magnetoelectric coupling

Ce3Bi4Ni3

Ce3Bi4Ni3 – A large hybridization-gap variant of Ce3Bi4Pt3

La4Co4X (X = Pb, Bi, Sb)

La4Co4X (X = Pb, Bi, Sb): A demonstration of antagonistic pairs as a route to quasi-low-dimensional ternary compounds

Co3TeO6

Complex magnetic transitions and possible orbital ordering in multiferroic C⁢o3⁢Te⁢O6 single crystal

CeRhSn

Anisotropic hybridization in CeRhSn
Thomas U. B¨ohm et al., https://arxiv.org/abs/2406.01516

Yb3Ga5O12

Uncommon magnetic ordering in the quantum magnet Yb3Ga5O12

EuIn2

Single-crystal growth and characterization of antiferromagnetically ordered EuIn2
Brinda Kuthanazhi et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.214401

SmMnBi2

Unconventional anomalous Hall effect and large anomalous Nernst effect in antiferromagnet SmMnBi2

May

Li5Ge2, Li5Sn2

Applicability of the Zintl Concept to Understanding the Crystal Chemistry of Lithium-Rich Germanides and Stannides

EuCd2Sb2

Observation of in-plane anomalous Hall effect associated with orbital magnetization
Ayano Nakamura et al., https://arxiv.org/abs/2405.16722
   The peak in R_yx^AHE (Fig. 3(a)) may be explained within the trivial AHE induced by an out-of-plane magnetization. As the in-plane Hall system requires low symmetry, a net magnetization along the out-of-plane direction could be induced by a tilt of AFM spins of Eu due to the competing anisotropy axes. The induced M_z would be small, and it is in an agreement with the fact that the observed peak of the in-plane anomalous Hall signal is ~ 2 Ohm, which is 10% of the AHE signal for the out-of-plane field (Fig. 2). 
   On the basis of symmetry, the magnetization can be expressed as M_z = chi_zx*H_x + chi_zxxx*H_x^3, where chi_zx and chi_zxxx are magnetic susceptibility tensors allowed in the monoclinic magnetic point group system, where H_x is in the ab-plane and perpendicular to the C_2 axis. Below the saturation field, the induced M_z can cause the appearance of the trivial AHE signal even in the in-plane field configuration, which is not classified as the in-plane AHE but as "an ordinary AHE" due to the induced out-of-plane moment. In contrast to that, the linear increase of R_yx^AHE above the saturation field (Fig. 3(a)) would be a genuine in-plane AHE, which originates from the magnetization lying in the ab-plane.
   Indeed, the symmetry of M_z (= chi_zx*H_x etc) is the same with that of sigma_xy in H_x. It is a serious issue how to distinguish the real in-plane AHE by the in-plane moment from the trivial AHE induced by the off-diagonal component in the magnetic susceptibility tensor. 

ErGa2

Metamagnetic multiband Hall effect in Ising antiferromagnet ErGa2
Takashi Kurumaji et al., pnas.org/doi/10.1073/pnas.2318411121

Fe3Sn

Large spontaneous magneto-thermoelectric effect in epitaxial thin films of the topological kagome ferromagnet Fe3⁢Sn
Shun'ichiro Kurosawa et al., doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.8.054206

CuTeO4

Quasi-one-dimensional exchange interactions and short-range magnetic correlations in CuTeO4

CoTiO3

Field-dependent magnons in the honeycomb antiferromagnet CoTiO3

Ho2PdAl6Ge4

Transition from an incommensurate spin density wave to a commensurate magnetic order in a triangular lattice compound Ho2PdAl6Ge4

TbMn6Sn6

Spin chirality engineering induced giant topological Hall effect in a kagome magnet

Ni3-xMnxTeO6

High-field magnetoelectric coupling and successive magnetic transitions in Mn-doped polar antiferromagnet Ni3TeO6

EuAl12O19

Quasi-two-dimensional ferromagnetism in the triangular magnet EuAl12O19

(Mn0.2Fe0.2Co0.2Ni0.2Cu0.2)Ta2O6

Absence of Long-Range Magnetic Ordering in a Trirutile High-Entropy Oxide (Mn0.2Fe0.2Co0.2Ni0.2Cu0.2)Ta2O6

CrCl3

Ligand Field Exciton Annihilation in Bulk CrCl3
Samanvitha Sridhar et al., https://arxiv.org/abs/2405.15528

Ni1-xCuxCr2O4

Coexisting antiferromagnetic phases on the frustrated pyrochlore sublattice of the mixed Jahn-Teller system Ni1−𝑥⁢Cu𝑥⁢Cr2⁢O4

Co2Mo3O8

Symbiosis of antiferromagnetism and ferrimagnetism in adjacent honeycomb layers

Sr3Fe2O7

Reentrant multiple-q magnetic order and a “spin-cholesteric” phase in Sr3Fe2O7
N. D. Andriushin et al., https://arxiv.org/abs/2405.12889

U2Mn3Ge, U2Fe3Ge

A single crystal study of Kagome metals U2Mn3Ge and U2Fe3Ge

YTe3

Kramers nodal line in the charge density wave state of YTe3 and the influence of twin domains
Shuvam Sarkar et al., https://arxiv.org/abs/2405.10222

EuZn2P2

Carrier-induced transition from antiferromagnetic insulator to ferromagnetic metal in the layered phosphide EuZn2⁢P2

EuPtSi

Single helicity of the triple-𝑞 triangular skyrmion lattice state in the cubic chiral helimagnet EuPtSi
Takeshi Matsumura et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.174437

UBiTe

Tunable Giant Anomalous Hall in a Kondo Lattice Ferromagnet UBiTe

CrSb

Large band-splitting in g-wave type altermagnet CrSb
Jianyang Ding et al., https://arxiv.org/abs/2405.12687
Observation of Spin Splitting in Room-Temperature Metallic Antiferromagnet CrSb
Three-dimensional mapping and electronic origin of large altermagnetic splitting near Fermi level in CrSb

Er2Be2GeO7

Observation of unprecedented fractional magnetization plateaus in a new Shastry-Sutherland Ising
compound

PdCrO2

Large anomalous Hall conductivity induced by spin chirality fluctuation in an ultraclean frustrated antiferromagnet PdCrO2
Non-linear behavior of ryx has also been observed even in nonmagnetic PdCoO2 and PtCoO2 (doi.org/10.1038/s41535-018-0138-8). The Fermi surface effect has not been fully excluded.  

Re3Ge7

Suppression of metal-to-insulator transition and stabilization of superconductivity by pressure in Re3Ge7

(Mn1-xMgx)3Si2Te6

Tuning the colossal magnetoresistance in (Mn1-xMgx)3Si2Te6 by engineering the gap and magnetic
properties via doping and pressure

TbTi3Bi4, Ln2-xTi6+xBi9 (Ln = Tb-Lu)

Complex magnetic landscape in kagome metal TbTi3Bi4 and competition with family of Ln2−xTi6+xBi9 (Ln: Tb–Lu) shurikagome metals
Brenden R. Ortiz et al., https://arxiv.org/abs/2405.11378

CuCrSe2

Evidence for Multiferroicity in Single-Layer CuCrSe2

PtSn4

Ultrafast Carrier Relaxation Dynamics in a Nodal-Line Semimetal PtSn4

DyTe3

Non-coplanar helimagnetism in the layered van-der-Waals metal DyTe3
Shun Akatsuka et al., doi.org/10.1038/s41467-024-47127-5

Tb5Sb3

Enhanced emergent electromagnetic inductance in Tb5Sb3 due to highly disordered helimagnetism

RMn6Sn6 (R = Sc, Y, Gd–Lu)

New insight into tuning magnetic phases of RMn6Sn6 kagome metals
S. X. M. Riberolles et al., doi.org/10.1038/s41535-024-00656-0

(Mn0.2Co0.2Ni0.2Cu0.2Cd0.2)WO4

Preparation and Properties of a High-Entropy Wolframite-Type Antiferromagnet, (Mn0.2Co0.2Ni0.2Cu0.2Cd0.2)WO4
Vladimir B. Nalbandyan et al., doi.org/10.1021/acs.inorgchem.3c04430

CoTiO3

Temperature dependence of magnetic excitations in the topological insulator CoTiO3
Srimal Rathnayaka et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.174432

FePS3

Giant Linear Dichroism Controlled by Magnetic Field in FePS3
Xu-Guang Zhou et al., https://arxiv.org/abs/2405.10326

RuO2

Absence of magnetic order in RuO2: insights from μSR spectroscopy and neutron diffraction
Philipp Keßler et al., https://arxiv.org/abs/2405.10820

LnSbTe (Ln = Pr, Nd, Dy, Er)

On the magnetic structures of 1:1:1 stoichiometric topological phases LnSbTe (Ln = Pr, Nd, Dy and Er)

SrCo6O11

Large anomalous Hall effect in spin fluctuating devil’s staircase
It is intuitively so strange that the scalar spin chirality significantly contributes to the AHE in such a system with a large Ising type anisotropy. chi is less than 1x10^-2 in arbitrary units. Is it quantitatively reasonable (maybe not)? Analysis is done with one band model. Is there any possibility of a two-band transport effect?

K2CrTi(PO4)3

Magnetism and spin dynamics of the S=3/2 frustrated trillium lattice compound K2CrTi(PO4)3

KHoSe2

Triangular Lattice of Ho3+ with Seff = 1/2 in Antiferromagnetic KHoSe2

Eu(Co1-xNix)2-yAs2

Europium c-axis ferromagnetism in Eu(Co1−xNix)2−yAs2: A single-crystal neutron diffraction study

(Fe1-xMnx)2AlB2

Competing magnetic correlations and uniaxial anisotropy in (Fe1−xMnx)2AlB2 single crystals

EuSnP

Complex fermiology and electronic structure of antiferromagnet EuSnP

FeTi2O5

Possible spin Jahn-Teller material: Ordered pseudobrookite FeTi2O5

NdSbxTe2-x+delta

Evolution of magnetism in the magnetic topological semimetal NdSbxTe2−x+δ
Santosh Karki Chhetri et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.184429

Fe2Mo3O8

Optical magnetoelectric effect in the polar honeycomb antiferromagnet Fe2Mo3O8

Rb2Co2(SeO3)3

Frustrated Magnetism in a Potential Quantum Material Based on Spin-1/2 Co2+ Dimers

CuBiSeCl2

Synthesis, Structure, and Properties of CuBiSeCl2: A Chalcohalide Material with Low Thermal Conductivity
Cara J. Hawkins et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c00188

CeNi4Cu

Thermopower of the CeNi4Cu compound with unstable valence of Ce

Ni(OH)F

The Interplay of Electronic Configuration and Anion Ordering on the Magnetic Behavior of Hydroxyfluoride Diaspores
Catriona A. Crawford et al., doi.org/10.1021/acs.inorgchem.4c00679

NbMnP

Intrinsic Anomalous Hall Effect Arising from Antiferromagnetism as Revealed by High-Quality NbMnP et al., Yuki Arai et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.063702

Ce5Si3

Neutron scattering study on dimerized 4f1 intermetallic compound Ce5Si3

GdAsSe

Structural, magnetic, and electronic properties of a GdAsSe single crystal: Experimental and theoretical studies

(Bi0.5Ag0.5)Mn7O12

Giant spin-induced electric polarization in absence of orbital order in (Bi0.5Ag0.5)Mn7O12

Ba6RE2Ti4O17 (RE = Nd, Sm, Gd, Dy-Yb)

Ba6RE2Ti4O17 (RE = Nd, Sm, Gd, Dy–Yb): A Family of Rare-Earth-Based Layered Triangular Lattice Magnets

CuAlCr4S8, CuGaCr4S8

Spin-lattice-coupled helical magnetic order in breathing pyrochlore magnets, CuAlCr4S8 and CuGaCr4S8

FeSi

Pressure induced metallization and loss of surface magnetism in FeSi

Co8Zn8Mn4

Competing anisotropies in the chiral cubic magnet Co8Zn8Mn4 unveiled by resonant x-ray magnetic scattering

LaCrGe3

Enhancement of the Curie temperature in single crystalline ferromagnetic LaCrGe3 by electron irradiation-induced disorder
E. H. Krenkel et al., https://arxiv.org/abs/2405.04429

RAlSi (R = Ce, Nd)

Zone-selection effect of photoelectron intensity distributions in a nonsymmorphic system RAlSi (R : Ce and Nd)
Yusei Morita et al., https://arxiv.org/abs/2405.04077

YBa(Cu1-xFex)2O5

Tunable magnetic structures in the helimagnet YBa(Cu1−xFex)2O5

Pr2Be2GeO7, Nd2Be2GeO7

Distinct magnetic ground states in Shastry-Sutherland lattice materials: Pr2Be2GeO7 versus Nd2Be2GeO7

Mn1-xFexSi

Electron-phonon coupling in Mn1−xFexSi

EuPrCuSe3, EuNdCuSe3

Experimental and Theoretical Insights on the Structural, Electronic, and Magnetic Properties of the Quaternary Selenides EuPrCuSe3 and EuNdCuSe3
Maxim V. Grigoriev et al., doi.org/10.1021/acs.inorgchem.3c04560

LiFePO4

Magnetic structure and magnetoelectric properties of the spin-flop phase in LiFePO4
Sofie Holm-Janas et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.174413

Ba4NbRh3O12

Quantum spin liquid ground state in the trimer rhodate Ba4NbRh3O12
Abhisek Bandyopadhyay et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.184403

NbxBi2-xSe3

Large variation in superconducting transition temperature in the NbxBi2−xSe3 system

NaFe2PO4(SO4)2

Antiferromagnetic ordering and glassy nature in the sodium superionic conductor NaFe2PO4(SO4)2
Manish Kr. Singh et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.174401

CePdAl3

Long-range magnetic order in CePdAl3 enabled by orthorhombic deformation

RAuGe (R = Dy, Ho, Gd)

Metamagnetism and anomalous magnetotransport properties in rare-earth-based polar semimetals RAuGe (R= Dy, Ho, and Gd)
Takashi Kurumaji et al., https://arxiv.org/abs/2405.00628

HoMn6Ge6

Anisotropic nonsaturating magnetoresistance observed in HoMn6Ge6: A kagome Dirac semimetal

DyCuGe

Ferroquadrupolar lattice instability in an antiferromagnetically ordered state in single-crystalline DyCuGe

LiYbSe2

Crystal electric field excitation and vibrational properties of the quantum spin liquid candidate LiYbSe2

YCrB4

Millimeter-scale growth of YCrB4 single crystals and observation of the metallic surface state

April

EuPdSn2

Magnetic phase diagram of EuPdSn2

Mn1-xVxSi

Spin-disorder intervened avoidance of quantum criticality in B20 cubic Mn1-xVxSi
Parul Khandelwal et al., doi.org/10.1088/1361-648X/ad43a8

SmTi2Al20, SmNi2Cd20, SmPd2Cd20

Large Cyclotron Effective Masses in Antiferromagnet SmTi2Al20 Compared with Conventional Masses in Ferromagnet SmNi2Cd20 and Antiferromagnet SmPd2Cd20
Md Asif Afzal et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.054710

Na2AT(PO4)2 (A = Ba, Sr; T = Co, Ni, Mn)

Structural, magnetic, and magnetocaloric properties of triangular-lattice transition-metal phosphates

Na2Co2TeO6, Na3Co2SbO6

Persistent spin dynamics in magnetically ordered honeycomb-lattice cobalt oxides

Ca10Cr7O28

Origin of the intermediate-temperature magnetic specific heat capacity in the spin-liquid candidate Ca10Cr7O28

DyCoGa5

Anisotropic magnetic properties of antiferromagnetic DyCoGa5

CsCr6Sb6

Tunable Kondo physics in a van der Waals kagome antiferromagnet
There is no van der Waals gap in the crystal structure.

HoMn6Ge6

Anisotropic Nonsaturating Magnetoresistance Observed in HoMn6Ge6: A Kagome Dirac Semimetal
Achintya Low et al., https://arxiv.org/abs/2404.11414

LaSbTe, CeSbTe

Multiple charge-density-wave gaps in LaSbTe and CeSbTe as revealed by ultrafast spectroscopy

NiPS3

Magnetically propagating Hund’s exciton in van der Waals antiferromagnet NiPS3

EuAuSb

Magnetotransport and electronic structure of EuAuSb: A candidate antiferromagnetic Dirac semimetal
There is a change of rxx by 50% at the metamagnetic transition. Not necessary to introduce THE term to explain the change in ryx.

RuO2

Fragility of the magnetic order in the prototypical altermagnet RuO2
Andriy Smolyanyuk et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.134424

Nd3Rh4Sn13

Antiferromagnetic ordering and chiral crystal structure transformation in Nd3Rh4Sn13

RCr6Ge6 (R = Gd-Tm)

Crystal Growth, Magnetic and Electrical Transport Properties of the Kagome Magnet RCr6Ge6 (R = Gd - Tm)

Eu1-xCaxCo2P2

Magnetic phase diagram of Eu1−xCaxCo2P2 determined using muon spin rotation and relaxation

Ce3TiBi5

Magnetic structure of Ce3TiBi5 and its relation to current-induced magnetization
Nicolas Gauthier et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.L140405

KYbSe2

Magnetic field-temperature phase diagram of the spin-1/2 triangular lattice antiferromagnet KYbSe2

K3Fe(MoO4)2(Mo2O7)

Possible candidate for the realization of the floating phase in the S = 5/2 frustrated spin-chain model: K3Fe(MoO4)2(Mo2O7)

CsNdSe2

Candidate spin-liquid ground state in CsNdSe2 with an effective spin-1/2 triangular lattice

LaMn2-xAu4+x

Making a Hedgehog Spin-Vortex State Possible: Geometric Frustration on a Square Lattice
Stefanie Siebeneichler et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.3c02170

Yb2(Ti1-xSnx)2O7

Local distortion driven magnetic phase switching in pyrochlore Yb2(Ti1−xSnx)2O7
Yuanpeng Zhang et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.144407

1T-TiSe2

Two-step charge density wave transition and hidden transient phase in 1T−TiSe2

KOsO3

Exotic Magnetism in Perovskite KOsO3

SmMn2Ge2

Multiple unconventional Hall effects induced by noncoplanar spin textures in SmMn2Ge2

DyRh2Si2, HoRh2Si2

Coupling between magnetic and thermodynamic properties in RRh2Si2 (R = Dy, Ho)
H. Dawczak-Debicki et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.134408

HoPdAl4Ge2

High-order harmonics and the reverse of the squaring up process in the triangular-lattice magnet HoPdAl4Ge2

SrAl4, EuAl4

Origin of charge density wave in topological semimetals SrAl4 and EuAl4

(Ti,Zr,Hf)V6Sn6

Quantum oscillations in the kagome metals (Ti,Zr,Hf)V6Sn6 at Van Hove filling

Cr2Ge2Te6

Broken weak and strong spin rotational symmetries and tunable interactions between phonons and the continuum in Cr2Ge2Te6
Atul G. Chakkar et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.134406

FeGe

Tunability of charge density wave in a magnetic kagome metal

MnPSxSe3-x

Local spin structure in the layered van der Waals materials MnPSxSe3−x

SrTiO3, SiO2, MgO, Si

Discovery of universal phonon thermal Hall effect in crystals

RFeO3 (R = Dy, Lu)

Correlation of Structural and Magnetic Properties of RFeO3 (R=Dy, Lu)
Banani Biswas et al., https://arxiv.org/abs/2404.01416

Na2AT(PO4)2 (A = Ba, Sr; T = Co, Ni, Mn)

Structural, magnetic and magnetocaloric properties of triangular-lattice transition-metal phosphates
Chuandi Zhang et al., https://arxiv.org/abs/2404.01592

CaMnSb2

C-type antiferromagnetic structure of topological semimetal CaMnSb2

Ni-doped CePdAl

Frustration-induced quantum criticality in Ni-doped CePdAl as revealed by the µSR technique

Cr-substituted NiPS3

Field-induced spin polarization in lightly Cr-substituted layered antiferromagnet NiPS3
Rabindra Basnet et al., https://arxiv.org/abs/2404.02091

CrI2

Helimagnetism in the candidate ferroelectric CrI2
John A. Schneeloch et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.144403

alpha-RuCl3

Structural transition and magnetic anisotropy in α-RuCl3

Cr2Ge2Te6

Dimension-dependent critical scaling analysis and emergent competing interaction scales
in a two-dimensional van der Waals magnet Cr2Ge2Te6

GaNb4Se8

Jahn-Teller driven quadrupolar ordering and spin-orbital dimer formation in GaNb4Se8
Tsung-Han Yang et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.144101

DyCo9Si4

Magnetic properties and magnetocaloric effect of DyCo9Si4

RTe3

Magnetotransport properties in van der Waals RTe3 (R=La, Ce, Tb)
Tomo Higashihara et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.134404

Cr7-deltaTe8

Sign-reversal Anomalous Hall effect driven by a magnetic transition in Cr7−δTe8
Bowen Chen et al., arxiv.org/abs/2404.00659

FeGe

Charge density wave without long-range structural modulation in canted antiferromagnetic kagome FeGe
Chenfei Shi et al., arxiv.org/abs/2404.00996

U2Pt6Ge15

Magnetic order in honeycomb layered U2Pt6Ga15 studied by resonant x-ray and neutron scattering
Chihiro Tabata et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.134403

MnTe

Piezomagnetic properties in altermagnetic MnTe

PrSbTe

Electronic structure in a rare-earth based nodal-line semimetal candidate PrSbTe

4He and URu2Si2

Comparison of the hidden order transition in URu2Si2 to the λ-transition in 4He

HoNiSi3

Magnetic structure and component-separated transitions of HoNiSi3

Mn3Cr2Ge3O12

Double magnetic transitions, complex field-induced phases, and large magnetocaloric effect in the frustrated garnet compound Mn3Cr2Ge3O12

March

RuP3SiO11

Kitaev Interactions Through an Extended Superexchange Pathway in the jeff = 1/2 Ru3+ Honeycomb Magnet, RuP3SiO11
Aly H. Abdeldaim et al., https://arxiv.org/abs/2403.19406

Cs2CoBr4

Magnetic field induced phases and spin Hamiltonian in Cs2CoBr4

ScV6Sn6

Strain-induced enhancement of the charge-density-wave in the kagome metal ScV6Sn6
Manuel Tuniz et al., https://arxiv.org/abs/2403.18046

Mn2.3Pd0.7Ga

Emergence of the topological Hall effect in a tetragonal compensated ferrimagnet Mn2.3Pd0.7Ga
Won-Young Choi et al., doi.org/10.1038/s41427-021-00347-3

EuCo2As2

Sign-tunable anisotropic magnetoresistance and electrically detectable dual magnetic phases in a helical antiferromagnet
Jong Hyuk Kim et al., doi.org/10.1038/s41427-022-00415-2

CaBaCo4O7

Influence of Mn and Ni ions doping on the magnetization and dielectric properties of the CaBaCo4O7 compound

GeV4S8

Pressure-Induced Changes in the Crystal Structure and Electrical Conductivity of GeV4S8

FeBi4S7

Antiferromagnetic Ordering in Quasi-One-Dimensional FeBi4S7

SmA′3Co4O12 (A' = Cu, Mn)

High-pressure synthesis and magnetic characterization of quadruple perovskites SmA′3Co4O12 (A' = Cu, Mn)

EuTe2

Field-induced Insulator–Metal Transition in EuTe2
Tetsuya Takeuchi et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.044708

RuBr3

Magnetic vs. nonmagnetic polymorphs of RuBr3 under pressure

Co3O2BO3

Spin-State Ordering and Intermediate States in the Mixed-Valence Cobalt Oxyborate Co3O2BO3 with Spin Crossover

CrSe

Non-coplanar spin structure in a metallic thin film of triangular lattice antiferromagnet CrSe
Yusuke Tajima et al., https://arxiv.org/abs/2403.17408
Hall conductivity ~ 0.5 S/cm. Why is it so small?

LiNb1-xTaxO3

Lattice dynamics of LiNb1-xTaxO3 solid solutions: Theory and experiment
Felix Bernhardt et al., https://arxiv.org/abs/2403.17594

LaCuSb2

Dirac Dispersions and Fermi Surface Nesting in
LaCuSb2
Marcin Rosmus et al., https://arxiv.org/abs/2403.17737

LaSb2

Band Structure and Fermi Surface Nesting in LaSb2
Evan O’Leary et al., https://arxiv.org/abs/2403.17824

EuCd2As2

Absence of Weyl nodes in EuCd2As2 revealed by the carrier density dependence of the anomalous Hall effect

RuCl3

Experimental evidence for nonspherical magnetic form factor in Ru3+
Colin L. Sarkis et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.104432

Na3Co2SbO6

Raman spectroscopy of Na3Co2SbO6
Yu.S. Ponosov et al., https://arxiv.org/abs/2403.16943

U2Pt6Ga15

Magnetic Order in Honeycomb Layered U2Pt6Ga15 Studied by Resonant X-ray and Neutron Scatterings
Chihiro Tabata et al., https://arxiv.org/abs/2403.16672

LiCu3O3

Magnetic properties of LiCu3O3: A quasi-two-dimensional antiferromagnet on a depleted square lattice

CaIrO3

Observation of anomalous nonequilibrium terahertz dynamics and a gapped topological phase in a semimetal CaIrO3 thin film
K. Santhosh Kumar et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.115150

KCu4P3O12

Inelastic neutron scattering studies on the eight-spin zigzag-chain compound KCu4P3O12: Confirmation of the validity of a data-driven technique based on machine learning

CeSb

Ultrafast optical polarimetry in magnetic phases of the Kondo semimetal CeSb

Eu2Pd2Sn

Incommensurate magnetic cycloidal order in noncentrosymmetric Eu2Pd2Sn

ErMnO3

Magnetoelectric coupling at the domain level in polycrystalline ErMnO3
J. Schultheiß et al., https://arxiv.org/abs/2403.13168

KOsO3

Exotic magnetism in perovskite KOsO3

NiPS3

Thermal Hall effect driven by phonon-magnon hybridization in a honeycomb antiferromagnet
Qingkai Meng et al., https://arxiv.org/abs/2403.13306

Mn5Si3

Observation of non-volatile anomalous Nernst effect in altermagnet with collinear Néel vector

NbFeTe2

Tailoring Physical Properties of Crystals through Synthetic Temperature Control: A Case Study for new Polymorphic NbFeTe2 phases

TaNiTe5

Probing the Fermi surface with Quantum Oscillation Measurements in the Dirac semimetal TaNiTe5
Maximilian Daschner et al., https://arxiv.org/abs/2403.12921

Mn5Si3

Observation of the anomalous Nernst effect in altermagnetic candidate Mn5Si3
Antonin Badura et al., https://arxiv.org/abs/2403.12929

EuCd2P2

Magnetism, heat capacity, and electronic structure of EuCd2P2 in view of its colossal magnetoresistance

Sr2RhO4

Spin-Orbit Excitons in a Correlated Metal: Raman Scattering Study of  Sr2RhO4

CaBaCo4O7

Magnetic ordering induced magnetostriction dynamics via pulsed magnetic field in the polar magnet CaBaCo4O7

Ni3In

Molecular beam epitaxy synthesis and electrical transport properties of the correlated kagome metal Ni3In

EuAl4

Spontaneous spin chirality reversal and competing phases in the topological magnet EuAl4
A. M. Vibhakar et al., https://arxiv.org/abs/2403.10159

EuCd2Sb2

Berry curvature derived negative magnetoconductivity observed in type-II magnetic Weyl semimetal films
Ayano Nakamura et al., https://arxiv.org/abs/2403.09924

Eu2ZnSb2

Unconventional anomalous Hall effect in Zintl thermoelectric Eu2ZnSb2

Er2Si2O7

Magnetic structure, excitations, and field-induced transitions in the honeycomb lattice compound Er2Si2O7

PrCuSb2

Inverse melting and intertwined orders in PrCuSb2

Gd2Os3Si5

Room temperature charge density wave in a tetragonal polymorph of Gd2Os3Si5 and study of its origin in the R2T3X5 (R = Rare earth, T = transition metal, X = Si, Ge) series
Vikash Sharma et al., https://arxiv.org/abs/2403.08660

NaFe2PO4(SO4)2

Antiferromagnetic ordering and glassy nature in NASICON type NaFe2PO4(SO4)2
Manish Kr. Singh et al., https://arxiv.org/abs/2403.08679

Ta2Pd3Te5

Spontaneous Gap Opening and Potential Excitonic States in an Ideal Dirac Semimetal Ta2Pd3Te5

Ta2Pd3Te5

Evidence for an Excitonic Insulator State in Ta2Pd3Te5

Ti3O5

Temperature-induced structural and electronic phase transitions in λ-phase Ti3O5

La3MnBi5

Crystal growth, transport, and magnetic properties of quasi-one-dimensional La3MnBi5

FeGe

Evidence for unfolded Fermi surfaces in the charge-density-wave state of kagome metal FeGe revealed by de Haas–van Alphen effect

DyV6Sn6, HoV6Sn6

Magnetic and magnetotransport properties in the vanadium-based kagome metals DyV6Sn6 and HoV6Sn6

GaNb4Se8

Cluster Rearrangement by Chiral Charge Order in Lacunar Spinel GaNb4Se8

delta-Ag2/3V2O5

Metastable ordered states induced by low temperature annealing of δ-Ag2/3V2O5

FeSn

Distance-Dependent Evolution of Electronic States in Kagome- Honeycomb Lateral Heterostructures in FeSn
Tuan Anh Pham et al., https://arxiv.org/abs/2403.07278

Eu3In2As4

Discovery of a Magnetic Topological Semimetal Eu3In2As4 with a Single Pair of Weyl Points

h-YMnO3

Characterizing the diffuse continuum excitations in the classical spin liquid h-YMnO3

CeRh6Ge4

Probing quantum criticality in ferromagnetic CeRh6Ge4

CrSb

Crystal design of altermagnetism
Zhiyuan Zhou et al., https://arxiv.org/abs/2403.07396

VO2

Molecular orbital formation and metastable short-range ordered structure in VO2
Shunsuke Kitou et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.L100101

BaCo2(AsO4)2

Intermediate field-induced phase of the honeycomb magnet BaCo2(AsO4)2
Prashanta K. Mukharjee et al., https://arxiv.org/abs/2403.04466v1

CoTiO3

Spin–orbit exciton–induced phonon chirality in a quantum magnet

Sr2CoTeO6

One-half magnetization plateau in the spin-1/2 fcc lattice antiferromagnet Sr2CoTeO6
Hidekazu Tanaka et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.094414

CrI3

Thermal Hall effect in the van der Waals ferromagnet CrI3

Fe2Mo3O8

Multiple magnetoelectric plateaus in the polar magnet Fe2Mo3O8

alpha-quartz

Selective observation of enantiomeric chiral phonons in α-quartz

Fe3GaTe2, Fe3GeTe2

Spectral evidence for local-moment ferromagnetism in the van der Waals metals Fe3GaTe2 and Fe3GeTe2

R2BaCuO5 (R = Er, Eu, Y, Tm and Lu)

Exploring magnetism and magnetoelectric properties in the green phase of R2BaCuO5 (R = Er, Eu, Y, Tm, and Lu): The role of 4f−3d exchange coupling
Premakumar Yanda et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.104411

alpha-RuCl3

Defect-Induced Low-Energy Majorana Excitations in the Kitaev Magnet α−RuCl3

FeGe

Symmetry Breaking and Ascending in the Magnetic Kagome Metal FeGe

Ba4NbRh3O12

Novel quantum spin liquid ground state in the trimer rhodate Ba4NbRh3O12
Abhisek Bandyopadhyay et al., https://arxiv.org/abs/2403.06446

CeAlGe

27Al NMR study of the magnetic Weyl semimetal CeAlGe

(Fe1−xMnx)2AlB2

Competing magnetic correlations and uniaxial anisotropy in (Fe1−xMnx)2AlB2 single crystals
Taiki Shiotani et al., https://arxiv.org/abs/2403.03415

Mn3Ge

Weyl points and anomalous transport effects tuned by the Fe doping in Mn3Ge Weyl semimetal

EuAgP

Crystal, ferromagnetism, and magnetoresistance with sign reversal in a EuAgP semiconductor

GdAlSi

Engineering of a Layered Ferromagnet via Graphitization: An Overlooked Polymorph of GdAlSi
Dmitry V. Averyanov et al., https://arxiv.org/abs/2403.03735

NbGe2

Observation of Chiral Surface State in Superconducting NbGe2

CePd3S4

Double-domed temperature-pressure phase diagram of CePd3S4

SrFe12O19

Evidence for reentrant quantum paraelectric state preceded by a multiglass phase with a nonclassical exponent and magnetodielectric coupling in SrFe12O19

Pd1-xMxTe2 (M = Ir, Rh)

Novel metallic layered dichalcogenides Pd1-xMxTe2 (M=Ir, Rh) with 0  x  1
in a Fermi liquid scenario
Florencia E. Lurgo et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.094104

ScV6Sn6

Driving mechanism and dynamic fluctuations of charge density waves in the kagome metal ScV6Sn6

EuZn2Sb2

Large unconventional anomalous Hall effect arising from spin chirality within domain walls of an antiferromagnet EuZn2Sb2

ScV6Sn6

Tuning charge density wave of kagome metal ScV6Sn6
Changjiang Yi et al., https://arxiv.org/abs/2403.02463

EuCd2As2

Revealing the EuCd2As2 Semiconducting Band Gap via n-type La-Doping
Ryan A. Nelson et al., https://arxiv.org/abs/2403.02556

RbTi3Bi5

The de Haas-van Alphen quantum oscillations in the kagome metal RbTi3Bi5

EuIn2As2

Incommensurate broken-helix and broken-fanlike states in axion insulator candidate EuIn2As2

Ba2La2CoTe2O12

Anomalous continuum scattering and higher-order van Hove singularity in the strongly anisotropic S = 1/2 triangular lattice antiferromagnet
Pyeongjae Park et al., https://arxiv.org/abs/2403.03210

Cr4Ge7

Noncentrosymmetric Nowotny Chimney Ladder Ferromagnet Cr4Ge7 with a High Curie Temperature of ~ 207 K

CeCu2Si2

Anomalous impurity effect in the heavy-fermion superconductor CeCu2Si2

FePS3, NiPS3

Molecular intercalation in the van der Waals antiferromagnets FePS3 and NiPS3

CaMn3(Cr3Mn)O12

Polarity vs Chirality: Functionality from competing magneto-structural instabilities

Mn3Cr2Ge3O12

Double magnetic transitions, complex field induce phases, and large magnetocaloric
effect in the frustrated garnet compound Mn3Cr2Ge3O12

ErFe5Al7

Field-induced magnetic transitions in the highly anisotropic ferrimagnet ErFe5Al7
studied by high-field x-ray magnetic dichroism

Sr2Te4V2O13Cl2

Sr2Te4V2O13Cl2, a Layered Structure Forming a Canted Antiferromagnetic Ground State
Johnny A. Sannes et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.3c02961

Ba4TaMn3O12, Ba4NbMn3O12

Partial molecular orbitals in face-sharing 3d manganese trimer: Comparative studies on Ba4TaMn3O12 and Ba4NbMn3O12

alpha-Sn

Quantum transport properties of the topological Dirac Semimetal α-Sn
Md Shahin Alam et al., https://arxiv.org/abs/2403.00083

MnAu2

Current-induced sliding motion in a helimagnet MnAu2

La4Co4X (X = Pb, Bi, Sb)

La4Co4X (X = Pb, Bi, Sb): a demonstration of antagonistic pairs as a route to quasi-low dimensional ternary compounds
Tyler J. Slade et al., https://arxiv.org/abs/2403.00204

A2Ir2O7

Robustness of the pyrochlore structure in rare-earth A2Ir2O7 iridates and pressure-induced structural transformation in IrO2
Daniel Staško et al., https://arxiv.org/abs/2403.00477

BiIr4Se8

Chemical Bonding Induces One-Dimensional Physics in Bulk Crystal BiIr4Se8
Connor J. Pollak et al., doi.org/10.1021/jacs.3c13535

CrSbSe3

Superconductivity in Quasi-One-Dimensional Ferromagnet CrSbSe3 under High Pressure

MnTe

Observation of a giant band splitting in altermagnetic MnTe

Mn4-xFexNb2O9

Site preference of the 3d transition metal ions in the Mn4-xFexNb2O9 compounds as revealed by Mössbauer spectroscopy

February

LuAs

Magnetostriction of metals with small Fermi surface pockets: Case of the topologically trivial
semimetal LuAs
Yu. V. Sharlai et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.085144

CeNMSb2 (NM = Cu, Ag, Au)

Determination of the magnetic ground states in CeNMSb2 compounds with NM = Cu, Ag, Au

Na3Co2SbO6

In-plane multi-q magnetic ground state of Na3Co2SbO6

Cu3TeO6

Spin-Reorientation-Driven Linear Magnetoelectric Effect in Topological Antiferromagnet Cu3TeO6

UFe5As3

Discovery and Characterization of Antiferromagnetic UFe5As3

PrSi3O8, Pr2Si7O18

Stabilization of Pr4+ in Silicates─High-Pressure Synthesis of PrSi3O8 and Pr2Si7O18
Niko T. Flosbach et al., doi.org/10.1021/acs.inorgchem.3c03948

SmPt6Al3

Collinear Antiferromagnet SmPt6Al3with a Sm Honeycomb StructureCentered by Pt Triangles
Ryohei Oishi et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.034707

CePd3Sn2

Weak Kondo Coupling Antiferromagnet CePd3Sn2with Quasi-One-Dimensional Ce Chains
Yudai Kawaue et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.034706

RE5Pd2In4 (RE = Tb-Tm)

Magnetocaloric performance of RE5Pd2In4 (RE = Tb-Tm) compounds
Altifani Rizky Hayyu et al., https://arxiv.org/abs/2402.17912

Ba(Fe1-xCox)2As2

Elastocaloric evidence for a multicomponent superconductor stabilized within the nematic state in Ba(Fe1−xCox)2As2

KCu6AlBiO4(SO4)5Cl

27Al-NMR Study on a square-Kagome lattice antiferromagnet
Takayuki Goto et al., https://arxiv.org/abs/2402.18125

CeRhSn

Anisotropic Dynamical Planckian Scaling of the Quasi-Kagome Kondo Lattice CeRhSn with Strong Valence Fluctuation
Shin-ichi Kimura et al., https://arxiv.org/abs/2402.18176

Bi

Anomalous Hall Effect in Thin Bismuth

UTe2

High-Field Superconducting Halo in UTe2
Sylvia K. Lewin et al., https://arxiv.org/abs/2402.18564

NiSi

Altermagnetism in NiSi with non-collinear spins
Deepak K. Singh et al., https://arxiv.org/abs/2402.17451

TmVO4

Disorder-induced local strain distribution in Y-substituted TmVO4

NiPS3

Distinct Optical Excitation Mechanisms of a Coherent Magnon in a van der Waals Antiferromagnet
Clifford J. Allington et al., https://arxiv.org/abs/2402.17041

ZrTe5

Giant quantum oscillations in thermal transport in low-density metals via electron absorption of phonons

FePSe3

Thermal evolution of spin excitations in honeycomb Ising antiferromagnetic FePSe3

NaTmTe2

Interplay between crystal field and magnetic anisotropy in the triangular-lattice antiferromagnet NaTmTe2

UAs2

Heavy fermion related behaviors and the effects from nonmagnetic atom vacancies in the 5f-electron based antiferromagnet UAs2

Li4Cu1-xNixTeO6 (x = 0, 0.1, 0.2, 0.5, 1)

Synthesis, structural and magnetic characterizations of Li4Cu1−xNixTeO6 ( x = 0, 0.1, 0.2, 0.5, and 1)
Ashiwini Balodhi et al., https://arxiv.org/abs/2402.16768

Mn2.4Ga

Large Anomalous Hall Effect at Room Temperature in a Fermi-Level-Tuned Kagome Antiferromagnet
Linxuan Song et al., https://arxiv.org/abs/2402.16521

LaRu3Si2

Charge orders with distinct magnetic response in a prototypical kagome superconductor LaRu3Si2
C. Mielke III et al., https://arxiv.org/abs/2402.16219

TaNiTe5

Origin of giant magnetoresistance in layered nodal-line semimetal TaNiTe5 nanoflakes
Ding-Bang Zhou et al., https://arxiv.org/abs/2402.16088

Cr

Revelation of new magnetic domain wall category in the itinerant antiferromagnet Chromium

K2Co(SeO3)2

Phase Diagram and Spectroscopic Evidence of Supersolids in Quantum Ising Magnet K2Co(SeO3)2

Fe

Observation of the In-plane Anomalous Hall Effect induced by Octupole in Magnetization Space

EuAl4

Phonon softening and atomic modulations in EuAl4
A. N. Korshunov et al., https://arxiv.org/abs/2402.15397

A2MeX6 (A = K, Rb, Cs, NH4, Me = Os, Ir)

Rotational phase transitions in antifluorite-type osmate and iridate compounds

RuO2

Incommensurate Spin Density Wave in Antiferromagnetic RuO2 Evinced by Abnormal Spin Splitting Torque

NH4Ni2Mo2O10H3

Structural and magnetic studies of the frustrated S = 1 kagome magnet NH4Ni2Mo2O10H3
Eamonn Thomas Connolly et al., doi.org/10.1088/1361-648X/ad2aab

TbMn6Sn6

Chiral and flat-band magnetic quasiparticles in ferromagnetic and metallic kagome layers
S. X. M. Riberolles et al., doi.org/10.1038/s41467-024-45841-8

EuPd2Si2

Valence transition induced changes of the electronic structure in EuPd2Si2

alpha-Cu2V2O7

Raman scattering of spin-1/2 mixed-dimensionality antiferromagnetic α−Cu2V2O7
Hemant Singh Kunwar et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.054310

UTe2

Molten Salt Flux Liquid Transport Method for Ultra Clean Single Crystals UTe2

FeVO4

Local structural investigation across the magnetic transition in the type-II multiferroic material  FeVO4

TbMn6Sn6

Electron-Assisted Generation and Straight Movement of Skyrmion Bubble in Kagome TbMn6Sn6
Zhuolin Li et al., doi.org/10.1002/adma.202309538

Mn2-xZnxSb

Distinct Composition-Dependent Topological Hall Effect in Mn2-xZnxSb
Md Rafique Un Nabi et al., https://arxiv.org/abs/2402.11087

Mn2.94Ge

Unusual Multiple Magnetic Transitions and Anomalous Hall Effect Observed in Antiferromagnetic Weyl Semimetal, Mn2.94Ge (Ge-rich)
Susanta Ghosh et al., https://arxiv.org/abs/2402.11923

Co2MnGa

Topological Heusler Magnets-Driven High-Performance Transverse Nernst Thermoelectric Generators
Mengzhao Chen et al., doi.org/10.1002/aenm.202400411

alpha-RuCl3

Emergence of the Isotropic Kitaev Honeycomb Lattice α-RuCl3 and its magnetic properties
Sangyoun Park et al., doi.org/10.1088/1361-648X/ad294f

PdCoO2

Crystal-chemical origins of the ultrahigh conductivity of metallic delafossites

CeAlSi

Tunable positions of Weyl nodes via magnetism and pressure in the ferromagnetic Weyl semimetal CeAlSi

Ho2Zr(MoO4)5

Ho2Zr(MoO4)5 — A novel double molybdate with negative thermal expansion

Dy3Pt2Sb4.48

Crystallographic Disorder and Strong Magnetic Anisotropy in Dy3Pt2Sb4.48

Ni3In2S2

Quantum Linear Magnetoresistance and Fermi Liquid Behavior in Kagome Metal Ni3In2S2

FePSe3

Understanding and tuning magnetism in layered Ising-type antiferromagnet FePSe3 for potential 2D magnet
Rabindra Basnet et al., https://arxiv.org/abs/2402.10155

Ce2Hf2O7

Thermodynamics of the dipole-octupole pyrochlore magnet Ce2Hf2O7 in applied magnetic fields
Anish Bhardwaj et al., https://arxiv.org/abs/2402.08723

Na2Co2TeO6

Phonon thermal transport shaped by strong spin-phonon scattering in a Kitaev material Na2Co2TeO6
Xiaochen Hong et al., doi.org/10.1038/s41535-024-00628-4

(Tb3+, Eu3+):GdGa3(BO3)4

Flux Growth, Thermal, and Luminescence Properties of (Tb3+, Eu3+):GdGa3(BO3)4, Multicolor Phosphors
Victor Maltsev et al., doi.org/10.1021/acs.cgd.3c01323

CaAgSb1-xBix

Alloying-Induced Structural Transition in the Promising Thermoelectric Compound CaAgSb
A. K. M. Ashiquzzaman Shawon et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.3c02621

Eu1-xCaxCo2P2

Magnetic Order Induced by the Cooperation of Valence and Structural Instabilities in Eu1−xCaxCo2P2
Kodai Moriyama et al., doi.org/10.7566/JPSJ.93.033702

Sr3CaRu2O9

Successive magnetic phase transitions with magnetoelastic and magnetodielectric coupling in the ordered triple perovskite Sr3CaRu2O9

FeRh

Single crystal growth of FeRh from AuPb flux

Fe3Co

Extrinsic contribution to the anomalous Hall effect and Nernst effect in Fe3Co single-crystal thin films by Ir doping

Fe1-xCoxSi

Near coincidence of metal-insulator transition and quantum critical fluctuations: Electronic ground state and magnetic order in Fe1−xCoxSi

Bi2YbO4Cl

Bi2YbO4Cl : A two-dimensional square-lattice compound with Jeff = 1/2 magnetic moments

CaMn7O12

Role of crystal and magnetic structures in the magnetoelectric coupling in CaMn7O12
Jhuma Sannigrahi et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.054417

BaMn2P2

BaMn2P2: Highest magnetic ordering temperature 122-pnictide compound
B. S. Jacobs et al., https://arxiv.org/abs/2402.06432

TaTe2

Unveiling the orbital-selective electronic band reconstruction through the structural phase transition in TaTe2
Natsuki Mitsuishi et al., doi.org/10.1103/PhysRevResearch.6.013155

Cr3Te4

Critical behavior in monoclinic Cr3Te4
Anirban Goswami et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.054413

Na3Co2SbO6

Field-induced phase transitions and quantum criticality in the honeycomb antiferromagnet Na3Co2SbO6

EuZn2Sb2

Large unconventional anomalous Hall effect arising from spin chirality within domain walls of an antiferromagnet EuZn2Sb2
Emergent fitting to extract anomalous transport. 

Co3V2O8

Entropy driven incommensurate structures in the frustrated kagome staircase Co3V2O8

RVO3

Orbital degree of freedom in high entropy oxides

CoSn

Photoinduced dynamics of flat bands in the kagome metal CoSn

Ho2Os2O7

Local site behavior of the 5d and 4 f ions in the frustrated pyrochlore Ho2Os2O7

Li2Ni2W2O9

Magnetic properties, magnetic structure, and possible magnetoelectric effect in orthorhombic
corundumlike Li2Ni2W2O9

ScV6Sn6

Unveiling the charge density wave mechanism in vanadium-based Bi-layered kagome metals
Yi-Chen Yang et al., https://arxiv.org/abs/2402.03765

alpha-RuCl3

Two-step growth of high-quality single crystals of the Kitaev magnet α-RuCl3

VI3

Evidence of temperature-dependent interplay between spin and orbital moment in van der Waals ferromagnet VI3

RRh2Si2 (R = Dy, Ho)

Coupling between magnetic and thermodynamic properties in RRh2Si2 (R = Dy, Ho)
H. Dawczak-Dębicki et al., https://arxiv.org/abs/2402.04072

CoSi

Enantiomorph conversion in single crystals of the Weyl semimetal CoSi
Wilder Carrillo-Cabrera et al., doi.org/10.1038/s43246-023-00434-8

EuMg2Bi2

Magnetic Topological Dirac Semimetal Transition Driven by SOC in EuMg2Bi2

Sm2Ir2O7

Magnetotransport of Sm2Ir2O7 across the pressure-induced quantum-critical phase boundary

MnBi4Te7

Anomalous Nernst effect in the topological and magnetic material MnBi4Te7

ErFe2Si2

Giant Low-Field Magnetocaloric Effect in the Superlattice Antiferromagnetic ErFe2Si2 Compound

A4Nb2O9 (A = Ni/Co/Zn)

Compositional Complexity as a Design Principle for Stabilizing Magnetization Reversal in Corundum-Derived A4Nb2O9 Phases
Christine Martin et al., doi.org/10.1021/acs.chemmater.3c03181

Mn3CoSi

Quantum critical behavior of the hyperkagome magnet Mn3CoSi

Na2Co2TeO6

Spin vestigial orders in extended Heisenberg-Kitaev models near hidden SU(2) points: Application to Na2Co2TeO6
Niccolò Francini et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.075104

Ce6Ni6P17

Frustrated magnetism in octahedra-based Ce6Ni6P17

NdFeO3

Spin-switching energy gap in a compensated NdFeO3 ferrimagnet

RCu (R = Ho, Er, Tm)

Topological aspects of multi-$\bm{k}$ antiferromagnetism in cubic rare-earth compounds
Wolfgang Simeth et al., doi.org/10.1088/1361-648X/ad24bb

January

TbTe3

Ultrafast measurements under anisotropic strain reveal near equivalence of competing charge orders in TbTe3

YMn6Sn6

Topological Hall effect induced by chiral fluctuations in a kagome lattice
Kyle Fruhling et al., https://arxiv.org/abs/2401.17449

CeCrGe3

Giant Anomalous Hall and Nernst Effects in a Heavy Fermion Ferromagnet

Ni2Mo3O8

Crystal structure, spin flop transition, and magnetoelectric effect in the honeycomb-lattice frustrated Fe-doped Ni2Mo3O8 antiferromagnets

RuBr3

Magnetism in the Kitaev quantum spin liquid candidate RuBr3

YMn2O5

Picometer atomic displacements behind ferroelectricity in the commensurate low-temperature phase in multiferroic YMn2O5

DyAuGe

Canted antiferromagnetism in a spin-orbit coupled Seff=3/2 triangular-lattice magnet DyAuGe
Takashi Kurumaji et al., https://arxiv.org/abs/2401.16622

TbIrIn5

Exceptional magnetic anomalies in TbIrIn5
Ayusa Aparupa Biswal et al., https://arxiv.org/abs/2401.16721

Ta2NiSe5

Anomalous photo-induced band renormalization in correlated materials: Case study of Ta2NiSe5

SrMnSb2

Magnetic interactions and excitations in SrMnSb2
Zhenhua Ning et al., https://arxiv.org/abs/2401.15572

Co3Sn2S2

In-plane Antiferromagnetism in Ferromagnetic Kagome Semimetal Co3Sn2S2
Sandy Adhitia Ekahana et al., https://arxiv.org/abs/2401.15602

EuAl4

Charge density wave transition in the magnetic topological semimetal EuAl4

KEr(MoO4)2

High-field magnetization of KEr(MoO4)2

CoSn

Incipient nematicity from electron flat bands in a kagome metal
Nathan Drucker et al., https://arxiv.org/abs/2401.17141

ScV6Sn6

Nature of charge density wave in kagome metal ScV6Sn6
Seongyong Lee et al., doi.org/10.1038/s41535-024-00620-y

ScV6Sn6

Nanoscale visualization and spectral fingerprints of the charge order in ScV6Sn6 distinct from other kagome metals

YbCu4Ni

Quantum criticality in YbCu4Ni

SmAuAl4Ge2

Complex antiferromagnetic order in the metallic triangular lattice compound SmAuAl4Ge2

TbMn6Sn6

Microscopic origin of the spin-reorientation transition in the kagome topological magnet TbMn6Sn6

Eu5In2Sb6

Noncollinear 2k antiferromagnetism in the Zintl semiconductor Eu5In2Sb6
Vincent C. Morano et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.014432

Ta2Se8I

Discovery of a Topological Charge Density Wave
Maksim Litskevich et al., https://arxiv.org/abs/2401.14547

YV6Sn6

Quantum Oscillations Measurement of the Heavy Electron Mass near the van Hove Singularity in a Kagome Metal
Elliott Rosenberg et al., https://arxiv.org/abs/2401.14699

Co3Sn2S2

Anomalous electron-phonon coupling in kagome ferromagnetic Weyl semimetal Co3Sn2S2

FeI2

Quantum-to-classical crossover in generalized spin systems: Temperature-dependent spin dynamics of FeI2

CeGaSi

Anomalous Hall effect in an antiferromagnetic CeGaSi single crystal
Powder XRD and (00L) reflections are not enough to confirm polar crystal structure.
Equation (4) is incorrect.

YbCdCu4

Revisiting the heavy-fermion compound YbCdCu4: Kondo temperature and the ground-state degeneracy

MnSi

Experimental determination of the spin Hamiltonian of the cubic chiral magnet MnSi
P. Dalmas de Réotier et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.L020408

YbBi2IO4, YbBi2ClO4

Quantum magnetism in the frustrated square lattice oxyhalides YbBi2IO4 and YbBi2ClO4
Pyeongjae Park et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.014426

KYbSe2, NaYbSe2

Nonlinear magnons and exchange Hamiltonians of the delafossite proximate quantum spin liquid candidates KYbSe2 and NaYbSe2

Ru(Br1-xIx)3

Insulator-metal transition in Ru(Br1−xIx)3 with honeycomb structure

(Nd,Tb)Fe3(BO3)4

Hidden magnetic instability in the substituted multiferroics (Nd,Tb)Fe3(BO3)4
I. V. Golosovsky et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.014421

Na3Co2SbO6

Field-induced phase transitions and quantum criticality in a honeycomb antiferromagnet Na3Co2SbO6

Gd2Rh3Al9

High-pressure synthesis and magnetic properties of Gd2Rh3Al9 with a distorted honeycomb lattice
Hayashi Hiroaki et al., doi.org/10.1016/j.jssc.2023.124487

Ba6Yb2Ti4O17

Magnetic properties and spin dynamics in the spin-orbit driven Jeff = 1
2 triangular lattice antiferromagnet Ba6Yb2Ti4O17

RPt3Al5 (R = rare earth)

Physical Properties of a New Ternary Compound RPt3Al5 (R = rare earth)
Hiroto Fukuda et al., doi.org/10.3938/NPSM.73.1135

R2Be2SiO7

Synthesis and magnetic properties of the Shastry-Sutherland family R2Be2SiO7 (R = Nd, Sm, Gd-Yb)

NdAlGe

Anomalous Hall effect in the magnetic Weyl semimetal NdAlGe with plateaus observed at low temperatures
Naoki Kikugawa et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.035143

GdBi

Magnetic and transport properties of GdBi single crystal 
Gourav Dwari et al., doi.org/10.1063/5.0180325

Ni2InSbO6

Magnetic Helicity in a Chiral-Polar Magnet Ni2InSbO6
Yunpeng Gao et al., doi.org/10.1002/pssb.202300519

Ce2Sn2O7

Dipolar Spin Ice Regime Proximate to an All-In-All-Out Néel Ground State in the Dipolar-Octupolar Pyrochlore Ce2Sn2O7
D. R. Yahne et al., doi.org/10.1103/PhysRevX.14.011005
"Indeed, our new neutron diffraction measurements on the hydrothermally grown Ce2Sn2O7 powders show a broad signal at low scattering wave vectors, reminiscent of a dipolar spin ice, in striking contrast from previous powder neutron diffraction on samples grown from solid-state synthesis..."
Growth method dependence?

CeRhC2

Structural and physical properties of the chiral antiferromagnet CeRhC2

Cu1-xCdxCr2O4

Space-charge driven origin of the reversible pyrocurrent peaks in Cu1−xCdxCr2O4

Na2Co2TeO6

Anisotropic in-plane heat transport of Kitaev magnet Na2Co2TeO6
Shuangkui Guang et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.024419

TaCo2Te2

Extended Kohler's rule of magnetoresistance in TaCo2Te2

DyOBr, SmOCl

Magnetic properties of van der Waals layered single crystals DyOBr and SmOCl

alpha-RuCl3

Static and fluctuating zigzag order, and possible signatures of Kitaev physics, in torque measurements of α-RuCl3
Shaun Froude-Powers et al., https://arxiv.org/abs/2401.05546

FePSe3

Transverse and longitudinal magnons in strongly anisotropic antiferromagnet FePSe3
F. Le Mardele et al., https://arxiv.org/abs/2401.05557

Ni1/3NbS2

Intercalation-induced states at the Fermi level and the coupling of intercalated magnetic ions to conducting layers in Ni1/3NbS2
Yuki Utsumi Boucher et al., https://arxiv.org/abs/2401.05884

CrVO4

Evidence of Strong Orbital-Selective Spin-Orbital-Phonon Coupling in CrVO4
Aditya Prasad Roy et al., doi.org/10.1103/PhysRevLett.132.026701

PrTe3

Investigation of de Haas–van Alphen and Shubnikov–de Haas quantum oscillations in PrTe3

GdAlSi

Electronic structure and magnetic and transport properties of antiferromagnetic Weyl semimetal GdAlSi

GaNb4Se8

Cluster rearrangement by chiral charge order in lacunar spinel GaNb4Se8
Shunsuke Kitou et al., https://arxiv.org/abs/2401.03803

UPd2Al3

Relocalization of Uranium 5f Electrons in Antiferromagnetic Heavy Fermion Superconductor UPd2Al3: Insights from Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy
Jiao-Jiao Song et al., https://arxiv.org/abs/2401.03691

Ni3In2Se2

Endless Dirac nodal lines and high mobility in kagome semimetal Ni3In2Se2 single crystal
Sanand Kumar Pradhan et al., https://arxiv.org/abs/2401.03130

PrSbTe

Observation of Dirac nodal line states in topological semimetal candidate PrSbTe

YbIr3Si7

Conductive surface states and Kondo exhaustion in insulating YbIr3Si7
Macy Stavinoha et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.035112

Ir/Rh doped alpha-RuCl3

Structure transition and zigzag magnetic order in Ir/Rh-substituted honeycomb lattice α−RuCl3

alpha-RuCl3

Stacking disorder and thermal transport properties of α−RuCl3

EuCd2As2

Intrinsic insulating transport characteristics in low-carrier density EuCd2As2 films
Shinichi Nishihaya et al., https://arxiv.org/abs/2401.02026
Hope for Weyl SM gone?

YCu3(OH)6Br2[Br1−y(OH)y] (YCOB)

Generation of gauge magnetic fields in a kagome spin liqud candidate using the Dzyaloshinskii-Moriya interaction
Byungmin Kang et al., https://arxiv.org/abs/2401.01946

CuPt/CoPt ferromagnetic heterostructure

Crystal Symmetry-Dependent In-Plane Hall Effect

Lu2V2O7/heavy metal heterostructures

Electrical Seebeck contrast observation of magnon Hall effect in topological ferromagnet Lu2V2O7/heavy metal heterostructures

CsYbSe2

Generic magnetic field dependence of thermal conductivity in effective spin-1/2 magnetic insulators via hybridization of acoustic phonons and spin-flip excitations
Christopher A. Pocs et al., https://arxiv.org/abs/2401.01407

Y1-xDyxMn2O5

A study of the magnetocaloric behavior of Dy-substituted YMn2O5 compounds

Yb2(Ti1-xSnx)2O7

Local distortion driven magnetic phase switching in pyrochlore Yb2(Ti1−xSnx)2O7
Yuanpeng Zhang et al., https://arxiv.org/abs/2401.01807

Sr2V3O9

Spinon continuum in the Heisenberg quantum chain compound Sr2V3O9

Li1+xRMo3O8 (R = Sc, Y, Lu)

Impact of oxidation state on the valence-bond glass physics in the lithium-intercalated Mo3O8 cluster Mott insulators
Daigo Ishikita et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.024405

Ce2Pd2In

Kondo volume collapse in frustrated antiferromagnet: The case of Ce2Pd2In

PrTi2Al20

Extremely large magnetoresistance and anisotropic transport in the multipolar Kondo system PrTi2Al20

Pb(OF)Cu3(SeO3)2(NO3)

Noncoplanar magnetic order in the breathing kagome lattice compound Pb(OF)Cu3(SeO3)2(NO3)

MnBi2S4

Successive ferroelectric transitions induced by complex spin structures in MnBi2S4
Pavitra N. Shanbhag et al., doi.org/10.1103/PhysRevB.109.024401

EuCd2As2

Absence of Weyl nodes in EuCd2As2 revealed by the carrier density dependence of the anomalous Hall effect

Na intercalated Cr2Ge2Te6

Spin-glass states generated in van der Waals magnet Cr2Ge2Te6 by alkali-ion intercalation

LixCo3Sn2S2

Electron-doped magnetic Weyl semimetal LixCo3Sn2S2 by bulk-gating
Hideki Matsuoka et al., https://arxiv.org/abs/2312.17547
sxx ~ 8x10^3 S/cm at V_G = 0 V (Fig. 2a), which is at the edge of the intrinsic regime (doi.org/10.1103/PhysRevB.77.165103). The application of V_G = 4.2 V would push sxx towards the dirty regime (sxx ~ 2500 S/cm), which naturally explains the suppression of sxy (Fig. 2b).

Gd2PdSi3

Skyrmion and incommensurate spin dynamics in centrosymmetric Gd2PdSi3
M. Gomilšek et al., https://arxiv.org/abs/2312.17323